公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準
(平成13年7月18日 文部科学省告示)
平成12年12月25日
各公立図書館長 殿
生涯学習審議会社会教育分科審議会
計画部会図書館専門委員会
「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準について(報告)」について(送付)
当専門委員会は、平成10年9月の生涯学習審議会答申「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」において検討することが必要とされた図書館法第18条に基づく「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」について、平成4年5月の生涯学習審議会社会教育分科審議会施設部会図書館専門委員会報告「公立図書館の設置及び運営に関する基準について」を踏まえ、新たな情勢に対応すべく、平成10年12月から調査・審議を進めてきましたが、このたび12月8日に標記報告としてとりまとめ、文部省に提出しましたので、参考までに送付いたします。
この報告の「Ⅲ 基準の内容」で提言した基準は、基本的には「公立図書館」を対象としたものであり、各公立図書館自身が設置者である都道府県・市区町村の財政当局との折衝等を通じて自ら達成すべきものですが、一部には「設置者」を対象としたものも含まれていますので、両者の差異に御留意ください。
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平成12年12月8日
生涯学習審議会社会教育分科審議会計画部会図書館専門委員会
目 次
- 審議の経過
- これからの公立図書館の在り方
- 図書館利用者の拡大に向けて
- 豊かな図書館サービスの展開に向けて
- 今後の課題
- (1)体制の整備
- (2)住民の意思に基づく図書館の運営
- 基準の内容
- 総則
- (1)趣旨
- (2)設置
- (3)図書館サービスの計画的実施及び自己評価等
- (4)資料及び情報の収集、提供等
- (5)他の図書館及びその他関係機関との連携・協力
- (6)職員の資質・能力の向上等
- 市町村立図書館
- (1)運営の基本
- (2)資料の収集、提供等
- (3)レファレンス・サービス等
- (4)利用者に応じた図書館サービス
- (5)多様な学習機会の提供
- (6)ボランティアの参加の促進
- (7)広報及び情報公開
- (8)職員
- (9)開館日時等
- (10)図書館協議会
- (11)施設・設備
- 都道府県立図書館
- (1)運営の基本
- (2)市町村立図書館への援助
- (3)都道府県立図書館と市町村立図書館とのネットワーク
- (4)図書館間の連絡調整
- (5)調査・研究開発
- (6)資料の収集、提供等
- (7)職員
- (8)施設・設備
- (9)準用
I 審議の経過
図書館は,生涯学習の振興を図る上で,住民の身近にあって学習活動を支援する極めて重要な社会教育施設である。今日,社会の様々な変化に伴って高度化・多様化する住民の学習要求に適切に対応するため,生涯学習の振興や地方分権の推進等が進められているが,平成10年9月の生涯学習審議会答申においては,図書館法第18条の「公立図書館の設置及び運営上望ましい基準」を検討することが必要とされた。
これを受けて本専門委員会は,平成10年12月から,平成4年5月に生涯学習審議会社会教育分科審議会施設部会図書館専門委員会が報告した「公立図書館の設置及び運営に関する基準」を踏まえ,新たな情勢に対応すべく公立図書館からのヒアリングや実地調査等を重ねて検討を進めてきた。平成12年8月に中間まとめを公表し,関係機関からの意見を参考にさらに協議を重ねてきた。このたび,この審議の結果を「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準について」報告としてとりまとめた。なお,本報告の内容は,今後社会状況等の変化にあわせ,適時適切に改訂されるべきものである。
II これからの公立図書館の在り方
1 図書館利用者の拡大に向けて
我が国の公立図書館は,毎年相当数が新たに設置され,各種のサービスも一層の充実・高度化が行われるなど,住民の身近な生涯学習関連施設として各地でその整備が進められつつある。
