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「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画」の策定指針

地方公共団体において「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画」を策定するための指針


2023年4月1日
公益社団法人日本図書館協会(障害者サービス委員会)


「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画」の策定指針 Word版
「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画」の策定指針 PDF版
「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画」の策定指針 テキスト版
「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画」の策定指針 点字版

目次

はじめに
第1章 読書バリアフリー計画策定の考え方
1 読書バリアフリー法の特徴と計画策定の意義
(1) 読書バリアフリー法の特徴
(2) 読書バリアフリー計画策定の根拠と目的
2 読書バリアフリー計画策定で注意してほしいこと
(1) 計画策定のための体制作り(教育部局と福祉部局の連携)
(2) すでに実施していることと,不足していることの把握(実態調査を含む)
(3) 既存の実施内容のみをもって計画を構成しない
(4) 地方自治体レベルで行うことと国レベルで行うことの区分け
(5) 都道府県内に政令指定都市が存在する場合の注意点
(6) 指標(数値目標)の提示
(7) 進捗状況の把握と,計画の更新
(8) 従来の教育計画・福祉計画に新項目として追加する場合の注意点
3 読書バリアフリー計画を策定するための体制
(1) 関係者協議会を設立する方法
(2) 従来ある協議組織を活用する方法
(3) 地方自治体の組織内で策定する方法
(4) パブリックコメントの実施
第2章 読書バリアフリー計画の内容
1 概要
(1) 読書バリアフリー法の概要
(2) 読書バリアフリー計画策定の意義,目的
(3) 読書バリアフリー計画の対象
(4) 読書バリアフリー計画の策定者
(5) 読書バリアフリー計画の期間
(6) 地方自治体の現状
(7) 今後の目標
2 具体的施策
(1) 基本的な方針
(2) 視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係)
(3) インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係)
(4) 特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係)
(5) 視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係)
(6) 端末機器等及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係)
(7) 製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係)
3 指標,数値目標
4 読書バリアフリー計画の今後
(1) 読書バリアフリー計画の周知及び啓発
(2) 進捗状況の検討組織
(3) 読書バリアフリー計画の更新
5 「読書バリアフリー計画の用語集」の作成
6 参考資料(例)
補足 市区町村が読書バリアフリー計画を策定する場合の留意点
(1) 計画策定のための体制作り(関係部局などとの連携)
(2)  計画実施のための連携協力
(3) 当該市区町村の実情に合わせた計画の策定
(4) 当該市区町村の実情を踏まえた住民への直接サービス,個別支援を踏まえた計画の策定
(5) 視覚障害者等への読書支援についての人材育成
第3章 読書バリアフリー計画の周知,普及
1 対象
(1) 住民(サービスの対象となる人,家族,ボランティアをはじめとする広く一般の市民)
(2) 域内市区町村
(3) 関連する団体
(4) 文部科学省・厚生労働省
2 周知方法
(1) 各戸配布される県政だよりのような広報誌
(2) ウェブページ・SNS
(3) 公立図書館
(4) 点字図書館(視覚障害者情報提供施設)
(5) 公立小・中学校,義務教育学校,中等教育学校,高等学校及び特別支援学校
(6) 身近な医療機関等
3 配慮すべきこと

アスタリスク(*)のある語句には,別に用語解説を用意した。

はじめに

 2019年6月に,「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(以下,「読書バリアフリー法」)が成立した。その第7条を受けて,国の「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」(以下,「読書バリアフリー基本計画」)が公表され,地方自治体にも第8条で「視覚障害者等のための読書環境の整備の推進に関する計画」(以下,「読書バリアフリー計画」)の策定が努力義務とされている。
 ところが,各地方自治体における読書バリアフリー計画の策定は思うように進んでいないのが現状である。また,すでに策定された計画を見てみると,内容的に不足しているもの,今後の改定で充実させていってほしいものも多い。
 そこで,この指針では,地方自治体の計画策定を支援し策定を促すと共に,今後の改定にあたっての参考となることを目指している。
 地方自治体の読書バリアフリー計画は,国の読書バリアフリー基本計画を受けて,まず都道府県・政令指定都市を中心に策定するのが現実的である。さらに,それらの地方自治体の計画を踏まえて市区町村の計画を考えていくものと思われる。そこで,ここでは主に都道府県を想定して,地方自治体における読書バリアフリー計画を策定するための指針を示す。
 実際の計画は,「第2章 読書バリアフリー計画の内容」を参考に策定してほしい。
 市区町村は,都道府県の基本計画を踏まえ,さらに地域の実情に合わせたものを策定する。市区町村が計画を策定するための考え方を第2章の末尾に入れる。

