年頭のご挨拶
理事長 植松貞夫
新年おめでとうございます。本年が皆様と図書館にとって、良き年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
2024年が元日の能登半島地震に始まり自然災害の多発した年であっただけに、穏やかな年であることを願います。
さて本年は21世紀の第一四半世紀、節目の年です。この25年を振り返りますと、図書館界のみならず、社会の潮流はデジタル化、デジタルトランスフォーメーションの進展であったといえます。新型コロナウイルス感染症の拡大期には、老若を問わずITスキルの向上が求められ、デジタル化、オンライン化が加速しました。更に近年は、生成AI(生成系人工知能)が実用レベルで利用され、社会の幅広い領域で大きな変化を促すと予測されています。
一方で、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)がコミュニケーションツールから情報流通の基盤になるに伴い、若年層を中心に過度な依存が指摘されるとともに、人を惑わすために真実に見せかけたフェイクニュースが拡散,社会に混乱をもたらすケースが増えています。今後、生成AIを用いた真贋の判定が難しい情報の増加が危惧されます。こうした時にあって、複数の目を経た本と知識と技術を有する司書とを備えた図書館はセーフティネットとして重要です。
文化庁が2024年9月に公表した令和5年度「国語に関する世論調査」結果では、「あなたは現在、1か月に大体何冊くらい本を読んでいますか。電子書籍を含みますが、雑誌や漫画は除きます」の問いに対し、16歳以上の回答者3,600人弱のうち62.6%が「読まない」と回答しています。高校生の不読率も高い比率で推移しています。
図書館は本を読む人がいて成立します。図書館が先頭になってさまざまな読書機会の提供、読書環境の醸成に取り組み「本を読む人」を増やしていきましょう。本を読む人が増えれば、本で確かめる人、図書館で調べる人が増えます。
文部科学省は、昨年度の「書店・図書館等関係者における対話の場」に続くものとして、令和6年度補正予算で「図書館・学校図書館と地域の連携協働による読書のまちづくり推進事業」を措置しました。読書のまちづくり推進事業と、図書館・関係機関等の連携促進に向けた調査研究を内容とします。
また、「図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議」が先の12月に発足しました。
本協会は、これらの事業や議論の動向を注視し、必要に応じ適切な対応をしていきます。
旧年中のご高配に御礼申し上げ、本年も、本協会の活動にご支援、ご協力、ご指導賜りますようお願いいたします。
2025年1月6日