令和6(2024)年能登半島地震について

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日本図書館協会の見解・意見・要望

2022/01/24

会計年度任用職員に関する提言

                        公益社団法人日本図書館協会非正規雇用職員に関する委員会

はじめに
 2020年度より地方公務員法、地方自治法の改正により、会計年度任用職員制度が発足しました。それまで特別職、一般職の非常勤職員、臨時職員として働いていた地方自治体の非正規雇用職員の大半が会計年度任用職員に移行しました。
 その数は総務省の調査1で、公共図書館では約18,000人に及び、公共図書館職員数のおよそ45%を占めます。また学校図書館でも約18,000人2、約75%以上と推定されます。その他公立の大学や専門図書館などにも多くの会計年度任用職員が働いています。
 年々増え続けてきた非正規雇用職員は、しだいに図書館職場で正規職員と同様に多くの仕事を担うようになってきました3。これらの職員の働きがなくて図書館は成り立たない状況になっています。しかし法整備も十分でないまま、その大部分は不安定な雇用や低い待遇の状態に置かれてきました。
 今回の会計年度任用職員制度は、「働き方改革」の一環として、民間職員対象の同一労働同一賃金政策とも呼応するものであり、法整備とともに雇用や労働条件の改善が期待されるものでした。しかし勤務時間によって給与や手当に差をつけるなど制度そのものが十分とは言えない上に、自治体による運用が様々であり、実施後、総務省や労働組合などの調査により現場で色々な問題が起きていることが分かりました。
 安定した雇用と良好な労働条件は、図書館職員に必須である経験と知識の蓄積にとって必要なものであり、図書館職員の多くを占める会計年度任用職員の働き方は、図書館の維持、発展に大きな影響を及ぼすものです。そのためここに提言を出し、会計年度任用職員の任用の実際と制度の改善を求めるものです。

提言内容

1.制度の趣旨に沿った実施
 会計年度任用職員制度の趣旨に沿わない勤務時間数や給与(報酬)金額での任用が行われています。これらの改善と適正な任用を行うことが求められます。

(1) フルタイムの職にはフルタイムでの任用を
 フルタイム雇用職員には支給される退職手当が、パートタイム雇用の職員には支給されないなど、制度上その待遇に大きな差があります。
 総務省調査によればフルタイムの勤務時間週37時間45分、(1日7時間45分)に対し、勤務時間が週37時間30分以上(1日当たり7時間30分以上)のパートタイム職員は12.4%もいます。また週31時間以上(1日あたり6時間12分以上)に拡げると40%に達します4
 仕事量や仕事内容がフルタイムに近い職務に就く職員は、フルタイムで任用することが望まれます。
 また制度の実施を機にフルタイムからパートタイムに変更した自治体もあるようです5が、フルタイムに戻すべきです。

(2) 制度の実施に伴う月額給与(報酬)の減額は行わないこと
 制度実施に伴い期末手当が支給されるためか、月額給与(報酬)を今までより引き下げた自治体が23.8%6もあります。
 これは待遇の改善を図る制度の趣旨にあわないもので、総務省も通知7を出して呼びかけています。国からの財政措置8もなされている以上、月額給与(報酬)の減額を止めるべきです。

2.より望ましい制度の実施
 会計年度任用職員制度を十分に活かし、より一層の雇用の安定と待遇の改善を図る任用が行われることが望まれます。

(1) 2度目以降の任用については、公募ではなく勤務実績による能力実証で行うこと
 図書館職員には、当該の職場における職務の経験と知識の蓄積が求められます。そのためにはその職場で長期間継続的に勤務していくことが必要です。
 任用に当たっては当該の職場で培われた経験と知識によって判断されることが望ましいと考えます。最初の任用は公募であっても、2度目以降の任用は勤務実績による能力実証で行われることが望まれます。

(2) 給与(報酬)の経験加算(昇給)に上限を設けないこと
 同一労働同一賃金の原則から、一般に会計年度任用職員においても常勤職員(正規職員)と同一の給料表を基礎とする場合が多く、経験加算(昇給)も行われています9。しかし経験加算(昇給)に上限があるため、年齢や経験などにおいて同一の常勤職員(正規職員)との差が生じます10。上限を設けないもしくは常勤職員(正規職員)と同一の上限にすることが望まれます。

(3) 各種の休暇を常勤職員(正規職員)と同等にすること
 多くの自治体で会計年度任用職員にも法定、法定外の休暇が付与されています。しかし休暇の種類や付与日数に差がある場合があります11。また同じ休暇が常勤職員(正規職員)は有給であるのに対し、会計年度任用職員は無給といった例も見られます12。常勤職員(正規職員)と同等にすることが望まれます。

3.法改正を含む望ましい制度の改革
 同じ「働き方改革」の中でも、民間労働者あるいは国の非正規雇用職員の改革と比較して会計年度任用職員制度は十分なものとは言えません。今後の課題として新たな法改正を含む制度の改革が望まれます。

(1) フルタイム職員とパートタイム職員を分けることなく、同様の給与・手当の支給をすること
 フルタイム職員には生計費を含む給与が支給されるのに対し13、パートタイム職員には今までと同じく労働の対価としての報酬のままです。パートタイム職員にもフルタイム職員と同様に給与を支給することが望まれます。
 また期末手当以外の手当(特に退職手当)についてもフルタイム、パートタイムの区別なく支給することが望まれます。