しかし,図書館を設置していない町村がなお多数存在することや,図書館が設置されていても時間的・地理的条件により十分な図書館サービスを享受できない住民も存在するなど,図書館の利用者の拡大については残された課題も少なくない。このため,図書館を設置していない地方公共団体については,図書館設置に向けたさらなる努力が必要であり,また,既存の図書館についても,利用者の拡大に向けた様々な工夫が期待される。
特に,新しい情報通信技術の開発・普及は,図書館から離れた地域の住民や障害のある人々など,図書館を利用しにくい状況に置かれた住民について,きめ細かな図書館サービスを提供できる可能性を拡大しつつある。
例えば,地方公共団体の区域を超えて住民が相互に利用ができるようにしたり,外部の電子化された情報(以下「外部情報」という。)の入手に関するサービスを行うなど,住民の需要を踏まえた様々な新しい試みを行うことにより,図書館利用者の拡大を図ることも考えられる。
各図書館は,地域の実情を考慮しつつ,より多くの住民に図書館サービスを提供するための方策を創造的に展開していくべきである。
2 豊かな図書館サービスの展開に向けて
情報化,国際化,高学歴化,高齢化,産業構造・労働市場の変化,住民の学習要求の高度化・多様化など,図書館を取り巻く環境は近年急速に変化しつつあるが,各図書館は,こうした変化への適切な対応という課題に直面する一方で,新たな図書館サービスを展開していく好機を迎えている。このような新たな図書館サービスの例としては,次のようなものを挙げることができよう。
(新しい情報通信技術の活用)
コンピュータの整備,インターネットヘの接続,衛星通信受信設備の整備など,新しい情報通信技術の導入・活用を積極的に進めるとともに,既存の図書館資料(以下「資料」という。)の電子化・データベース化や新しい電子資料の収集,提供等を行うことにより,従来の図書館サービスの大幅な拡大・高度化が期待される。
また,外部情報の入手に関するサービスなども,新しいサービスとして実施することが望まれる。なお,その際の対価徴収の在り方については,それぞれのサービスの態様に即して,利用者の情報入手に著しい格差が生じることのないよう配慮しつつ、図書館の設置者の裁量により行うものとする。
(国際化への対応)
国際化が急速に進展する中,我が国に在留する外国人も増加しており,外国語資料の収集・提供,多言語による利用案内やレファレンス・サービスの実施など,従来の図書館サービスについて,国際的視野に立った充実・拡大が期待される。
また,住民が異文化に対する理解を深めたり,異なる文化を持つ人々と共に生きていく資質・能力を身につけられるよう,諸外国や我が国の文化等に関する資料の収集,提供等についても一層充実することが望まれる。
(高齢化への対応)
急速に進展する高齢化に対応するため,高齢者にも配慮した構造の施設を整備することや,拡大読書器など高齢者の利用に資する設備等の適切な整備が期待される。
また,老人福祉施設等関係機関・団体と連携を図りながら,図書館利用の際の介助や対面朗読,宅配サービスなど,高齢者の立場に立ったきめ細かな図書館サービスの拡充を図ることが望まれる。
(子どもの読書活動の振興)
「子ども読書年」等を契機として,子どもたちにとっての読書の意義・価値が改めて見直されているが,このような動きを踏まえ,子どもたちのために必要な資料やスペースの整備・確保,読み聞かせ等の様々な活動の展開など,子どもを対象としたサービスの充実・拡大が期待される。
また,学校教育においても児童生徒の読書活動が振興されていることから,司書・司書補(以下「専門的職員」という。)を学校に派遣し,読み聞かせ等を行うことにより図書館への関心を高め図書館利用の促進を図るなど,学校との連携・協力の拡充を図ることが望まれる。
(職業能力開発のための要求ヘの対応)
産業構造・労働市場の変化等により,就職,転職,能力開発,日常の仕事等のために、図書館から必要な情報や知識を得たいというニーズが高まりつつあり,こうした利用者に対応するための図書館資料の収集・提供や,適切なレファレンス・サービスの実施など,職業あるいは職業能力の開発に関係するサービスを充実・拡大することが期待される。
