用語解説 Word版
用語解説 PDF版
用語解説 テキスト版
用語解説 点字版
1-9 対面朗読
視覚障害等により,図書館資料をそのままでは読むことが困難な人の読書を保障するサービスの一つ。
図書館の朗読室等で,音訳者が利用者の読みたい本や雑誌を対面で読む。対面音訳や対面リーディングなどともいわれる。
1-10 読書支援機器
拡大読書器,書籍の自動読み上げ機,デイジー再生機,点字ディスプレイなどが挙げられる。広い意味では,ルーペ,書見台,リーディングトラッカーなども含まれる。
パソコンやスマートフォンに画面読み上げソフト等のアプリを入れる場合と,専用の再生機器を用いる方法がある
近年ではスマートフォンを活用して,録音図書や電子書籍を利用できるようになってきている。スマートスピーカーによる読書も開発が進められている。
2-3,2-5 デイジー(DAISY)
デイジー(DAISY)は,「Digital Accessible Information SYstem」の略で日本語では「アクセシブルな情報システム」と訳す。視覚障害者,高齢者,発達障害者,知的障害者および聴覚障害者など,印刷された出版物を読むことが困難な人のためのアクセシブルな電子書籍の国際標準規格。
デイジー図書は,専用再生機,パソコン,タブレット,スマートフォンなどを利用して読みたいページに移動したり,スピードや文字の大きさ・色・背景色などを変更して読むことができる。以下の3つの種類の図書がある。
(1) 音声デイジー
目次とページのテキストがあるが,本文部分は,音声のみのデジタル録音図書。
(2) テキストデイジー
目次と本文のテキストでできているデイジー。音声はないが,音声化ソフトを用いて読み上げが可能。
(3) マルチメディアデイジー
目次と本文のテキストと,音声と画像でできたデイジー。音声を読み上げると同時にテキストの該当個所をハイライト表示する。画像もあり,わかりやすくなっている。
2-5 プレーンテキスト
文字の種類・色・大きさ・レイアウト情報などをもたないテキストデータ。
2-6 拡大写本
視覚障害者等のために,ボランティアにより読みやすい文字の大きさに拡大して作成された図書。
当初はボランティアが1つずつ手書きで作成したものが大半であったが,現在はパソコンによって作成されたものが多い。
2-7 字幕・手話入り資料
映像資料に聴覚障害者用の字幕や手話の入ったもの。背景音など,セリフ以外の情報も字幕になっている。洋画の字幕は聴覚障害者用ではないが,それで使える聴覚障害者も多い。
2-12 要約筆記
聴覚障害者へ話の内容を文字に変えて伝える方法。その際,話す速さに文字化が追いつかない場合,話の内容を要約するので「要約筆記」という。文字を手書きする場合と,パソコンでキーボード入力する場合がある。対象者が大勢いる場合は,拡大投影機を用いスクリーンに映す。1~2名の際は,「ノートテイク」といって聴覚障害者の横に座り,紙や画面を見てもらう。最近は,より多く文字化するために「パソコン文字通訳」といって,2名以上の入力者が連携して文書を作成する方式もある。
2-13 リーディングトラッカー
読みやすいように資料の特定の行に焦点を当てるための読書補助具。タイポスコープともいう。もともとは視野狭窄のある視覚障害者のための読書補助具であった。近年は,ディスレクシアのある発達障害者や高齢者などの利用ニーズも高い。
2-14 デイジー再生機
主に音声デイジーを再生するための専用機。録音機能や,サピエ図書館に単体でネットから接続して利用できるものもある。
2-14 音声読書器
紙に書かれた情報を自動的に合成音声で読み上げる機器。文字の読み取り方法が据え置き型のものと,カメラ型のタイプがある。
2-17 サピエ
視覚障害者等のための総合情報ネットワークサービス。
全国の点字図書館等が製作・所蔵する点字や録音資料等の書誌情報とそのデータ等を収録するオンライン図書館。資料の検索だけではなく,オンラインで貸出依頼を出したり,コンテンツをダウンロードできるものもある。図書館等の施設やボランティアには一部有料のサービスもあるが,視覚障害者等はすべて無料で利用できる。
https://www.sapie.or.jp/
4-1 特定録音物等郵便物発受施設
第四種郵便物として特定録音物等郵便物(盲人用録音物)を無料で郵送することができる施設を指す。日本郵便の認可が必要。
4-2 心身障害者用ゆうメール
重度の心身障害者を対象に,図書館と障害者との間で割引料金で本や雑誌を発受することができるサービス。利用にあたっては図書館から日本郵便への届け出が必要。
4-3 聴覚障害者用ゆうパック
聴覚障害者の福祉を増進することを目的とする施設と聴覚障害者との間で,ビデオテープその他の録画物の貸出・返却を割引料金で行えるサービス。日本郵便への届け出が必要。