(2) 共済組合の加入、災害補償などに勤務時間数による差を設けないこと
 現在、常勤的非常勤職員(月18日、12か月以上勤務)のみに認められている地方公務員等共済組合の加入、地方公務員災害補償基金の補償対象を勤務時間数の差にかかわりなく、すべての会計年度任用職員に適用することが望まれます。

(3) 6年目以降の任用で希望者は無期雇用にすること
 民間労働者は労働契約法第18条により、5年の継続雇用を経て6年目に入った場合、希望すれば無期雇用へ転換することが認められています。会計年度任用職員にもこれと同等の制度を導入することが望まれます。

おわりに
 上記の諸課題が実施されれば、会計年度任用職員の雇用はより安定し、労働条件はより向上していきます。その中で職員の経験と知識は蓄積され、それを活かすことで、より一層、図書館サービスを向上できると考えます。
 図書館で働く職員の大部分が従事する業務は、総務省の「会計年度任用職員制度の導入に向けた事務処理マニュアル」によれば、相当の期間任用される職員を就けるべき業務であり、フルタイム勤務とすべき標準的な業務の量がある業務です。「常時勤務を要する職」の2要件(従事する業務の性質に関する要件、勤務時間に関する要件)を満たしており、本来、任期の定めのない常勤職員(正規職員)を充てることが望まれます14
 そのため図書館には、「司書」としての常勤職員(正規職員)を配置するべきです。配置にあたっては、経験と能力のある会計年度任用職員等を積極的に登用することと、その制度化が求められるところです。
 
  1. 総務省「地方公務員の会計年度任用職員等の臨時・非常勤職員に関する調査結果(令和2年4月1日現在)」2020.4,p.3. https://www.soumu.go.jp/main_content/
    000753597.pdf(アクセス日:2021.10.22)

  2. 文部科学省「令和2年度 学校図書館の現状に関する調査結果」2020.7,p.5 https://www.mext.go.jp/content/20210727-mxt_chisui01-000016869_02.pdf(アクセス日:2021.10.22)

  3. 下記の文献から把握できる。
    ・上林陽治「基幹化する図書館の非正規職員:図書館ワーキングプアを越えて」『現代の図書館』49(1),2011.3,p.3-11.
      ・小形亮「非正規職員の現在と未来:基幹化と階層化の中で」『現代の図書館』49(1),2011.3,p.19-30.
    ・日本図書館協会非正規雇用職員に関する委員会『公共図書館における非正規雇用職員に関する実態調査結果』日本図書館協会,2020.6,p.24-32.
    https://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai/seisakukikaku/chousakekka_20100608%202.pdf(アクセス日:2021.10.22)

  4. 前掲1

  5. 前掲1の調査と総務省「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査」2016年4月1日現在を比較すると、全国でフルタイム職員が2,263人減少したのに対し、パートタイム職員は3,964人増加している。

  6. 総務省「会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査結果」2020年4月,p.5. https://www.soumu.go.jp/main_content/000724646.pdf(アクセス日:2021.10.22)

  7. 総務省自治行政局公務員部長「会計年度任用職員制度の適正な運用等について」(通知)
    2020.12.21,p.2. https://www.soumu.go.jp/main_content/000724653.pdf(アクセス日:2021.10.22)に、「単に財政上の制約のみを理由として、期末手当の支給について抑制を図ることや、新たに期末手当を支給する一方で給料や報酬について抑制を図ることは、改正法の趣旨に沿わないものであるため、こうした取扱いを行っている団体は、適切な措置を講ずること」とある。

  8. 総務省は令和2年度会計年度任用職員制度の施行に伴う期末手当の支給等に要する経費
    について、地方財政計画に1738億円計上して地方交付税措置を講じており、さらに令和3年度は平年度化に伴い651億円を付け加えた。

  9. 前掲6,p.4によれば、地方公共団体のうち常勤職員(正規職員)の給料表を基礎とするものが、95.3%、職務経験の要素を考慮するものが92.9%である。

  10. 全日本自治団体労働組合「2020年度自治体の会計年度任用職員の賃金・労働条件制度調査」(自治労調査)(8/21中間集約速報版)によれば、短時間図書館職員の月給の平均額は初任給で151,000円、昇給の最高到達時170,000円と1.13倍にしかならない。一方、東京都の行政職給料表(―)1級での大卒初任給と最高到達時の差は1.78倍ある。

  11. 例えば東京都の場合、常勤職員(正規職員)にはある病気休暇、妊娠症状対応休暇、
    出産支援休暇、ボランティア休暇などが会計年度任用職員にはない。

  12. 例えば東京都の場合、介護休暇は常勤職員(正規職員)が180日以内だが、会計年度任用職員は93日以内である。また生理休暇は常勤職員(正規職員)が2日以内有給だが会計年度任用職員は無給である。

  13. 地方公務員法第24条の2 では「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与 その他の事情を考慮して定められなければならない。」と規定されている。

  14. 総務省自治行政局公務員部「会計年度任用職員制度の導入に向けた事務処理マニュアル第2版」2018.10,p.8.

 

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