また,勤務時間による制約を持つ利用者に対応するため,夜間や祝日の開館など,開館時間について弾力的に運営することが望まれる。
(ボランティア活動の推進)
住民の参加を得つつ,図書館サービスの充実を図る観点から,ボランティアの積極的な受け入れは有意義であり,子どもたちの読書活動を支援するボランティアや情報機器の利用支援等に携わる「情報ボランティア」など,ボランティアの活動の場を提供することについて,十分な配慮が期待される。
また,ボランティア活動への参加を促進する観点から,希望者に対し活動の場に関する情報の提供,養成・研修の実施など,諸条件の整備を行うことが望まれる。
3 今後の課題
(1)体制の整備
上記のような図書館サービスの新たな展開を実現するためには,専門的職員の適切な配置や施設設備の充実など,必要な体制の整備を推進することが必要であり,図書館の設置者には,新たな図書館サービスの展開に関する政策決定とともに,こうした体制の整備について十分な配慮を行うことが望まれる。
一方,専門的職員は,利用者である住民のニーズに対応して図書館サービスのさらなる高度化を図るため,図書館に関する研修はもとより,国,都道府県,関係団体等が実施する行政サービスに関する各種の研修にも積極的に参加するなどさらに研鑽を重ね,その能力を高めて住民から「プロフェッショナル」としての信頼を得るように努めなければならない。
(2)住民の意思に基づく図書館の運営
地方分権,規制緩和等が進められつつある今日,図書館の設置・運営は,住民の意思を十分に尊重して行われる必要がある。このため図書館は,住民の需要等に関する調査の実施や図書館協議会の活性化を進めること等により,住民の意思を図書館の運営に最大限に反映させるよう努めなければならない。
II 基準の内容
1 総則
(1)趣旨
- ① この基準は,図書館法(昭和25年法律第118号)第2条第2項に規定する公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準を定め,もって公立図書館の健全な発達に資することを目的とする。
- ② 公立図書館の設置者は,この基準に基づき,同法第3条に掲げる事項などの図書館サービスの実施に努めなければならない。
(2)設置
- ① 都道府県は,都道府県立図書館の拡充に努め,住民に対し適切な図書館サービスを行うとともに,図書館未設置の町村が多く存在することも踏まえ,当該都道府県内の図書館サービスの全体的な進展を図る観点に立って,市(特別区を含む。以下同じ)区町村立図書館の設置及び運営に対する指導・助言等を行うものとする。
- ② 市区町村は,住民に対して適切な図書館サービスを行うことができるよう,公立図書館の設置(適切な図書館サービスを確保できる場合には,地域の実情により,複数の市町村により共同で設置することを含む。)に努めるとともに,住民の生活圏,図書館の利用圏等を十分に考慮し,必要に応じ分館や移動図書館等の設置を行うことにより,全域サービス網の整備に努めるものとする。
- ③ 公立図書館の設置に当たっては,サービス対象地域の人口分布と人口構成,面積,地形,交通網等を勘案して,適切な位置及び必要な図書館施設の床面積,蔵書収蔵能力,職員数等を確保するよう努めるものとする。
(3)図書館サービスの計画的実施及び自己評価等
- ① 公立図書館は,そのサービスの水準の向上を図り,当該図書館の目的及び社会的使命を達成するため,その図書館サービスについて,各々適切な「指標」を選定するとともに,これらに係る「数値目標」を設定し,その達成に向けて計画的にこれを行うよう努めなければならない。
- ② 公立図書館は,各年度の図書館サービスの状況について,図書館協議会の協力を得つつ,前項の「数値目標」の達成状況等に関し自ら点検及び評価を行うとともに,その結果を住民に公表するよう努めなければならない。
(4)資料及び情報の収集,提供等
- ① 資料及び情報の収集に当たっては,住民の学習活動等を適切に援助するため,住民の高度化・多様化するニーズに十分配慮するものとする。
- ② 資料及び情報の整理,保存及び提供に当たっては,広く住民の利用に供するため,情報処理機能の向上を図り,有効かつ迅速なサービスを行うことができる体制を整えるよう努めるものとする。
- ③ 地方公共団体の政策決定や行政事務に必要な資料及び情報を積極的に収集し、的確に提供するよう努めるものとする。
