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多文化サービスQ&A

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日本図書館協会多文化サービス委員会編
2021年3月20日作成

公共図書館の多文化サービスに関してよく尋ねられる質問とその答えを紹介します。

<Q&A>
Q1.「多文化サービス」ってなんですか。 

 「ユネスコ公共図書館宣言」は、すべての人が図書館を平等に利用できること、通常のサービスや資料の利用ができない人々には、特別なサービスと資料が提供されなければならないことを謳っています。
 多文化サービスとは、通常のサービスや資料を利用できない、あるいは利用しにくい文化的・言語的少数者を主たる対象とする図書館サービスです。日本には、在日韓国・朝鮮人や中国人をはじめ、留学生、外国人労働者、南米出身の日系人、国際結婚による外国出身の配偶者とその子ども、アイヌ、海外で育った日本人、中国帰国者など、異なった文化的・言語的背景をもつ人々が暮らしています。
 こうした少数者に対する図書館サービスの必要性が、日本で広く知られる契機となったのは、1986年に東京で開催された国際図書館連盟(IFLA)年次大会で出された「多文化サービス分科会および大会決議」です。この決議で、日本には「韓国・朝鮮系と中国系を中心とする在日の文化的マイノリティ(少数派)が相当数いるにも関わらず、彼らのための適当な図書館資料や図書館サービスが、特に公共図書館において欠けている」と指摘されました。
 日本の多文化状況は、1990年の「出入国管理及び難民認定法」改正以降、主にブラジルからやってきた日系人によって一気に加速しました。法務省の「在留外国人統計」(旧「登録外国人統計」)によると、当時100万人程度だった在留外国人は、2019年末には約293万人にまで、増加しています。



 日本以外の文化的・言語的背景を持つ人々は、生活するうえで様々な困難に直面します。その国や地域の生活・文化・様々なルールなどにかかわる情報は、殆どの場合その国の主要言語でしか出版・報道されません。言語が理解できなければ、どのような情報があるのかもわからず、情報にアクセスすることもできなくなります。その人にわかる言語とアクセスしやすい方法で情報を伝えたり、日本語の学習を支援したりすることは、地域社会での共生を進める上で非常に重要です。
 また日本に関する資料・情報だけでなく、出身地の資料を母語で提供することは、故郷を離れて住む人の心の拠り所ともなり、世代間コミュニケーションや文化の継承などのためにも必要です。図書館は地域の関係機関・団体などと連携し、多様な文化的・言語的背景を持つ人のニーズを把握してサービスを進める必要があります。
 しかし、文化的・言語的少数者だけが、多文化サービスの恩恵を受けるのではありません。多文化サービスは、すべての図書館利用者に対する多文化情報の提供、という要素を含んでいます。日本語で書かれた少数者の情報、交流の場の提供などを通して、地域社会に住む人々は、それぞれ互いの文化・言語・価値観などを学ぶことができ、その結果、理解や対話が増すことになります。
 最後に、多文化サービスは付け足しの、あるいは別個のサービスではなく、通常の図書館サービスです。予算がついたときだけ、資料を購入して終りではなく、地域社会の実情や変化を踏まえながら、継続的にサービスを続けていくことが重要です。


Q2. 日本人へのサービスが先ではないですか。

 日本人でさえ、図書館を利用しない人が多い、その層の掘り起こしが先ではないかという声もよく聞きます。しかし、図書館のサービスは、日本人でも外国人でもその地域に住む人誰もが、等しく受けることができるサービスです。
 地方自治法の第10条では、「市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする」とし、その第2項では、「住民は、法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し、その負担を分任する義務を負う」と定めています。
 本を読みたい、何かを知りたいという欲求は、日本人であっても外国人であっても変わりません。税金によって作られている公立図書館は、等しく住民にサービスを行う義務があります。
 また、外国語の資料だけでなく、外国に関する資料を収集し、提供することは、外国人のためだけではなく、日本人のためでもあるのです。共に暮らす地域に住む外国人の言葉や文化、生活について知ることは、そこに住む日本人にとっても地域を知り、さらに世界を知るための窓口ともなるものです。
 自信を持って、多文化サービスに取り組みましょう。


