平成28年9月6日
総務大臣 高市早苗 様
文部科学大臣 松野博一 様
公益社団法人日本図書館協会
理事長 森 茜
図書館に係る地方交付税算定におけるトップランナー方式導入に強く反対します。
図書館に係る地方交付税の算定方式に関し、総務省においてトップランナー方式を平成29年度より導入すると伝えられていますが、日本図書館協会はこれに強く反対します。
地方公共団体が設置する図書館は、社会教育法において国民教育を目的とする社会教育機関と位置づけられ、それを受けた図書館法において、その教育を担う専門職員として司書を配置すると規定されています。同時に、図書館法において、図書館は、入館料その他いかなる対価も徴収してはならないと規定され、図書館における指定管理者制度の導入は、民間企業にとって、経営努力にみあう利益を生む構造にはなっておりません。
本来、指定管理者制度の導入は、地方公共団体の事業を民間にも広く開放し、わが国における民間事業の活性化と民間事業者のノウハウによる公共サービスの改善に主眼があります。しかしながら、図書館における指定管理者の導入は、事業者の利益がまったく生まれない構造により、民間事業の活性化につながらないばかりか、地方公共団体のサービスの低下を招いています。サービスの低下ぶりは新聞紙上を賑わしているのでご存知のところでしょう。
さらに、競争入札による指定管理者制度の導入により、事業者は人件費を切り詰め、専門職員たる司書たちは日給月給制の低賃金で雇用され、また、指定管理者制度は5年等の期間制限があるため被雇用者は5年で雇用が打ち切られ、おびただしい非正規職員を新たに生み出す要因となっています。文部科学省の調査では、いまや、図書館職員の6割が非正規職員との統計もあり、非正規職員が図書館長を務めるという、文化国家として世界に顔向けのできない現実を生み出しています。
このような状況の下で、貴省が図書館経費にかかる地方交付税の基準財政需要額の算定にトップランナー方式を導入されることは、公共図書館のサービスの著しい低下を招き、市民の信頼が得られなくなるばかりか、安倍政権が今次取り組んでいる非正規職員の改善に逆行する結果を生み、さらには図書館に係る民間事業の荒廃を招く惧れが極めて高いものとなります。
私たちは、図書館への指定管理者制度の導入は各地方公共団体がそれぞれの地域の実情に応じた方法で判断すべきものと考えており、指定管理者制度そのものを否定しているものではありません。しかしながら、地方交付税の算定方式にトップランナー方式を導入することには、上記の観点から、強く反対いたします。
何卒、諸般、重々にご勘案の上、地方交付税におけるトップランナー方式の導入は図書館への適用はされないよう切にお願いいたします。