- ④ 都道府県立図書館と市町村立図書館との間においては,それぞれの図書館の役割や地域の特色を踏まえつつ,資料及び情報の収集,整理,保存及び提供について計画的に連携協力を図るものとする。
(5)他の図書館及びその他関係機関との連携・協力
公立図書館は,資料及び情報の充実に努めるとともに,それぞれの状況に応じ,高度化・多様化する学習の要求に対応するため,資料や情報の相互利用等の協力活動の積極的な実施に努めるものとする。その際,公立図書館相互の連携(複数の市町村による共同事業を含む。)のみならず,学校図書館,大学図書館等の館種の異なる図書館や公民館,博物館等の社会教育施設,官公署,民間の調査研究施設等との連携にも努めるものとする。
(6)職員の資質・能力の向上等
- ① 教育委員会及び公立図書館は,館長,専門的職員,事務職員及び技術職員の資質・能力の向上を図るため,情報化・国際化の進展等に配慮しつつ,継続的・計画的な研修事業の実施,内容の充実など職員の各種研修機会の拡充に努めるものとする。
- ② 都道府県教育委員会は,当該都道府県内の公立図書館の職員の資質・能力の向上を図るために,必要な研修の機会を用意するものとし,市町村教育委員会は,当該市町村の所管に属する公立図書館の職員をその研修に参加させるように努めるものとする。
- ③教育委員会は,公立図書館における専門的職員の配置の重要性に鑑み,その積極的な採用及び処遇改善に努めるとともに,その資質・能力の向上を図る観点から,計画的に他の公立図書館,学校,社会教育施設,教育委員会事務局等との人事交流(複数の市町村及び都道府県との間の人事交流を含む。)に努めるものとする。
2 市町村立図書館
(1)運営の基本
市町村立図書館は,住民のために資料や情報の提供等直接的な学習援助を行う機関として,住民の需要を把握するよう努めるとともに,それに応じ地域の実情に即した運営に努めるものとする。
(2)資料の収集,提供等
- ① 住民の要求に応えるため,新刊図書及び雑誌の迅速な確保並びに他の図書館との連携・協力により図書館の機能が十分発揮できる種類及び量の資料の整備に努めるものとする。また,地域内の郷土資料及び行政資料,新聞の全国紙及び主要な地方紙等多様な資料の整備に努めるものとする。
- ② 多様な種類・内容の視聴覚資料の収集に努めるものとする。
- ③ 電子資料の作成、収集及び提供並びに外部情報の入手に関するサービス等に努めるものとする。
- ④ 本館,分館,移動図書館等の資料の書誌データの統一的な整備や,インターネット等を活用して,正確かつ迅速な検索システムの整備に努めるものとする。また,貸出の充実を図り,予約制度などにより住民の多様な資料要求に的確に応じるよう努めるものとする。
(3)レファレンス・サービス等
他の図書館等と連携しつつ,電子メール等の通信手段の活用や外部情報の活用にも配慮しながら,住民の求める事項について,資料及び情報の提供又は紹介などを行うレファレンス・サービスの充実・高度化に努めるとともに,地域の状況に応じ,学習機会に関する情報その他の情報の提供を行うレフェラル・サービスの充実にも努めるものとする。
(4)利用者に応じた図書館サービス
- ① 成人に対するサービスの充実に資するため,科学技術の進展や産業構造・労働市場の変化等に的確に対応し,就職・転職,職業能力開発,日常の仕事等のための資料及び情報の収集・提供に努めるものとする。
- ② 児童・青少年に対するサービスの充実に資するため,必要なスペースを確保するとともに,児童・青少年用図書の収集・提供,児童・青少年の読書活動を推進するための読み聞かせ等の実施,情報通信機器の整備等による新たな図書館サービスの提供,学校等の教育施設との連携の強化等に努めるものとする。
- ③ 高齢者に対するサービスの充実に資するため,高齢者にも配慮した構造の施設の整備とともに,大活字本,拡大読書器などの資料や機器・機材の整備・充実に努めるものとする。また,関係機関・団体と連携を図りながら,図書館利用の際の介助,対面朗読,宅配サービス等きめ細かな図書館サービスの提供に努めるものとする。
- ④ 障害者に対するサービスの充実に資するため,障害のある利用者に配慮した構造の施設の整備とともに,点字資料,録音資料,手話や字幕入りの映像資料の整備・充実,資料利用を可能にする機器・機材の整備・充実に努めるものとする。また,関係機関・団体と連携を図りながら手話等による良好な粉コミュニケーションの確保に努めたり、図書館利用の際の介助,対面朗読,宅配サービス等きめ細かな図書館サービスの提供に努めるものとする。