Q3.「多文化サービス」を始めるとき、どこから手を付けたらよいかわかりません。

 多文化サービスを始めようとするとき、以下のようなステップを踏んで取り組んでみたらどうでしょうか。
 まず、まちへ出ましょう。あなたの図書館の多文化サービスをどのような人々へ届けますか。その人たちがいるところや、その人たちを支援する人のいるところへ出かけてみましょう。例えば、日本語学校、日本語教室、エスニック食材や新聞を扱う商店・レストラン、お寺や教会、国際交流協会、その他の相談窓口などです。まちなかですれ違う人々は何語を話し、何語で読み書きしているでしょうか。
 次に、改めて図書館の本棚を見てみましょう。あなたの図書館には、日本語以外の本や雑誌・新聞がありますか。サインは分かりやすいですか。広報の手段は適切ですか。
 そして、あなたの自治体や図書館の方針を確認します。あなたの図書館に多文化サービスの方針がまだないなら、現状の確認、そしてどのように変えていくのか、情報やアイデアを集め整理します。多文化サービスの方針・事業計画の説得材料として、国の指針、自治体の総合計画・統計や教育に関する計画・施策との関係、地域で多文化サービスを必要とする人々のニーズを整理しておきましょう。
  Q4.「多文化サービス」を始めるとき、どのような事業計画を立てればよいですか。
  Q5.外国人のニーズがわかりません。
 さらに、あなたの図書館の事業計画をブラッシュアップするため、他館・他自治体の実践例を調べ、自館の状況と比較してみましょう。見学・訪問をすると、公表資料には書かれていない苦労や工夫を知ることができます。


Q4.「多文化サービス」を始めるとき、どのような事業計画を立てればよいですか。

 多文化サービスを図書館の事業計画の中に位置づけるためには、その根拠を明確にしておかなければいけません。
 多文化サービスの根拠になり得る国内法令として、「図書館法」、「地方自治法」、「義務教育機会確保法」、「日本語教育推進法」、「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」などがあります。そのほかに、各自治体の条例や(総合)基本計画、日本図書館協会(JLA)や国際図書館連盟(IFLA)が出している基準やガイドラインなども根拠になるでしょう。
 次に、各自治体の首長部局や教育委員会等の個別計画とも関連付けて新規事業計画を策定することも、予算を獲得するために重要です。すでに多文化サービスを始めている他自治体の事業計画を参考にするのも良いでしょう。
 いずれにせよ、多文化サービスを始めるためには、サービスの根拠となる法令や(総合)基本計画のどの部分を実現するための事業であるかを明らかにしたうえで、自館にとって最初に着手するべき多文化サービスと、そのサービスを実行するための予算獲得に向けた説得力のある事業計画を立てることが鍵となります。

  多文化サービスを始めるための事業計画の手順例
  (1)1年目に何をするか、何年後の目標とする図書館の姿を検討する。
  (2)実施可能な体制や環境を整備する。
  (3)事業の根拠となる法令や条例、基本計画、関連する個別計画等を明らかにする。
  (4)事業に関連する助成金制度の活用を視野に入れる。
  (5)予算獲得のための新規事業提案書と事業計画書を作成する。


Q5.外国人のニーズがわかりません。

 あなたの図書館のサービス地域にどういう人たちが住んでいますか。在住外国人の人口構成を知るには、政府や自治体が出している各種の人口統計が手掛かりになります。自治体の他部署からも地域の実情を聞いたり、自治体や関連機関によるコミュニティ調査報告なども参考にしたりしましょう。在住外国人のニーズは、出身国または出身地域、性別、年齢、滞在年数、母語あるいは使用言語などによっても異なります。わかる限りのデータを収集しましょう。
 在住外国人の生の声を聴くことも大切です。ただし、アンケートなどをいきなり実施しても、調査するほうが信頼されないと、本音を言ってくれるとは限りません。在住外国人が集まる場所、例えば、普段利用する商店、エスニック料理店、外国人学校、日本語教室、外国人相談窓口、在住外国人の宗教施設(教会・寺院など)などに出かけて行って、話を聞きましょう。彼らのイベントなどに参加して親しくなれば、何を必要としているか話してくれると思います。公式の協議会を設定し、定期的に会合を持つことができれば、多文化コミュニティと継続的に緊密な関係を築くことができるでしょう。
 聞き取りをしていく過程で、在住外国人が「どのように」情報を入手しているのか知るのも大切です。情報の入手先としては、在住外国人が独自に運営する図書室、在住外国人の使用言語によるエスニックメディア(新聞、雑誌、ラジオ、テレビなど)、インターネットおよびSNS、口コミ、自治体が発行する多言語のお知らせ、などが考えられますが、どこから情報を入手しているのかがわかれば、自治体や図書館のお知らせをより確実に伝えることにも役立ちます。


