COVID-19に向き合う

「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」改定を受けて図書館の再開を検討するために

2020/05/05発信,2020/05/10更新

新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の5月31日までの延長が決まりましたが、5月4日に改定された「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000627560.pdf) では「博物館、美術館、図書館などについては、住民の健康的な生活を維持するため、感染リスクも踏まえた上で、人が密集しないことなど感染防止策を講じることを前提に開放することなどが考えられる。」とされました。

IFLAのホームページでは、図書館再開のための指針が公開されており、今後、図書館再開に向けて各自治体が行動計画を立てる際に参考になります。

IFLAでは、「COVID-19と世界の図書館界」(COVID-19 and the Global Library Field https://www.ifla.org/covid-19-and-librariesを開設して、継続的に情報を発信しています。これは 新たな状況に合わせて頻繁に更新されています。
次の項目立てで、新型コロナウィルスの情報、世界の図書館の動向、感染の段階に応じたサービスの提供のあり方、図書館再開に向けての対策などが説明されています。

  • COVID-19とその広がりについて
  • 世界各国の図書館閉鎖
  • 制限へのさまざまなアプローチの管理
  • 自宅や職場での安全確保
  • リモートでのサービス提供
  • リモートワークの管理
  • 図書館リソースの再配置
  • 図書館の再開  
  • 協会、国立図書館、図書館パートナーの活動
  • 異なる言語でのユーザーとのコミュニケーション
  • 進行中の課題
  • IFLAの活動

「図書館の再開」(Reopening Libraries https://www.ifla.org/covid-19-and-libraries#reopening) の項目では、図書館内の利用者数を制限する、そのために発券システムを使う、距離をとる方法、衛生管理の徹底、スタッフの安全確保など各国の対策を紹介しています。
現在(2020年5月5日更新)のホームページでは、フランスとドイツの図書館を再開するためのガイドラインをIFLAが英訳したファイルを参照することができます。

全体として、図書館は段階的に安全を確保したサービスのみ再開するよう助言し、急いで物理的な建物を再開することには警告を発しています。

(付記)

「COVID-19と世界の図書館界」の抄訳が「コロナウイルスの感染拡大への対応における図書館のための重要な情報源」(5月1日現在の日本語訳)(https://docs.google.com/document/d/1ahM1nc674qbDzCc28HXUk6eplqfNHQK_MlXQMksAnBA/edit#)として翻訳協力者よしもと(カーリル)さんほかにより公開されています。

来館記録の収集は推奨しません。

2020/05/10発信

3月に、一部の施設で感染防止対策として新たに来館記録(入館記録)を収集する措置が行われていることが報道されています。図書館の利用事実を記録するような対策を講じることは、図書館利用のプライバシー保護の観点から図書館の自由委員会としては推奨しておりません。
地域の状況に応じて、どうしても来館者の記録が必要なときは、利用者への通知、外部機関(保健所等)への提供方法、管理方法、保存期限などプライバシー保護について明確な取り扱いを決めることが必要です。


来館記録の効果は認められるか?

感染者の行動調査から図書館への立ち寄りが判明したとしても、その感染者と同時刻に来館した利用者は「濃厚接触者」に該当するでしょうか。
国立感染症研究所の「濃厚接触者」の定義では、「1メートル以内かつ15分以上の接触」と定められています。
(国立感染症研究所感染症疫学センター:積極的疫学調査実施要領における濃厚接触者の定義変更等に関するQ&A(2020年4月22日)https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9582-2019-ncov-02-qa.html, 2020.5.10アクセス)
書店のアルバイト従業員が感染した事例では、3時間という短時間勤務のため、保健所から、同僚や客は濃厚接触者に当たらない旨の連絡を受けていたことが報じられています。
(京都新聞2020年3月16日22:26 https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/188655,2020.5.10アクセス)
また、多くの図書館では感染防止のために、滞在時間短縮、マスクの着用、手指の消毒、ソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保を利用者に求めています。こうした点を考慮すると、感染者と同時刻に来館した利用者、またはその時間帯にカウンターで対応した職員がすぐに濃厚接触者と認定されることは少ないのではないでしょうか。
なお、今後、図書館サービスが徐々に拡大され、閲覧席の利用を許可するようになった場合でも、1~2メートルの距離を置いて席に着いてもらう、向かい合わせの席を廃止する、パーテーションを設置するなどの対策をとれば、利用者同士が濃厚接触者となることを回避できるでしょう。


来館者に感染者が出た場合、どう対応するか?