- ⑤ 地域に在留する外国人等に対するサービスの充実に資するため,外国語資料の収集・提供,利用案内やレファレンス・サービス等に努めるものとする。
(5)多様な学習機会の提供
- ① 住民の自主的・自発的な学習活動を援助するため,読書会,研究会,鑑賞会,映写会,資料展示会等を主催し,又は他の社会教育施設,学校,民間の関係団体等と共催するなど,多様な学習機会の提供に努めるとともに,学習活動の場の提供,設備や資料の提供などによりその奨励に努めるものとする。
- ② 住民の情報リテラシーの向上を支援するため,講座等学習機会の提供に努めるものとする。
(6)ボランティア参加の促進
国際化,情報化等社会の変化へ対応し,児童・青少年,高齢者,障害者等多様な利用者に対する新たな図書館サービスを展開していくため,必要な知識・技能等を有する者のボランティアとしての参加を一層促進するよう努めるものとする。そのため,希望者に活動の場等に関する情報の提供やボランティアの養成のための研修の実施など諸条件の整備に努めるものとする。なお,その活動の内容については,ボランティアの自発性を尊重しつつ,あらかじめ明確に定めておくことが望ましい。
(7)広報及び情報公開
住民の図書館に対する理解と関心を高め新たな利用者の拡大を図るため,広報紙等の定期的な刊行やインターネット等を活用した情報発信など,積極的かつ計画的な広報活動及び情報公開に努めるものとする。
(8)職員
- ① 館長は,図書館の管理運営に必要な知識・経験を有し,図書館の役割及び任務を自覚して,図書館機能を十分発揮できるよう不断に努めるものとする。
館長となる者は,司書となる資格を有する者が望ましい。
- ② 専門的職員は,資料の収集,整理,保存及び提供,情報サービスその他の専門的業務に従事し,図書館サービスの充実・向上を図るとともに,資料等の提供、紹介等の住民の高度で多様な要求に適切に応えるよう努めるものとする。
図書館には,専門的なサービスを実施するに足る必要な数の専門的職員を確保するものとする。
- ③ 専門的職員のほか,必要な数の事務職員又は技術職員を置くものとする。
- ④ 専門的分野に係る図書館サービスの向上を図るため,適宜,外部の専門的知識・技術を有する者の協力を得るよう努めるものとする。
(9)開館日時等
住民の利用を促進するため,開館日・開館時間の設定にあたっては,地域の状況や住民の多様な生活時間等に配慮するものとする。また,移動図書館については,その適切な周期による運行などに努めるものとする。
(10)図書館協議会
- ① 図書館協議会を設置し,地域の状況を踏まえ,利用者の声を十分に反映した図書館の運営ができるよう努めるものとする。
- ② 図書館協議会の委員には,地域の実情に応じ,多様な人材の参画を得るよう努めるものとする。
(11)施設・設備
本基準に示す図書館サービスの水準を達成するため,開架・閲覧,収蔵,レファレンス・サービス,集会・展示,情報機器,事務管理などに必要な施設・設備,また利用者に応じて,児童・青少年,高齢者,障害者等に対するサービスに必要な施設・設備を確保するよう努めるものとする。
3 都道府県立図書館
(1)運営の基本
- ① 都道府県立図書館は,住民の需要を広域的かつ総合的に把握して資料及び情報を収集,整理,保存及び提供する立場から,市町村立図書館に対する援助に努めるとともに,都道府県内の図書館間の連絡調整等の推進に努めるものとする。
- ② 都道府県立図書館は,図書館を設置していない市町村の求めに応じて,図書館の設置に関し必要な助言を行うよう努めるものとする。
- ③ 都道府県立図書館は,住民の直接的利用に対応する体制も整備するものとする。
- ④ 都道府県立図書館は,図書館以外の社会教育施設や学校等とも連携しながら,広域的な観点に立って住民の学習活動を支援する機能の充実に努めるものとする。
(2)市町村立図書館への援助
市町村立図書館の求めに応じて,次の援助に努めるものとする。
- ア 資料の紹介,提供を行うこと。
- イ 情報サービスに関する援助を行うこと。
- ウ 図書館の資料を保存すること。
