認定司書への道 第5回 認定司書の活躍に期待する
片山善博
日本図書館協会が認定司書制度を始めて既に50人を超える認定司書が誕生した。その中には,筆者が知事として直接その仕事ぶりに接し,その能力を高く評価する司書も含まれる。また,最近お目にかかった方も何人かおられる。
いずれも実務経験や実践的知識に富み,かつ,意欲的に職務に取り組んでおられる様子がうかがわれる。今後新たに認定される方も含めて,認定司書の皆さんには自己研鑽に努められるとともに,これからの図書館経営の中核として大いに力を発揮していただきたい。
ところで,この認定司書制度の将来を見据えたとき,そこにはいくつかの課題がある。例えば,組織の中で認定司書の存在は適切に認識されているか。認定司書に限らず自治体においてよく聞かれるのは,職員が何らかの資格を取得した場合,あるいは取得しようとする場合,その職員が属する組織の管理職がそれを必ずしも評価しようとしない傾向がまま見られることである。
もちろん認定司書の申請をすることについてあらかじめ組織の認知を得て,挑戦のための時間的,経済的負担を組織内でサポートしてもらっているケースは問題ない。しかし,組織の認知も支援もないまま(現時点ではこのケースが多いと推測する)申請して認定された場合,上司や同僚から喜んでもらえるのかと思いきや,逆に疎んじられるようなことがありはしないか。「仕事の手を抜き,マニアックに資格試験に力を入れている」などと曲解されていないかと案じられるのである。
こんなありさまだと,折角の認定司書の制度が却ってアダになりかねない。そこで,日本図書館協会をはじめとした関係者が早速にも取り組まなければならないことは,主として自治体の首長や人事当局者に認定司書制度の意義を十分理解してもらうことである。
自治体には,認定司書に挑戦する司書に便宜を図ってもらいたい。できれば申請に要する経済的負担について公費による支援制度を設けていただきたい。もとよりそれを職員の研修プログラムの一環として位置付けることは可能である。その上で,認定司書を職員の人事管理上の資格の一つに加え,その後の処遇に反映させることも自治体には強く求めたい。
また,認定司書が今後増えることにかんがみると,今の段階から一般の司書と認定司書との役割の違いについて明らかにしておくことが望ましい。両者の役割に何らの差もなければ,モラール(士気)の向上にはつながりにくいし,認定司書の効用もわかりづらいからである。
この点で多少参考になりそうな事例を紹介しておく。かつて鳥取県では学校事務職員は全員一様の役割を担っていた。それをある時,経験豊富で識見もある事務職員をシニアの職に任命し,新たな役割として近隣の学校の若手の事務職員から相談を受け,指導する役割を与えることとしたのだが,それによって貴重な経験が広く共有されるようになっただけでなく,シニア職自身の意欲を向上させることにもつながった。
こうしたシニアの役割にとどまらず,自治体では認定司書の中から選抜して,教育委員会事務局に是非登用してもらいたい。教育委員会の中に図書館のことに精通した優秀な司書が配置されることによって,図書館に正当な位置づけが与えられるようになるに違いないと考えるからである。
以上認定司書への期待の一端を述べたが,それは図書館自体の将来にも大きく影響するはずだ。
(かたやま よしひろ:慶應義塾大学法学部教授,第2期認定司書審査会審査委員)
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日本図書館協会 認定司書事業委員会
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