令和6(2024)年能登半島地震について

この度、地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。
また、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げ、一日も早く平穏な日々に戻る事をご祈念申し上げます。
日本図書館協会及び図書館災害対策委員会も微力ではありますが、支援を模索し、対応してまいります。
被災情報並びにお困り事がありましたら、メールにてご一報いただければ幸いです。
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被災地支援レポート 2(2011.9~2011.12)


福島県高等学校司書研修会 図書修理研修実施報告(鈴木千雅子)

茨城県筑西市立中央図書館補修研修実施報告(岡橋明子)
寅さんプロジェクト(上映とお話会)ボランティアに参加して(小室啓子)
本の修理ボランティアレポート -Help-Toshokan(図書館支援隊)(佐竹かおる)

福島県高等学校司書研修会 図書修理研修実施報告

  鈴木千雅子(川口市立戸塚図書館)

 11月24日(木)に福島県郡山市にある尚志高等学校で修理講習会が行われた。これは福島県高等学校司書研修会県南部会の依頼に応じて、東日本大震災対策委員会が被災地支援として講師に眞野節雄氏(東京都立中央図書館、資料保存委員会委員)を派遣したものである。講習会の補助として、先の修理ボランティア養成講座修了生が筆者を含めて2名参加した。
尚志高等学校 福島県内は海岸部での津波・原発被害が大きく報道されるなか、実は地震の揺れの被害は内部のほうが大きかったと聞いていたとおり、未だ郡山市立中央図書館は災害復旧工事のため閉館を余儀なくされている状況である。JR郡山駅を降りると一見大きな震災の跡は見られなかったが、会場となる高校への道のりの間、地震の被害により校舎の2/3を失いブレハブで授業を行っている学校や改修中とおぼしき施設などが見られた。公共施設でも未だに立ち入れないままの所もあるそうである。

 研修会は午前10時から始まり、福島県内の学校図書館司書13名が図書館における課題について議論している傍らで講師、助手ともに準備を行い、修理講習会自体は10時30分から夕方4時30分まで行なわれた。
 進行は初心者向けの修理講習会として、午前中は資料の補修についての講義を中心に行われ、受講者は真剣な面持ちで聞き入っていた。午前の終わりから無線綴じ本の修理を始めた。手を動かし始めると皆次第に肩の力が抜けてきて、隣の席どうしで作業を確認しあったり、講師に質問をしたりと積極的になってきた。午後になると針と糸で資料を綴じたり、表紙の外れた本の修理のために本を解体したりして、一層表情もゆるみ笑い声も聞かれるほどになった。人によって多少作業時間に差が出たが、全員ふたとおりの本の補修方法を実習し終えることができた。

 講習風景後日、受講者からは「講義の内容が非常に分かりやすかった」「資料保存の根本的な考え方が理解できた」「製本の基本を理解することができた」「すぐに実践にいかせそうだ」との感想をいただけた充実した研修であった。
当日は、学校図書室の資料で表、紙が完全に外れているが大切な資料なので修理したいというものを持ってきた人もあり、震災での被害がまだ学校生活のなかに生々しく残っているのだと感じた。
 修理の実習を一通り終わったところで、今回の依頼に含まれていた「被曝した資料の救い方」について、眞野講師が調査した結果を話された。残念ながら現状では二次被害のリスクを考えると被曝資料そのものを救うのに適切な事例は見つけられなかったとのこと。もしかしたら、建物内部にある資料であれば、現状で過度に被曝していない可能性も考えられるとのことであった。各自治体の郷土資料など、他では替えがたい貴重なものもが無事であることを祈るばかりである。
 
講師以下3名で、同じ福島県内の沿岸部の被害の大きさに遠慮し、自分たちへの支援の声をあげられないところがあるのではないか、そういったところにも目配りをして支援していけるようになるとよいと感想を述べあい帰途に就いた。

 

茨城県筑西市立中央図書館補修研修実施報告 

 

 岡橋明子(国立国会図書館)

 
 さる10月17日(月)、東日本大震災対策委員会は茨城県筑西市立中央図書館において、破損資料の補修研修を行った。震災による被害は軽微であったものの、これを機に基礎的な補修について学びたいとの依頼を受け、日本図書館協会「Help-Toshokan」図書館支援隊の第3期活動の一環として実施したものである。講師は真野節雄氏(東京都立中央図書館、資料保存委員会委員)が務め、資料保存委員会委員の筆者とと修理ボランティア養成講座修了生1名が実習の補助にあたった。 
 研修には、中央図書館・明野図書館あわせて18名が参加した。補修作業の経験があまりない参加者が大半であることから、まずは補修の基本的な考え方について講義と実演を行い、その後、基礎的な技術を実習形式で学んでいただいた。 

