文化審議会著作権分科会での「図書館関係の権利の見直し
(デジタル・ネットワーク対応)について」における学校図書館の扱いについて
2020年10月14日
日本図書館協会
1 背景
現在、学校図書館における著作物等の複製は、第35条の「授業を担任する者及び授業を受ける者」「授業の過程における使用」を根拠としています。一方、2017年告示の文部科学省の学習指導要領総則では、児童生徒の「興味・関心を生かした自主的、自発的な学習が促されるよう工夫すること」とされ、学校図書館には児童生徒の「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に生かす」、「自主的、自発的な学習活動や読書活動を充実すること」となっています。探究活動での児童生徒の個々の情報要求や授業を計画する教職員の情報要求に応えることが期待されており、学校図書館の役割はますます大きくなっています。
学校図書館が図書館として学校教育の充実を図るためには、「授業の過程における使用」以外での個への対応、保存のための複製、授業のオンライン化やオンライン情報の活用などの観点から、学校図書館を著作権法第31条の図書館に含めることが重要です。
2 学校図書館を 第31条「図書館等」に含めることに関する意義及び留意事項等
○意義
(1)複製の主体が学校図書館になる。
第35条において、複製の主体は「教育を担任する者又は受ける者」となっているが、第31条の「図書館等」に含めることで、学校図書館が主体となることができる。なお、著作権法施行令第1条の3、著作権法施行規則第1条の3の扱いも検討する必要がある。
(2)第35条「授業の過程における使用」にあたらない複製が可能になる。
授業の過程での使用に該当しない、教職員・児童生徒の個々の興味関心に基づく自発的な調査研究のための複製ができる。
(3)学校図書館所蔵資料を保存のための複製、デジタル化ができる。
(4)入手困難資料の複製物の送信サービスを受けることが可能になる。
これにより、児童生徒の学習活動や教職員の調査研究に役立てることができる。
(5)国立国会図書館の図書館向けデジタル化資料送信サービスによるデジタルデータの受信・複製ができる。
○留意事項
(1)ウェブサイトの資料は、学校図書館の所蔵資料ではないので複製ができない。
(2)一人につき一部の複製となる。ただ、学校図書館としての複製は一人につき一部でよいとも考えられる。
○検討事項
(1)教職員が行う範囲と学校図書館が行う範囲の切り分けを考える必要がある。
〈10月14日 文化庁著作権課、全国SLAとの打ち合わせ資料〉