日本図書館協会は、3月24日に開催された「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」において、被災地の資料・情報要求に対して、公衆送信を活用して提供できるよう協力いただけないかと訴えたところ、著作権者側委員などから賛同の発言があった。それを踏まえて、協会は権利者団体に対し下記の「依頼文書」を出すことにした。
この公衆送信による情報提供は、「著作権者が許諾すると推定される」ことを前提とするもので、被災者支援の目的に限られる。震災の被災により、資料・情報の入手の困難な地域を対象に、期間は被災地域の図書館が再開するまでの期限が想定される。
各図書館において、被災地からの要請に積極的に応えることが期待される。
2011日図協第48号
2011年3月25日


著作権権利者団体 御中


被災者を支援する図書館活動についての協力依頼

―被災地域への公衆送信権の時限的制限について―

社団法人日本図書館協会
理事長  塩 見  昇
( 公 印 省 略 )

 拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
平素より、当協会の事業にご支援、ご協力をいただき、誠にありがとうございます。
 このたびの大震災の救援、復旧にご尽力されていることに衷心より敬意を表します。当協会も、図書館の被災状況の把握、情報提供などに努めているところです。
また図書館の機能を発揮した支援活動、サービスの展開することを図書館の現場に訴えております。そのなかで求められていることがあります。ぜひともご協力をいただきたく以下に述べさせていただきます。
 被災地の救援、生活基盤の復旧が急がれておりますが、資料、情報の入手、読書も切実に望まれております。これは図書館が担うべきことですが、被災地の図書館は実施できないか、実施できても困難を極めております。
 そこで全国の図書館による支援が求められています。その一環として、ICTを活用したネットワークにより行うことが極めて有効です。
 以下について実現することは、現下の極めて困難な生活を送っている被災者に対する励ましになるものと思います。格段のご配慮をいただきたくお願いする次第です。

敬具




1 図書館の文献複写サービスによる複写物を、メールやFAXなどにより被災者や被災地の図書館や病院等の公共施設等に送信することを許していただきたい。
 また救援活動を行っている団体や個人などへの送信も許していただきたい。
 被災者にとって生活に関わる資料、情報は必要であり、また救援活動をしている人たちにとっても、医療、法律、行政などの情報は欠かせない。被災地でそれらを入手することは極めて困難であり、図書館のネットワークを通じての提供が求められる。


2 被災地における乳幼児への絵本の読み聞かせや高齢者向けのお話し会の実施のために必要となる資料の複製や拡大写本の作成を許していただきたい。
 また各図書館での読み聞かせやお話し会を被災地に中継、録音録画したものの配信、絵本の版面の公衆送信などを許していただきたい。
 読み聞かせやお話し会の様子を中継・録音録画したものを配信することは、困難な生活を送っている人たちに生きる力を与え、癒しともなる。
特に読み聞かせは子どもたちの心的外傷性後ストレス障害の予防に役立つといわれていることから大変重要である。

3 許諾の期間、地域について
  以上のことについての許諾の期間、地域の範囲については、このたびの大震災による被災のため、資料、情報の入手の困難な期間および地域に限定するものとする。
  被災地の復興がある程度なされた段階で複製物等は廃棄するものとする。

以上