Q6.外国人に図書館を利用してもらうにはどうすれば良いですか。

 まず、外国人のニーズを調査しましょう。
  Q5.外国人のニーズがわかりません
 ニーズ調査をしたうえで、利用を妨げているものが何かを探る必要があります。例えば、出身国・地域に図書館が普及していないか、あっても使ったことがない、無料であることを知らない人もいると思われます。公共図書館が、無料で住民すべてに開かれている機関であることをPRする必要があります。

 I.図書館の存在をPR
  ・自治体が発行する多言語の「生活情報」等には、必ず図書館の情報を掲載してもらいましょう。
  ・在住外国人グループのキーパーソンなどに接触し、彼らが利用するSNSに図書館のことを投稿してもらいましょう。
  ・サービス地域にある日本語学校や在住外国人がよく利用する商店などに出向いてPRしましょう。
  ・地域の在住外国人コミュニティとの懸け橋になる職員の採用、あるいはボランティアをお願いしましょう。
 II.図書館の多文化対応
  ・図書館のウェブサイトを多言語化しましょう。
  ・電子書籍を含む多言語資料を収集し、多言語で資料が検索できるようにしましょう。
  ・在住外国人の関心を引くような行事を企画しましょう。(多言語読み聞かせ、日本語学習など)

 以上は、すべてがそろわなければサービスできないということではなく、できることから始めてみてはいかがでしょうか。


Q7.外国語の資料をどのように整理したらよいかわかりません。

 あなたの図書館では何冊くらい収集する予定がありますか。本の整理の目的は、在庫を管理し、利用者や職員が本を見つけやすいように助けることです。そのため、整理方針は規模に応じて変わります。千冊以上の規模になると、探している資料を絞り込むために詳しい書誌データが役に立ちます。また、どのように書架に並べたいかを考えて、ラベルに表示する請求記号や別置記号(*1)のルールを決めておきましょう。
 量とルールが合わなくなって、遡ってデータを修正・追加せざるを得ないことがあります。遡及データ修正には相応の費用と手間が必要になりますので、当初の所蔵数は少なくても、目標の規模に合わせたルールの設定が重要です。
 ここでは、外国語の本の所蔵が一つの言語当たり数十冊以下で、貸出にコンピュータを使用する図書館が、簡単にできる方法を紹介します。中規模以上になる予定であれば、同じくらいの規模や同じシステムを使っている図書館を見学することをお勧めします。
 まず言語別に受入順の番号を振ることにして、タイトルを「○○語□□番」とします。背ラベルには言語名と番号を表示し、書架に並べる順とします。本に書いてあれば必ず入力したいデータはISBNです。ISBNは、1冊ごとに付与されている国際標準図書番号のことです。この番号があれば、他の図書館の所蔵資料や書店サイトで同じ本かどうかを特定する手がかりとなります。
 もう少し本の情報を入力したい場合には、同じ本を所蔵している図書館のデータを参照してコピーすることもできます。ISBNで国立国会図書館の目録やWorldCat、各国の国立図書館の目録や書店サイトを検索することで、どの部分がタイトルなのか、何語で書かれているのかが分かります。慣れてくると、データと本を見比べて、著者や出版者が書かれている場所を見つけられるようになるでしょう。
 図書館のシステムによっては、本に書かれている文字の形で入力すると保存できない場合がありますので、どのようなシステムか確認しましょう。ユニコード(Unicode)(*2)に対応しているならば、その言語を読む人のためにタイトル、著者名などが本に書かれている文字で表示されるように記録しましょう。
 ユニコードに対応していないシステムを使用している場合には、翻字(*3)して入力するという方法があります。ユニコードに対応しているシステムの場合でも、検索可能性を高めるために翻字したヨミを入力している場合があります。

