日本図書館協会は、前身を1892(明治25)年結成の日本文庫協会まで遡る長い歴史のある、日本の図書館を代表する全国組織です。現在は公益社団法人として、図書館の進歩発展を図る事業を行うことにより、人々の読書や情報資料の利用を支援し、文化の進展及び学術の振興に寄与することを設置目的に掲げています。そして、ここでいう図書館に、あらゆる種類すなわち公共図書館、大学図書館、学校図書館、専門図書館、公民館図書室、国立国会図書館、その他の読書施設、情報提供施設を包含し、館種ごとの専門性を究めるとともに、図書館相互が連携し一体となって進歩発展することに資する事業を展開していることが、本協会の大きな特色です。
未だ猛威を振るっている新型コロナウィルス感染症や、地球規模で進む気候変動など参照すべき前例のない課題から個人的なことまで、私たちの日常には、大小さまざまな問題が発生します。現代社会にあっては、誰もがその折々に、適切な情報を入手し、それに基づいて、個々人のレベルで的確な判断を下すことが求められています。それには、職員の知識と技術によって選別された多様な視点からなる正確な資料と情報を、求めに応じて、公平に提供する図書館の存在が、極めて重要なものとなっているといえます。
図書館はこれまでも取り巻く環境と利用要求の変化に応じて変容を遂げてきました。2000年以降のインターネットを用いる情報技術の広範な普及により、情報流通のデジタル化が一般化し、図書館においても来館を要しない電子図書館サービスの利用要求が高まっています。リモートワークの常態化、生徒に1台ずつパソコンやタブレットを配布するGIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想の実施なども、この動きを加速させるものといえます。一方で、新型コロナウィルス感染症拡大のために休館を余儀なくされていた図書館が再開した時には、開館前から多くの利用者が並んでいる光景が各地から報告されました。このリアルな図書館がもつ特質・利点と、電子図書館がもつ距離を超えた情報流通の利点とを融合させて、より利用者に求められる図書館、頼りにされる図書館となるよう、多面的・多角的な事業を推進して参ります。
各位のご支援・ご協力をお願い申し上げます。
植 松 貞 夫
(うえまつ さだお:日本図書館協会理事長)
なには,ともあれ,728日
小 田 光 宏
みなさま,728日間の業務執行をお見守りいただき,心から,感謝申し上げます。2021年度より本務校の役職が加わり,二つの重責を担うことは難しいため,任期終了をもって退任いたします。
理事長に選任されてからの日々,日本図書館協会の維持と,その存在意義の向上を目指して,業務執行理事各位とともに,努力して参りました。十分な営みでないにしても,前進することを重視し,やれることをやるのは今であると,自らを叱咤して歩み続けました。
ただ,2020年以降の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響から,解決すべき課題をすべてこなせたわけではありません。代議員定数の是正,役員の重任回数の設定,委員会の再編など,組織上の重要案件への取り組みは,後を託す方々にお願いするところとなります。
また,公益社団法人としての日本図書館協会は,未だ道半ばと受けとめています。役員ですら,社団法人時代の認識に基づく発言をしている場面に,しばしば出会いました。組織改革に加えて,関係者の意識改革が欠かせないと思われますが,それもまた,今後への期待となります。
理事長退任後は,ひとりの会員として,日本図書館協会の持続的な発展に貢献したいと思います。今後とも,よろしく,お願い申し上げます。
(おだ みつひろ:日本図書館協会前理事長)