- エ 図書館運営の相談に応じること。
- オ 図書館の職員の研修に関し援助を行うこと。
-
(3)都道府県立図書館と市町村立図書館とのネットワーク
都道府県立図書館は,都道府県内の図書館の状況に応じ,コンピュータ等の情報・通信機器や電子メディア等を利用して,市町村立図書館との間に情報ネットワークを構築し,情報の円滑な流通の確保に努めるとともに,資料の搬送の確保にも努めるものとする。
(4)図書館間の連絡調整
- ① 都道府県内の図書館の相互協力の促進や振興等に資するため,都道府県内の図書館で構成する団体等を活用して,図書館間の連絡調整に努めるものとする。
- ② 都道府県内の図書館サービスの充実のため,学校図書館,大学図書館,専門図書館,他の都道府県立図書館,国立国会図書館等との連携・協力に努めるものとする。
(5)調査・研究開発
都道府県立図書館は,図書館サービスを効果的・効率的に行うため,調査・研究開発に努めるものとする。特に,図書館に対する住民の要求や図書館運営にかかわる地域の諸条件の調査・分析・把握,各種情報機器の導入を含めた検索機能の強化や効率的な資料の提供など住民の利用促進の方法等の調査・研究開発に努めるものとする。
(6)資料の収集,提供等
都道府県立図書館は,3の(9)により準用する3の(2)に定める資料の収集,提供等のほか,次に掲げる事項の実施に努めるものとする。
- ア 市町村立図書館等の要求に十分応えられる資料の整備
- イ 高度化・多様化する図書館サービスに資するための,郷土資料その他の特定分野に関する資料の目録,索引等の作成,編集及び配布
(7)職員
都道府県立図書館は,3の(9)により準用する2の(8)に定める職員のほか,3の(2)から(6)までに掲げる機能に必要な職員を確保するよう努めるものとする。
(8)施設・設備
都道府県立図書館は,3の(9)により準用する2の(11)に定める施設・設備のほか,次に掲げる機能に必要な施設・設備を備えるものとする。
- ア 研修
- イ 調査・研究開発
- ウ 市町村立図書館の求めに応じた資料保存等
(9)準用
市町村立図書館の章中,次に掲げる規定は,都道府県立図書館に準用する。
- 2(2)資料の収集・提供等
- (3)レファレンス・サービス等
- (4)利用者に応じた図書館サービス
- (5)多様な学習機会の提供
- (6)ボランティアの参加の促進
- (7)広報及び情報公開
- (8)職員
- (9)開館日時等
- (10)図書館協議会
- (11)施設・設備
〔参考資料〕
この報告の基準の内容においては,図書館サービスの計画的実施及び自己評価等のため,各図書館が各々適切な「指標」を選定するとともに,これらに係る「数値目標」を設定して,計画的に図書館サービスの実施を行うよう努めることとしている。
このような「指標」や「数値目標」の例としては,次のようなものをあげることができる。
(1)「指標」の例
- 蔵書冊数
- 開架冊数
- 開架に占める新規図書比
- 視聴覚資料点数
- 年間購入雑誌点数
- 貸出冊数
- 登録者数
- 来館者数、来館回数
- リクエスト件数
- レファレンス件数
- 集会・行事参加者数
- 集会・行事参加回数
- 利用者満足度
なお,これらの「指標」に係る具体的な「数値目標」の設定については、総数、人口1人あたりの数,人口に対する比率,登録者1人あたりの数、職員1人あたりの数などとするような工夫も考えられよう。
(2)「数値目標」の例
具体的な「数値目標」を設定する際の参考として,以下の表を示す。
表:貸出活動上位の公立図書館における整備状況
人口段階別 |
1万人未満 |
1~3万人 |
3~10万人 |
10~30万人 |
30万人以上 |
平均人口 |
6,500 |
17,900 |
49,800 |
140,800 |
403,700 |
延床面積(㎡) |
896 |
1,591 |
2,937 |
5,437 |
8,853 |
蔵書冊数 |
53,067 |
93,373 |
213,984 |
547,353 |
850,812 |
開架冊数(内数) |
44,615 |
73,657 |
153,181 |
335,203 |
558,362 |
開架に占める新規図書比 |
9.8% |
9.2% |
10.9% |
10.9% |
9.1% |
視聴覚資料点数 |
1,582 |