 講義では最初に、資料を長期にわたって保存する上で支障のない方法・材料をできるだけ選択すること、必要があれば資料を手当する前の状態に戻せる方法・材料をできるだけ選択すること、といった補修の基本事項について説明があった。次に、破損した資料の補修材料であり、新しく本をつくる製本材料でもある「紙」と「接着剤」について説明があった。接着剤で背を固めた無線綴じ本に見られる背割れ、糊をほとんど使わずに糸で綴じて仕上げる和装本のしなやかさと丈夫さなどを例に挙げ、資料が破損する原因や補修材料に求められる特性について解説がなされた。

製本講習会 実演では、資料の本文ページに寄ったシワののばし方、破れた本文紙を和紙で補修する方法、外れた本文ページを元の位置に差し込む方法、ゆるんだ綴じ糸を補強する方法、見返しのゆるみを接着剤でとめる方法などの紹介があった。また、紙(和紙)と接着剤(でんぷんのりとボンド)を扱う際の注意点として、以下のポイントについて説明があった。
・紙の目(紙を製造する過程でできる繊維の流れ)に注意して作業すること
・作業目的に適した強度・濃度の接着剤を選ぶこと
・接着剤が完全に乾いてから次の作業を進めること
・乾燥中は補修した資料を板の間にはさんで重石をし、本文ページの波打ちを落ち着かせること

 製本講習会
実習では、無線綴じ本の補修と表紙が外れた本の補修を行った。無線綴じ本の補修では、ノド(本の綴じ目と本文紙の文字部分との間にある余白)の部分に目打ちで穴をあけ、糸で綴じて表紙をかぶせ直した。表紙が外れた本の補修では、片側の見返しが本体から外れた本の背に筒状の丈夫な紙を貼り、表紙と本体をつなぎ直した。筒を背に貼ることで本の開きがよくなり、背にかかる負担を和らげることができる方法である。参加者は互いに助け合いながら、それぞれ熱心に作業に取り組んでいた。作業の合間や休憩時間には補修に関する質問が講師に多数よせられた。研修終了後には「具体的な補修方法だけではなく、本が壊れる理由やでんぷんのりを使って補修をする理由なども学ぶことができた」「特別な道具がなくても簡単な補修ならできると分かった」といった感想を参加者からいただいた。

 研修でとり上げた補修作業はいずれも、特別な道具や材料を必要とせず、地震などで書架から落下した資料の手当てにも応用が効く。破損して利用できなくなった資料を再び使える状態にするための選択肢のひとつとして、習得した知識と技術を活用していただければと思う。

 東日本大震災対策委員会では、補修方法を自ら学ぶ研修の他、被災資料の簡易修理を行うボランティアの派遣も行っている。被災地の図書館(館種不問)で何らかの支援を必要とする図書館は、ぜひ東日本大震災対策委員会にご相談をいただきたい。

◆研修で使用した主なテキストは、東京都立中央図書館のホームページからダウンロード可。http://www.library.metro.tokyo.jp/about_us/syusyu_hozon/siryou_hozon/tabid/2133/Default.aspx
(ホーム> 都立図書館について> 資料収集・保存について> 資料保存について> 資料保全室の仕事)

◆研修に使用した主な材料・道具
材料 ― 和紙、使用済みクラフト封筒、裏打ちキャラコ、裏打ち寒冷紗、でんぷんのり、ボンド、綴じ糸、反故紙など
道具 ― カッター、はさみ、定規、ハンドタオル、カッターマット、平筆、締め板、おもし、へら、ピンセット、目打ち、かしわ棒(目打ちを叩くための木製の棒)、竹串、針など


寅さんプロジェクト(上映とお話会)ボランティアに参加して

小室啓子(文教大学湘南図書館)

