日本図書館協会の見解・意見・要望

2016/05/10

学校図書館の整備充実に係るこれまでの意見を踏まえた論点整理(案)に対する意見

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学校図書館の整備充実に係るこれまでの意見を踏まえた論点整理(案)に対する意見

 

貴協力者会議による論点整理(案)の項目の順番にしたがって意見を述べます。なお、○のあとの( )内の数字は論点整理(案)における○が何番目かを示したものです。

 

0 現状と課題、対応策の方向性

(対応策の方向性)

学校図書館の運営上の重要な事項について標準化を図るガイドライン作成の方向性が示されたことは評価できます。学校図書館の充実につながる方向性と内容で作成してください。ガイドライン作成にあたっては、目標を示し具体的な内容としてください。

 

1 学校図書館に関する基本的な考え方

○(2)

義務教育機関である小・中学校はもとより、高等学校における学校図書館の整備充実が重要との指摘は本検討会でも共有するものです。その中でも特に、地方交付税措置の対象外となっている高等学校の図書費についても、小・中学校と同様の措置を求めます。また、論点整理(案)で「学校現場の新たなニーズ」にあげられる特別支援教育の充実のために、これまで整備充実が遅れがちであった特別支援学校の図書館の整備充実を積極的に図っていくことが必要です。

 

2 図書館資料について

(図書館資料の選定)

各学校に明文化された選定基準を設けることが必要です。選定のための校内組織の整備にあたっては、学校司書の意見が尊重される配慮・工夫を求めます。実際の収集では、教育課程の展開に寄与する資料とともに、児童生徒および教職員の資料要求を踏まえた読書の楽しさ、学びの楽しさを伝える資料が必要です。

(図書館資料の廃棄・更新)

各学校に明文化された廃棄基準を設けることが必要です。学校図書館図書標準達成のために廃棄をしないよう指示する自治体があります。また廃棄を行ってこなかった学校では、廃棄自体に難色を示す場合もあります。学校図書館の効果的な活用には適切な廃棄・更新およびそのための基準が必要であることを広く周知することが重要です。

【今後更なる検討が必要と考えられる事項】

○(2)

施設設備面での工夫について、当協会では322日に「図書館における障害を理由とする差別の解消の促進に関するガイドライン」を公表しました。このガイドラインは学校図書館も対象としており、不当な差別的取り扱いの禁止、合理的配慮、基礎的環境整備を求めています。障害があるために図書館利用ができない施設設備については、改善及び工夫が必要であることを広く周知することが大切です。

 

3 学校図書館の運営を支える専門的人材について

【基本的な考え方】

学校図書館の整備充実を図るうえでは,学校図書館の運営を支える専門的人材の育成と適切な配置が不可欠かつ急務です。そのためには論点で述べられている「司書教諭や学校司書の専門性を確保し教育水準の向上を図ること」は必須です。「採用時の要件や研修の水準を全国的に高める」と述べられていますが、それを保障する具体的手立てが記述に見られません。また、学校司書に関しては雇用形態が大きな問題であるにもかかわらず、その問題にふれていません。専門的能力を有した学校司書をフルタイムで配置する必要があります。学校司書の雇用形態を改善するためのより積極的な検討をお願いします。

(学校司書としての資格の在り方、その養成の在り方等)

○(1)

学校図書館法の附則で述べられているように、学校司書の職務内容は「専門的知識及び技能を必要とするもの」です。そのことに鑑み、大学における専門的な教育課程における学修により、資格を付与するための学校司書の養成制度を検討し、創設することが必要です。

○(2)

論点整理(案)で示された学校司書の要件①について、司書教諭資格は学校図書館の「教育」及び「運営・管理」について十分な資格かどうかを再検討する必要があります。「教育」に関しては一定の知識を有すると考えられますが、「運営・管理」に必要な図書館情報学の一定の知識を有するとはいえません。新たに創設される資格制定までの暫定措置として、仮に司書教諭を要件とする場合には、「運営・管理」に関する知識・技能については、採用後の研修等で補うことを前提とする必要があります。

学校司書の要件③、資格を持たずに現に学校図書館に勤務する者について、一定の経験等をもって採用時の要件を満たす者と位置付けるのは、いかに研修等を前提とするとしても問題です。有資格者と無資格者を同一に扱っている点で、資格制度とはなりえないものです。学校司書の雇用の状況が多様であるだけに、一定の経験をもって採用時の要件とする場合は、勤務の様態、研修の有無等のいくつかの条件を設定する必要があります。また、学校図書館ボランティアは、多くが読み聞かせ等の読書活動の支援である現状から、学校図書館ボランティアの経験をもって「運営・管理」等に関わる経験を有しているとみなすのは適当ではありません。

○(3)

平成26年度文部科学省「学校図書館の現状に関する調査」(教育委員会調査票集計)によれば、地方自治体における学校司書の採用条件(公立学校のみ)は、「司書等」が59%、「司書教諭」が15%とのことです。一方、資格・経験を問わない自治体は603自治体(35%)に上ります。現段階においては採用時に「司書等」の資格の所持が望ましい旨をガイドラインに示す必要があります。

(学校司書の研修について)

近年学校図書館に求められる役割は大きく変化しています。そうした変化に対応するために学校司書には継続的な研修が必要です。教育委員会主催の研修の充実とともに、学校司書同士で直接情報交換ができ、必要な研修を自主的に企画・実施できるしくみも望みます。また研修に参加できる条件整備も必要です。

 

4 学校図書館の運営について

(運営体制の在り方)

学校司書が職員会議や学校に置かれる各種組織に参加するには、学校の教職員の一員である必要があります。2校兼務、3校兼務、あるいは週2日、3日の短時間勤務では、教職員の一員としての十分な位置づけは困難です。従って学校司書は一校に一人以上の正規職員が配置されることが重要です。

(利活用の在り方)

学校図書館の利活用が必要とされている学校教育の方向性や学校図書館の教職員へのサポート機能を考えるならば、授業中はもとより、終日開館し、利活用が可能な状態でなければなりません。「開館」というのは単に鍵がかかっていない状態をいうのではなく、学校司書がいて児童生徒及び教職員に必要な資料が的確に提供できる状態と捉えるべきです。学校図書館に学校司書がいることで、子どもたちの学びを豊かにし、読書の世界を広げることができます。登校時から下校時までの開館を実現するには、学校司書が正規職員であることが必要です。

(評価の在り方)

学校図書館の利活用の状況の評価は、アウトプット・アウトカムベースで行われるべきですが、そのための効果的な「予算の投入」も評価の必須の要素であると明記すべきです。

 

5 その他の論点について

(教育委員会による支援、公共図書館等との連携について)

公共図書館と各学校図書館をつなぐ地域のネットワーク化には、その前提として各学校図書館にネットワーク担当者としての学校司書の存在が不可欠です。ひと・もの・情報をつなぐしくみづくりが必要です。

(民間事業者との連携について)

民間事業者からの派遣社員等による学校図書館運営は、活動内容が事業者との契約書に示された仕様書にしばられる側面があり、おのずから限界があります。特に授業利用等に対する支援は、日常の教職員とのコミュニケーションの蓄積の上に実現する活動ですので、派遣社員等が学校の教職員の一員になりえないことを考えると、派遣社員の研修だけで解決するものではありません。地方自治体に対し、民間事業者による運営は行うべきでないことの周知が必要です

以上

 

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