 *1別置(べっち)記号:「別置」は排架法の一つで、内容や形態などの理由で主な資料群とは別にして配置すること。別置された資料を全体と区別するために請求記号のデータやラベルに記す記号を別置記号と呼ぶ。
   資料編 「言語別別置記号の例:埼玉県立熊谷図書館図書装備仕様別表」
 *2 ユニコード(Unicode):世界のさまざまな文字を取り扱える文字コードの規格
 *3 翻字:ある言語表記を別の言語表記で書き直すこと。【?もっと知るために】:「翻字」とは。


Q8.外国語資料をどのように並べるのがよいですか。

 せっかく集めた資料でも、利用者の目につきにくい並べ方ではあまり使われません。たくさんの日本語の資料の中に一緒に並べてしまうと、利用者が読みたいと思う言語の本を見つけることが難しくなります。外国語資料が少ない場合でも一か所にまとめておくこと、コーナーを作ることが大切です。
 そのコーナーも、できれば図書館のなかでも目立つ場所を確保したいものです。日本語があまり自由に使えない利用者は、カウンターでいろいろ尋ねることは苦手なので、たまたま図書館に入ってきても、館内をグルッとひと回りして「ああ、ここにはほしいものはなさそうだな」と感じて出て行ってしまうかもしれません。入口の近くなど職員にわざわざ聞かなくても、利用者がすぐに見つけられるところにコーナーを置きたいものです。
 コーナーには、集めた外国語資料だけではなく、多様な言語の「生活ハンドブック」や日本語の学習書、関連する資料なども一緒に置けば、日本語やその地域のことを学びたい人も使うでしょうし、そこから利用者同士のネットワークが生まれてくるかもしれません。


Q9.外国語資料コーナーにどのような名称を付けたらよいですか。

 『多文化サービス実態調査2015報告書』によれば、外国語資料コーナーの名称の代表的なケースとして、①言語名などを冠するもの(「外国語の本」「Foreign Books」「英語の本」「韓国語コーナー」)、②多文化交流を目的とするもの(「多文化コーナー」「国際交流コーナー」)、③姉妹都市に関わるものなど(「姉妹都市コーナー」「(都市名)コーナー」)が挙げられています。またその他には、「多読コーナー」など、日本人の外国語学習支援を主な目的としたコーナーの名称も複数の図書館でみられました。

 
大阪市立生野図書館 韓国・朝鮮図書コーナー     大泉町立図書館(群馬県)ポルトガル語コーナー

 
小平市立図書館(東京都)多文化コーナー       埼玉県立熊谷図書館 海外資料コーナー

 このように、外国語資料コーナーの名称設定については、共通の決まりごとは特になく、多文化サービスの想定される利用者層、多文化サービスを提供しようとする図書館の地域性、行政の多文化共生の取り組みなどを考慮したコーナー名称を決めてはいかがでしょう。


Q10.「多文化サービス」を始めるとき、職員にどのような研修をすれば良いですか。

 多文化サービスは、一職員の熱意のみで提供されるものではなく、組織的に取り組むことが大切です。共通認識を得るためには、館長も含めた職員全員を対象とした多文化サービスの研修プログラムを実施するのが良いでしょう。
 研修で扱う基本的な内容としては、図書館における多文化サービスの意義や目的、多様化する地域社会における公共図書館の役割、在住外国人を取り巻く状況や彼らの声、などがあります。基本的資料として、「IFLA/UNESCO多文化図書館宣言」、IFLA多文化社会図書館サービス分科会が作成したガイドラインの日本語版『多文化コミュニティ:図書館サービスのためのガイドライン』、『多文化サービス実態調査2015報告書』、『多文化サービス入門』などを参考にしてください。研修会講師の人選が難しい場合は、日本図書館協会多文化サービス委員会に相談してください。
 また、職員がカウンター対応する際に必要な外国語の研修・やさしい日本語研修に参加したり、資料に書かれた言語を識別できるだけの外国語のスキルを身につけるよう支援したりすることも重要です。
 さらに、図書館の多文化サービスが、自治体における重要な多文化共生政策の一つであることを、他部署の職員にも積極的に紹介していく必要があります。例えば、自治体全体の多文化共生研修や人権研修の中で、図書館での取り組みを報告するのも、一つの方法かもしれません。