 震災以後、何か手伝えることがないかと探していた時に、日本図書館協会で震災ボランティア を募っていることをHPで知り、是非参加したいと思い応募した。しかし現実には、資料修理は経験がなく、本の読み聞かせは、自分の子どもの小学校でのボランティア程度といったしか経験がない。それでもなんとか被災地へ赴いて、ボランティアに参加したいという思いだけが先行していたところ、大船渡でのお話会と映画の上映会の手伝いに加えていただいた。参集したみなさんがお話会のために互い持ち寄ったものは、絵本以外にも紙芝居や手作りのパネルシアター、人形などにおよび、日頃は大学生や教職員ばかりを相手にしている図書館員にとっては、どれも物珍しいものばかりだった。イベント当日は会場の設営や、会場内の案内を手伝い、わずかながら手遊びに加わって過ごした。盛りだくさんのおはなし会と上映会は、盛会のうちに終了した。
 既に震災から8ヶ月あまり、生々しかった被災地支援レポートにあった写真の地辺りも現在ではガレキが取り払われつつあり、少しずつ復興へと向かっているようにも見える。   今回の被災地訪問ボランティアでは、私が実際に手伝えた事は僅かであったが、日頃交流する機会の少ない公共図書館の方達と、一緒になって行動できたことは大きな収穫だった。特に昨今公共図書館と大学図書館が協力しあい利用者を受け入れるなどの支援を行なっている図書館も増えている。私の所属する図書館も市民や学外者の利用が可能となっている。このような状況の中で、ボランティアを通じて交流が出来たことは、貴重な経験となった。

 

 大船渡リアスホール

 タイムカプセル

とても立派な大船渡リアスホールの会場前の廊下。8月までは被災した皆さんが、過ごされていたそうだ。

 三階建ての屋上まで海水に浸かった陸前高田の図書館前のタイムカプセル。このカプセルが向かう50年後の2037年は、この辺はどう変わっているのだろうか。

 

 

本の修理ボランティアレポート(図書館支援隊

 佐竹かおる(埼玉県立久喜図書館)

 

  8月3日(水)、東日本大震災の影響で休館が続く茨城県立図書館に、本の修理の支援活動を行った。
事前に、日本図書館協会実施のボランティア養成講座を受講し、茨城県立図書館へは、受講者の中から6名、資料保存委員2名、震災対策委員1名の計9名で参加した。
9時50分同館に到着。10時から館内の施設被害状況を見学。
同館は旧県議会議事堂を改修した建物で、震災の被害に関しては、蔵書以外に建物の被害も大きかったとのこと。壁材の落下箇所等を工事するための足場が組まれており、今なお復旧工事が続いている。
10時30分より作業室でミーティング開始、道具の説明、要修理資料の確認。 室内には大量の要修理資料が積まれており、対象は約200冊。1日でどれだけ修理できるのか、不安と期待を感じる。
修理作業の様子
【資料の状況】
壊れた資料の状況は様々で、すぐに修理できるものや、1日では終わらないものが混在していた。
壊れた資料の症状として多くみられたのが、落下による表紙外れやのどのゆるみ。
資料そのものの重さに耐えられず表紙が外れてしまったものとしては、やはり辞典類が多いように感じた。また、古い郷土資料などは、紙自体が弱くなっており、落下の衝撃に耐えられず表紙が外れてしまった様子。
のどのゆるみがでてしまった資料は、落下により表紙と本体をつなぐ見返しののどの部分に負担がかかったようで、放っておけばいずれ表紙が外れてしまいそうな状態。
【仕分け作業】
このため、まずは資料保存委員の方々が資料の状況を確認し、比較的簡単に修理可能なのどのゆるみ資料と、修理に時間がかかる背・表紙外れのものとで、内容別に仕分けていただくことから作業が始まる。
【修理】
1冊ずつ、手作業で本を修理するのはたいへん時間がかかるが、8名で分担し、集中して作業を行った。最初に仕分けていただいたのが上手くいったのと、修理の方法を相談しながら作業ができたので、大変勉強になった。
【結果】
16時45分作業終了。計180冊を修理することができた。 資料保存委員の方によれば、大きく破損した資料の修理だと、一日に5冊程度、簡易な補修を混ぜるとしても多くて10冊程度とのこと。このことから、8人で40冊~80冊くらいが目標ということになるところで、180冊できたのは大きい数字とのこと。 このことは、同館の修理ボランティアの方々と、同館職員の方々と共に作業させていただいたことも、冊数に表れていると思われる。
【感想】
茨城県立図書館の修理ボランティアの方々は熱意にあふれ、修理の方法についてたくさんの質問があり、熱気のこもった熱い1日となりました。 最後に反省報告会がありましたが、「こうして人と人が支え合っていることに希望を感じました。」との同館職員の方の言葉に、今後も支援活動を続ける意義を感じました。 茨城県立図書館は、9月上旬の開館を目指しているとのことですが、色々な人達の熱意によってよみがえった本が、茨城県民の皆さまの手に届きますように、心からお祈り申し上げます。 

 

 

 

 

 

 

 

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