4-5 視覚障害者等用データの収集および送信サービス
(1) 国立国会図書館視覚障害者等用データの収集
国立国会図書館は,全国の図書館等が製作した視覚障害者等用データを収集している。収集されたデータは,視覚障害者等の個人や図書館等が視覚障害者等用データ送信サービスを通じて利用できる。収集されたデータのうち,DAISYと点字データについてはサピエ図書館を通じて利用することもできる。
https://www.ndl.go.jp/jp/library/supportvisual/supportvisual-10_01.html
(2) 国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービス
国立国会図書館が製作した学術文献の視覚障害者等用資料のデータ(デイジー・EPUB・プレーンテキストデータ等)と,全国の図書館等が製作し国立国会図書館が収集した視覚障害者等用のデータ(デイジー・点字・テキストデータ等)を,視覚障害者等の個人や図書館等がインターネットを通じて利用できるサービス。
収録されているデータの内,デイジー及び点字データはサピエ図書館からも利用できる。
https://www.ndl.go.jp/jp/library/supportvisual/supportvisual-10.html
2023年3月より「国立国会図書館障害者用資料検索」(みなサーチ)から,デジタル化画像からOCRにより自動生成した未校正のテキストデータも利用できるようになった。
https://mina.ndl.go.jp/
6-10 点訳の部屋
点訳者による点訳作業や,点字プリンターを設置して点字の印刷等を行う部屋。
6-11 障害者サービス用資料コーナー
障害者サービスで用いる,点字や録音等のさまざまな形の資料や,障害者を理解するための資料等を集めたコーナー。障害者だけではなく,広く市民に公開する。「りんごの棚」という名称を用いている図書館もある。
6-18 補聴援助システム
マイクからの音声を無線方式等で聴覚障害者の補聴器や人工内耳へ送信するシステム。聴覚障害者は雑音がある場所や話し手との距離があると特に聞き取りづらくなるが,補聴援助システムは周囲の雑音を入れないことにより,聞き取りやすくする。「ヒアリングループ」などがある。
6-24 弱視
視覚障害者で全盲でないもの。ロービジョンともいう。見え方が人によりかなり違うので支援に配慮が必要。
7-6 点字ディスプレイ
点字を機械的に表示する装置。パソコンの操作画面に表示された文字を点字に置き換えることで,視覚障害者が情報を読み取ることができる。また,単体で点字データを読み取ることもできる。ピンディスプレイとも言う。
7-7(1) スクリーンリーダー(画面読み上げソフトウェア)
視覚障害者等がパソコンやスマホを使う場合に,キーボード・タッチ操作や画面を音声で読み上げるソフトウェア。
たとえばiPhoneなどに搭載されているVoiceOverなどが有名である。
パソコンではWindowsに標準搭載されたナレーターや,Macパソコンに標準搭載されたVoiceOver等がある。
近年はOSにアクセシビリティ機能が標準搭載されるようになってきているが,その機能だけでは操作が難しい場合が多くあり,追加で支援ソフトをインストールして使用することが多い。
7-7(2) 画面拡大ソフトウェア
視覚障害者や高齢者等が,パソコンやスマホの画面にある文字等を読みやすい大きさに拡大する際に使用するソフトウェア。
7-7(3) 音声ブラウザ
パソコンでホームページを閲覧した時に,その画面に表示されている内容を音声で読み上げたり,画面の変化を音声で伝えるためのソフト。
簡単なキーボード操作で画面上の必要な箇所に移動したり,画面上の文字列を検索したり,弱視者向けに文字の大きさや色を変えたり,効率的にホームページを読み上げできるように工夫されている。
また,パソコンに点字ディスプレイを接続することで点字で画面の内容を表示することができるようになる。
7-7(4) 読書専用ソフトウェア
電子媒体の図書(デイジー,テキストデータ,PDF,EPUB,ワード,エクセル等)が音声や拡大機能等で閲覧できるソフト。
サピエ図書館や国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービスにアクセスして,障害者サービス用資料が閲覧できるものもある。
7-7(5) 活字OCRソフトウェア
パソコンに読み取り用のスキャナを接続し,紙の書籍を画像データとして取り込み,それを文字データに変換するためのソフト。文字データはそのまま合成音声で読ませたり,テキストデイジーやマルチメディアデイジーの素材となる。