日本図書館協会(JLA)「多文化サービス」関連出版物
 ・『多文化サービス入門』(2004年)
 ・『多文化コミュニティ:図書館サービスのためのガイドライン』(2012年)
 ・『多文化サービス実態調査2015報告書』(2017年)


Q11.児童・ヤングアダルト(中高生)にはどのようにサービスすれば良いですか。

 まず図書館が、誰にとっても「ここにいてもいいのね」と安心できる場所であることが大切です。気持ち良い雰囲気や楽しめるスペース作りを心がけましょう。
 外国につながりのある子どもにとって、その親の母語で描かれた絵本が備えられている図書館を見つけたら、そこが居場所になることでしょう。日本語があまり得意でない母親を見下していた子どもが、母が母語の本を見つけてすらすら読んでくれるのに触れて、初めて母を見直したという例もあります。
 地域に、どこから来た人たちが多いのかを知り、その母語の本をできるだけ書架に置いてみましょう。また、多言語のおはなし会を準備してみましょう。読み聞かせやおはなしをしてくれる人を探し、本を選び、実施することができれば、日本語とそのほかの言語のリズムや違いを感じる楽しい時間となることでしょう。
 ゼロ歳児の集団検診の際、「ブックスタート(赤ちゃんとその家族に絵本の楽しみを伝えるために絵本などをプレゼントする活動)」を実施している自治体では、外国につながりのある親子のために多言語や日本語のローマ字表記のある絵本のセットを配っているところもあります。ブックスタートは、図書館と行政がタイアップし、図書館のおはなし会や、子育て支援施設での催しなど、子育てに役立つ地域の情報を住民に伝える機会にもなっています。
 ヤングアダルトになると、図書館離れや読書離れが多く指摘されていますが、外国につながりのあるヤングアダルトの場合、日本語が得意でないことにより、進学や就職にも困難がつきまといます。彼らの日本語学習の支援や、補習・宿題の援助などのために、図書館はまず、ヤングアダルトが落ち着ける「場」の提供から取り組んでみたらいかがでしょう。さらに、地域のボランテァ・他の社会教育機関や施設、学校などとの連携も図っていきたいものです。


Q12.外国語を話せる職員がいなので、カウンター対応が不安です。

 まずはにっこりと笑って「こんにちは」と迎えましょう。そして、「なにか読みますか」と言った後で、「やさしい日本語」でゆっくり話します。相手に失礼だと思って丁寧なことば(敬語、尊敬語、謙譲語)を使ってしまうかもしれませんが、丁寧なことば外国人には難易度の高い日本語です。できるだけ丁寧なことばを使わずに、シンプルな「ですます体」で話してください。その時に、相手に伝わりやすようにジェスチャーを入れるともっと伝わるでしょう。
 やさしい日本語を使った外国人利用者との会話を資料編で紹介します。図書館のカウンターでよく使われている日本語のフレーズです。ここでは、図書館職員がカウンターで外国人利用者と対面した場面を想定しています。モノを介してのやさしい日本語会話です。
 図書館の利用登録や資料の予約など説明が必要な場面は、説明文を多言語に翻訳した用紙を提示することや指差しで説明できるイラストなどを準備するといいと思います。
 スマートフォン・タブレット端末・携帯翻訳機などを利用した無料・有料の多言語音声翻訳サービスも始まっています。言葉の壁が技術の進歩で取り除かれていくのに合わせて、心の壁もなくなっていくことでしょう。