3,277 |
8,299 |
18,809 |
47,400 |
年間購入雑誌点数 |
124 |
130 |
255 |
615 |
955 |
資料費(千円)* |
9,841 |
17,635 |
35,398 |
74,629 |
143,361 |
人口1人概算(円) |
1,500 |
1,000 |
700 |
550 |
350 |
人口1人年間貸出点数 |
14.4 |
13.8 |
11.4 |
10.0 |
7.8 |
職員数(有資格者)** |
5(3) |
8(4) |
19(11) |
53(25) |
98(58) |
注:上記の表は「日本の図書館1999」(日本図書館協会編)をもとに同協会の協力により作成したものである。数値については,全国の市町村(政令指定都市及び特別区を除く)の公立図書館のうち,人口1人あたりの「資料貸出」点数の多い上位10%の図書館の平均数値を算出したものである。ここで示した数値を参考にしながら,各図書館において各々が選定した「指標」に係る「数値目標」を定め,時系列比較や同規模自治体などとの比較検討によって自己評価に活用し,図書館運営の一層の発展に資することが望まれる。なお,ここで示した数値を上回るサービスを展開している図書館にあっては,さらに高い水準を目指して図書館サービスの充実を図ることが期待される。
* 1998年度決算額
** 非常勤,臨時職員を含むフルタイム相当人数
生涯学習審議会社会教育分科審議会計画部会 図書館専門委員会の審議経過
- 第8回 平成10年12月1日(火)
-
- ○自由討議
- 第9回 平成11年1月27日(水)
- ○自由討議
- 第10回 平成11年2月26日(金)
- ○ヒアリング
- 清瀬市立図書館、猪名川町立図書館
- ○自由討議
- 第11回 平成11年3月23日(火)
- ○ヒアリング
- 佐賀市立図書館、伊自良村図書館
- ○調査についての検討
- 第12回 平成11年4月28日(水)
- ○ヒアリング
- 浦安市立図書館
- ○調査についての検討
- 第13回 平成11年5月26日(水)
- ○ヒアリング
- 鳥取県立図書館、瀬戸内町立図書館
- ○調査についての検討
- 第14回 平成11年6月30日(水)
- ○ヒアリング
- 滋賀県立図書館、小杉町立図書館
- ○調査についての検討
<現地調査(平成11年7月~9月)全国28カ所の図書館>
- 第15回 平成11年10月6日(水)
- ○実地調査報告
- 第16回 平成11年11月24日(水)
- ○実地調査報告
- ○委嘱調査報告
- 第17回 平成11年12月27日(水)
- ○自由討議
- 第18回 平成12年2月9日(水)
- ○各委員からの意見発表
- 第19回 平成12年3月10日(金)
- ○「中間まとめ(案)」について検討
- 第20回 平成12年4月14日(金)
- ○「中間まとめ(案)」について検討
- 第21回 平成12年5月17日(水)
- ○「中間まとめ(案)」について検討
- 第22回 平成12年6月14日(水)
- ○「中間まとめ(案)」について検討
- 第23回 平成12年7月19日(水)
- ○「中間まとめ(案)」とりまとめ
- 第24回 平成12年10月23日(月)
- ○「中間まとめ」に対する意見に関する検討
- 第25回 平成12年11月20日(月)
- ○「中間まとめ」に対する意見に関する検討
- 第26回 平成12年12月8日(金)
- ○「報告(案)」とりまとめ
生涯学習審議会社会教育分科審議会計画部会 図書館専門委員会委員名簿
磯野 嘉子 |
千葉経済大学短期大学部助教授 |
糸賀 雅児 |
慶応義塾大学教授 |
岡部 一邦 |
東京都立中央図書館長,全国公共図書館協議会会長(平成11年6月10日~) |
越塚 美加 |
学習院女子大学助教授 |
酒川 玲子 |
社団法人日本図書館協会事務局長 |
作花 文雄 |
横浜国立大学助教授 |
島田 好正 |
栃木県教育委員会生涯学習課長 |
鈴木 勝男 |
元東京都立中央図書館長,元全国公共図書館協議会会長(~平成11年5月31日) |
田中 久文 |
日本大学教授 |
村田 文生 |
亜細亜大学非常勤講師,東京国際大学非常勤講師 |
山本 宏義 |
相模原市教育委員会生涯学習課長(~平成12年5月21日) |
(50音順,は主査)