他にもスマートフォンのカメラで写真を撮影し,その中から文字列を認識して読ませる機能を搭載しているアプリもある。
スキャナにもいろいろな形状の機種があり,コピー機をそのまま使えるものもある。
7-7(6) 点訳ソフトウェア(点字エディタ)
パソコンで点字図書を作成するソフト。音声読み上げや,点字ディスプレイ,点字プリンターと接続して点訳図書を作成するのに用いられている。
主に点訳ボランティア向けに点字図書を作成するためのツールと,視覚障害者が点字図書を読んだり,点字データを編集したりする機能に大別される。
また,点図を作成する機能を付加したものや,点図作成ツールと連動して作図できるソフトも開発されている。
7-7(7) 自動点訳ソフトウェア
ワード等の漢字仮名交じりの一般的な文章を,点字データに自動的に翻訳するソフト。点字には基本的に漢字はなく,仮名のみでできているため,分かち書きと言って特有のマス空けのルールがあり,自動的に変換することができる。
ただし,自動点訳には誤読等の誤変換が発生するため,点字表記に慣れた人の校正と修正が必要となる。
7-9 点字プリンター
パソコンに接続して点字を印刷する専用の機器の総称。機種により印刷速度や印刷時の動作音などにも違いがある。両面印刷や点図の印刷に対応した機種もある。
7-11 ウェアラブル眼鏡
メガネに取り付けられた小型カメラ映像を自動的に音声化するAI視覚支援機器。文字の読み上げ,顔の認識,商品の識別等を行うことができる。日本ではいくつかの海外製品が販売されている。
7-16 筆談器
聴覚障害者・言語障害者等のために,筆談によるコミュニケーションが取れるように設置してある紙や専用の器具のこと。
7-17 コミュニケーションボード
知的障害者,自閉症,聴覚障害者等のコミュニケーション支援を目的として作成された図版。指差しして用いることが想定されている。
絵に加え,簡易な日本語,英語,韓国語,中国語が記載されているものもある。
7-18 立体プリンター(3Dプリンター)
立体物を表す設計データをもとに,樹脂で立体の造形物を作ることができる機械。
7-18 立体コピー機
視覚障害者等が触って形がわかるように,専用紙(カプセルペーパー)の表面が立体的に盛り上がって印刷できるコピー機。
専用紙を立体コピー機に通すことで,書かれた黒い文字や線が膨張して盛り上がるようになっている。
7-20 電子ルーペ
弱視など見えづらい視覚障害者等が印刷資料を読みやすい大きさに拡大して読むことができる機器。レンズを使用したルーペとは違い,明るさ,文字の大きさを変更できたり,白黒反転することができるものがある。特に,持ち運びができる小型のものをいう。
7-21 点字器
点字を一点一点打って書く用具。点字用紙1枚分の点字盤のほか,携帯用点字器もある。
7-22 点字タイプライタ―
点字を一文字ずつタイプして書く機器。
7-23 表面作図器(レーズライター)
専用の板に専用の紙を装着してボールペンなどで強く書くことで線を浮かび出すことができる器具。簡単な図や写真を手書きすることで触って読むことが可能となる。ただし,細かい部分は書けないので,かなり大きめに書いたり,情報を抜粋して表現する等の工夫をする必要がある。
8-8 アクセシブルな電子書籍
障害者や高齢者等が使えるように配慮した電子書籍のこと。
8-8 EPUB
EPUBは「Electronic Publication」の略で,電子書籍のファイルフォーマットの一つとして広く一般的に流通している。EPUB3は2011年にデイジー(DAISY)と統合した。2020年にISO規格となり,DAISY規格と同等のアクセシビリティや,日本語の縦書きやルビへの対応などが実現された。2021年には,EPUBのアクセシビリティを明示・規定するISOの規格もでき,利用者は書誌情報から自分の読めるものを選ぶことができる。
8-8 透明テキスト付きPDF
PDFデータに文字列を付加した形式。表面上画像データに見えても,文字データも含んでいることから,画面読み上げソフトでも利用可能となる。文字列の検索も可能である。
8-9 大活字本
視覚障害者や高齢者等向けに,大きな活字と読みやすいフォントで印刷された図書。通常は出版された図書を指すが,拡大写本等も含めた文字の大きな図書全般を指すこともある。
8-11 点字付き絵本
見える人と見えない人が一緒に絵本を楽しめるようにと工夫された図書。
市販の絵本に文字の部分を点訳した透明なシートを貼って手作りされたものと,すでに文字の部分に点字を併記して出版されているものがある。
8-12 触る絵本
視覚障害児等が触って楽しめるように,主に市販の絵本を元にして,台紙の上に布や毛糸,皮やビーズなどの素材を使って絵の部分を作り,点字と墨字で文字を書いた絵本。手で見る絵本などとも呼ばれる。