【もっと知るために】
 訪日外国人へのサービスも「多文化サービス」ですか。

 訪日外国人とは、ビジネスや観光などの目的で、短期間日本に滞在する外国人を指しますが、近年特に注目されてきたのは、インバウンドと呼ばれる外国人旅行客です。
 多文化サービスは、日本に在住する外国人の生活・学習を支援することが基本ですが、訪日外国人に対するサービスにも通じる部分があります。訪日外国人の中には、旅行情報や日本社会・文化などに関する情報などを求めて図書館を訪れる場合があります。日本に関する多言語資料の収集・提供も多文化サービスの一つですので、それらの資料は訪日外国人にも役立つでしょう。
 また、図書館が館内のサインを多言語で表示したり、無料 Wi-Fiを提供したりすることは、在住外国人だけでなく、訪日外国人にも使いやすい図書館になります。地域の国際交流協会や観光協会などと連携して、訪日外国人のニーズに応えることは、地域振興の一助にもなるでしょう。


 「翻字」とは

 図書館では、様々な文字の図書を、利用者が簡単に探すことができるように、その文字をローマ字やひらがななどに置き換えて目録を作成しています。それを「翻字」といいます。
 『図書館用語集 四訂版』(JLA刊)の“翻字(transliteration)”では、「ある国の言語表記を別の言語表記で書き直すこと。一般に、ギリシャ語、ロシア語、アラビア語などの表音文字を1字ずつローマ字に置き換えることをいう」と解説しています。

 翻字の例「図書館」を挙げてみてみましょう  
 
 世界の言語数は8000以上とも言われますが、文字数と言語数は同じではありません。それらの文字をくまなく翻字するのは困難ですが、現在は「ユニコード」が制定され、代表的な文字は単一の文字コードで表現できるようになりました。翻字されたヨミで探せば、簡単に本来の文字・言語の資料が見つかります。便利になりました。
 しかし、文字コードで済ますだけではなく、それぞれの文字の背後にある歴史や文化にも思いをはせたいものですね。


 国名/国旗と言語について

 外国語資料コーナーに、国名や国旗を表示している図書館を見かけます。しかし、日本に在住する外国人の中には、その国から難民や亡命者として来ている人もいます。そのような人々にとって、国名・国旗は素直に受け入れがたい思いがあるかもしれません。
 また、国と言語は同じではありません。一つの国で複数の言語を公用語(シンガポールでは、中国語・英語・マレー語・タミル語が公用語)としているところもあれば、主要言語と異なる母語を持つ民族も同じ国内います。
 外国語資料コーナーを作るとき、国名や国旗ではなく、言語名を使うことをお勧めします。


 「やさしい日本語」とは

 「やさしい日本語」は、普通の日本語よりも簡単で外国人にわかりやすい日本語のことです。例えば「昨晩」という言葉を「きのうの よる」のように、外国人が知っている言葉に書き換えることも「やさしい日本語」です。
 1995年の阪神・淡路大震災のとき、外国人も被害に遭いましたが、日本語が理解できずに、必要な情報を得ることができない人も多くいました。いろいろな外国語に翻訳して伝えるためには、時間がかかってしまいます。震災をきっかけに、外国人が災害時に適切な行動と必要な情報を得ることができるように、「やさしい日本語」の研究が始まりました。
 居住する外国人の母語を翻訳することは、時間と費用がかかりとても難しいため、現在は、災害時だけでなく普通の時に使う「やさしい日本語」を取り入れた自治体が増えて来ています。自治体のホームページや行政文書などに、「やさしい日本語」を使っています。また、NHKは 2012年4月から、やさしい日本語のニュースを「NEWS WEB EASY」として、インターネットで公開しています。日本に住む外国人や小学生・中学生のために、漢字にはふりがなをつけています。
 公共図書館のホームページの言語の選択肢に、「やさしい日本語」が含まれるようになりました。


<資料編>
 ・図書館での「やさしい日本語」会話:敬語を使わずに話しましょう。
 ・外国語資料の購入先
 ・言語別別置記号の例:埼玉県立熊谷図書館図書装備仕様別表

<付録>
  ・IFLA/UNESCO多文化図書館宣言
  ・多文化サービスの意義
 
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 Q&Aについてのご意見・ご感想、または貴館で取り組んでいる多文化サービスの事例(画像を含む)などを委員会にお寄せください。
 日本図書館協会多文化サービス委員会
 E-mail tabunka@jla.or.jp
02408
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