来館記録を取らない場合でも、図書館にはその他の利用記録が一時的に残っている場合があります。そして、その記録についても、感染拡大防止のために活用すべきかどうか、外部から求められたらどうするか、という問題が生じる可能性があります。
例えば、感染者の立ち寄り情報が保健所等の外部機関から図書館へ寄せられた場合、その感染者が本を借りていたならば、同じ時間帯に本を借りている利用者を来館者として特定することができます。上述のように、同時刻に図書館を利用していただけでは濃厚接触者には該当しないと思われますが、保健所等からその情報の提供を強く求められたらどうするべきでしょうか。
『「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」解説 第2版』では、来館事実も利用者のプライバシーとして保護することを求めています(「利用事実」(p.37~)参照)。まずは外部機関に対してこの理念をしっかりと説明し、データを直接渡すことは避け、図書館から同時刻の来館者へ連絡する等の対応をとるようにしましょう。図書館のホームページやツイッター等で呼びかけることもできるでしょう。また、そうした場合に備えて、対応方針を明確にしておくことも求められます。
なお、感染者の図書館利用が判明したときは、保健所等からの情報をふまえて、利用者が立ち寄ったかもしれない場所を消毒したり、(記録が残っていれば)使った(借りた)資料を消毒、一定期間利用禁止にするといった対策を行うことで、図書館が感染拡大防止に協力することも可能です。


通常は行っていない来館記録を収集するときは?

個人情報保護条例に基づき個人情報保護審議会に諮り、収集目的と来館記録の保存期間や管理方法、外部機関への提供方法をきちんと定める必要があることがまず確認しておきたいことです。具体的には次の作業を行うことが求められます。
1.個人情報保護条例に基づき個人情報保護審議会に諮ること
2.国や自治体の法令、方針、指示や協力要請等の根拠を示して収集目的を明確化すること
3.収集した情報の保存期間・管理方法の事前の決定と速やかな廃棄のルール作り

再開にあたって、サービスを一部制限したり、来館記録を収集せざるを得ないときは、根拠に基づき必要最小限であること、そしてきちんと利用者に説明することが求められます。地域での感染の広がりをふまえつつ、住民の生命や健康の危機が緊急に懸念される状況にあるのかどうか、しっかりと検討しましょう。

(一部文言を修正しました。最終更新2020/05/11)


日本図書館協会の対応(お知らせより)

図書館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインの「来館者名簿の作成」の運用に関する補足説明 2020/05/20 http://www.jla.or.jp/home/news_list/tabid/83/Default.aspx?itemid=5310

図書館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインについて 2020/05/14 http://www.jla.or.jp/home/news_list/tabid/83/Default.aspx?itemid=5307

公衆送信権等の時限的制限についての協力依頼を発出しました 2020/04/24
http://www.jla.or.jp/home/news_list/tabid/83/Default.aspx?itemid=5290

緊急事態宣言のもとでの図書館の対応について 2020/04/21
http://www.jla.or.jp/home/news_list/tabid/83/Default.aspx?itemid=5278

図書館における新型コロナウィルス感染症への対応事例について 2020/03/09(随時更新)
http://www.jla.or.jp/home/news_list/tabid/83/Default.aspx?itemid=5231

新型コロナウイルス感染症による学校休校に係る図書館の対応について 2020/02/28
http://www.jla.or.jp/home/news_list/tabid/83/Default.aspx?itemid=5221

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