なお,墨字とは紙に書かれた文字のこと。視覚障害者の点字に対して,印刷または手書きの文字のことをいう。
8-13 布の絵本
障害のある子どもたちのために布やフェルトを使って作られた絵本。ボタンやマジックテープなどを使って取り外したりくっつけたりして遊ぶことができる。布やフェルトを使った遊具を含んでいわれることもある。楽しみながら発達をサポートし手指の訓練にもなる絵本。
8-15 LLブック
わかりやすく書かれていて読みやすい本のこと。やさしい日本語による文章,文章の意味理解を助けるピクトグラム(絵記号)などを用いることが特徴。主な読者として,知的障害者や外国にルーツのある人が想定される。必ずしも子ども向けではなく,生活年齢にあったテーマをわかりやすく伝えることが意図されている。
10-9 アクセシブルなデータベース
データベースが音声環境等で障害者等も使えるように配慮されていること。
10-10 アクセシブルなデジタルアーカイブ
デジタルアーカイブが障害者等も使えるように配慮されていること。
10-11 アクセシブルなウェブOPAC
図書館のウェブOPACが,音声環境等で障害者等も使えるように配慮されていること。
10-12 アクセシブルな館内OPAC
図書館の館内OPACが,音声環境等で障害者等も使えるように配慮されていること。
10-13 施設入所者へのサービス
何らかの施設に入っていて来館が困難な人たちへのサービスの総称。
図書館が施設に出向いて,貸出,おはなし会等を行う直接的なサービスと,施設への団体貸出,施設利用者への郵送や宅配を行う個人向けサービス等がある。
10-14 入院患者へのサービス
病院等に入院している患者へのサービスの総称。
図書館が病院等に出向いて,貸出,おはなし会等を行う直接的なサービスと,病院図書館や患者図書館への団体貸出,入院患者への郵送や宅配を行う個人向けサービス等がある。
10-15 特別支援学校・学級へのサービス
特別支援学校や地域の学校の特別支援学級に学ぶ何らかの支援が必要な児童生徒へのサービスの総称。多くは,学校図書館や教員との連携により行われる。
図書館が学校に出向いて,利用案内やおはなし会等を行う直接的なサービスと,学校図書館への団体貸出やリクエスト資料の提供,学校図書館を通じての個人利用者への資料提供等がある。資料の搬送も図書館が定期的に行っている場合がある。
10-16 合理的配慮の提供
障害者の権利に関する条約や障害者差別解消法で規定されている概念。障害者等の社会的不利益がある人への個別の配慮や支援を指す。社会のあらゆる物やサービスについて,それを行う者(職員等)が,障害者等のそのサービスを使えない人の利用を保障しなくてはならないということ。利用者とそのサービスを行う職員が連携して,合理的にできうる範囲の支援を行う。ただし,過度な負担でないこととされている。
11-5(2) ウェブアクセシビリティのJIS規格
「JIS X 8341-3:2016 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第三部:ウェブコンテンツ」
障害の有無に関わらず,誰もがウェブコンテンツを利用できるようにするための基準。使用している端末,ウェブブラウザ,支援技術などに関係なく,ウェブコンテンツを利用することができるようにすることを目的としている。そのためにウェブコンテンツが満たすべきアクセシビリティの品質基準として,レベルA,レベルAA,レベルAAAという3つのレベルの達成基準が定められている。
https://waic.jp/knowledge/accessibility/#view-obtain-jis
11-5(3) 読み上げソフトに対応したページ
読み上げソフト(スクリーンリーダー)で読めるように配慮されているHPのこと。音声のみで使うことを意識したページ構成,文字データでできている,画像や写真に代替テキストが付いているなどの配慮がある。
15-2 視覚障害者情報提供施設
視覚障害者へ,点字図書・録音図書の貸出や製作等を行っている施設。
点訳・朗読ボランティアの養成,視覚障害者に対する点字・読書用機器操作の指導等を併せて行なっている施設もある。
身体障害者福祉法第34条で位置づけられ,都道府県,市町村,社会福祉法人等によって設置・運営されている。
15-3 聴覚障害者情報提供施設
聴覚障害者のために手話通訳者の養成や派遣を行う施設。字幕・手話の入った映像資料の貸出や制作も行っている。併せて聴覚障害者への各種相談事業・情報機器の貸出等を行っている。
身体障害者福祉法第34条で位置づけられ,都道府県,市町村,社会福祉法人等によって設置・運営されている。