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日本図書館協会の見解・意見・ご要望
2010/03/01
公立図書館の指定管理者制度について
民間において図書館の管理を安定して行う物的能力、人的能力を有した事業者があるか、指定期間が限られているもとで事業の蓄積、発展ができるか、経費節減により図書館で働く人たちの賃金等労働条件に安定性を欠く事態が招来しないか、など指定管理者制度にある本質的ともいうべき問題点があります。 地方自治法は「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるとき」に指定管理者制度の適用を許容していますが、他の施設の場合はいざ知らず、公立図書館での事例にはこの点に照らした説明が十分ではありません。 図書館への指定管理者制度導入は、文部科学省調査によれば203館(6.5% 2008年10月現在)、当協会調査では2008年度までに導入した図書館のある市区町村は98、2009年度に導入予定図書館のある市区町村は25、合わせて123市区町村です。一方導入しないと答えている市区町村は471あります(2008年5月調査)。図書館での導入は極めて少数であることを示しています。都道府県立図書館においても導入しないと答えているところは26あります。 図書館協議会において時間をとって議論された事例を聞きますと、再検討や中止を具申するものが多く、導入を促す事例はほとんどありません。議会においても同様で、図書館への導入を積極的促す発言よりも、図書館の役割、住民の期待などを論じ、サービス充実のために態勢強化を求めるものが多くありました。
このような状況を反映したものと思われますが、先の国会では公立図書館など社会教育施設の指定管理者制度について肯定する意見がありませんでした。“図書館への指定管理者制度適用は、住民サービスの向上、経費削減を図ることを目的とされているが、図書館サービスは、単に利用者数が増えるとか、開館時間数の延長、開館日数の増といった量的なものだけでは測れない性質のものがある、経費削減により安定した長期雇用が保障されず、短期的の職員の入れ替わりによる弊害が生じている、やはり職員の質の向上が大切だ”、との議員質問に対して、文部科学大臣は、“公立図書館への指定管理者制度の導入は長期的視野に立った運営が難しくなり、図書館になじまない、職員の研修機会の確保や後継者の育成等の機会が難しくなる、やっぱりなじまない”、と答弁しました(2008年6月3日 参議院文教科学委員会)。 また国会に招致された参考人は、“指定管理者制度の基本的な目的である経費節減が職員の労働条件などいろいろなところに波及していくこと、管理期間の指定は、人々のいろいろな要求をつかまえながら進めていく息の長い継続性が求められる地域の社会教育の営みになじまない”、と制度的問題があることを述べました。 これらの論議を受けて国会は、「国民の生涯にわたる学習活動を支援し、学習需要の増加に応えていくため、公民館、図書館及び博物館等の社会教育施設における人材確保及びその在り方について検討するとともに、社会教育施設の利便性向上を図るため、指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮して、適切な管理運営体制の構築を目指すこと。」との附帯決議をしました。 さらに総務省は2008年度の地方財政運営についての通知のなかで、特に指定管理者制度を取上げ、検証、見直しの留意すべき事項を示しました。公共サービス水準の確保、専門的知見を有する外部有識者の視点導入、適切な積算に基づいた委託料など19項目におよぶものです。これらを図書館の管理運営の内容にそってつぶさに検討すると、指定管理者制度は図書館には無理な制度であることが明らかとなります。
この間指定管理者制度を導入した例をみると、十分な情報提供や説明がなされず、図書館協議会にも諮ることなく実施に移されたところが多くあります。住民団体が総務省に、住民への説明責任を果たすよう地方公共団体に徹底することを要請するほどです。私どもは、図書館は利用者、住民と図書館との共同によりつくりあげていくこと、連携協力により、それぞれの自治体の実状に応じた管理運営形態が創造されることを期待しています。 国会の附帯決議にあります「適切な管理運営体制の構築を目指すこと」の検討に資するよう日本図書館協会としても情報提供や意見表明などを引続き行っていくよう努めて参ります。