第1章 読書バリアフリー計画策定の考え方

1 読書バリアフリー法の特徴と計画策定の意義

(1) 読書バリアフリー法の特徴
 読書バリアフリー法には次のような特徴がある。読書バリアフリー計画策定においては,地方自治体の状況を踏まえ,これらの意味を十分理解し,適切に組み込んでいく必要がある。
① 対象者は,「視覚による表現の認識が困難な者」(視覚障害者等*)とされ,障害等何らかの理由で視覚による読書(情報入手)が困難な人である。障害者手帳の有無にはとらわれない。(第2条)
② 国,地方公共団体の責務を明確にしている。(第4~5条)
③ 関係者協議会*(第18条)の協議により,国の基本計画(第7条)が公表されている。この基本計画は文部科学大臣及び厚生労働大臣の連名によるもので,事前に関係する省庁との調整も求めている。これは,教育や福祉の壁を越えて,民間も含め,社会全体で障害者への情報提供を行うことを示している。
④ 地方公共団体に読書バリアフリー計画の策定を求めている。(第8条)
⑤ 国や地方公共団体に図書館や点字図書館の役割やその連携を提示している。(第9条)
⑥ 国や地方公共団体に「サピエ図書館」*への支援と,「国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービス」*等との連携を求めている。(第10条)
⑦ 国や地方公共団体に著作権法第37条による障害者サービス用資料*の製作支援と,国に製作施設への出版者からのデータ提供を促進している。(第11条)
⑧ 国に利用しやすいアクセシブルな電子書籍*の刊行を促し,もしくは本を購入した利用者へのアクセシブルなデータ*の提供を求めている。(第12条)
⑨ 国や地方公共団体は,アクセシブルなデータを再生する端末機器等*と,それに関する情報の入手を支援する。(第14条)
⑩ 国や地方公共団体は,視覚障害者等の情報通信技術の習得支援を行う。(第15条)
⑪ 国や地方公共団体に図書館職員等のサービス人材の育成と,障害者サービス用資料の製作人材の育成を図る。(第17条)

(2) 読書バリアフリー計画策定の根拠と目的
 条文では,地方自治体の読書バリアフリー施策とその計画について,以下のように書かれている。

(地方公共団体の責務)
第5条 地方公共団体は,第3条の基本理念にのっとり,国との連携を図りつつ,その地域の実情を踏まえ,視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策を策定し,及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の計画)
第8条 地方公共団体は,基本計画を勘案して,当該地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の状況等を踏まえ,当該地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画を定めるよう努めなければならない
2 地方公共団体は,前項の計画を定めようとするときは,あらかじめ,視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 これらの条文から,国の基本計画を踏まえて,地域の実情に合わせた地方自治体独自の読書バリアフリー計画を策定することを求めていることがわかる。なお,地方自治体の読書バリアフリー計画の策定は必須項目ではなく,努力義務となっている。ただし,法律の趣旨を実現するためには,都道府県・政令指定都市・市区町村においてそれぞれの計画を立てることには大きな意義がある。さらに,都道府県の計画を受けて市区町村の計画が策定されるであろうことから,都道府県の計画策定は必須である。

2 読書バリアフリー計画策定で注意してほしいこと

(1) 計画策定のための体制作り(教育部局と福祉部局の連携)
 国の読書バリアフリー基本計画でも地方自治体の読書バリアフリー計画でも,その策定に当たっては「あらかじめ,視覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」よう努めるものとされている。
 また,国の基本計画策定においては,「第4章 協議の場等」で

第18条 国は,視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の効果的な推進を図るため,文部科学省,厚生労働省,経済産業省,総務省その他の関係行政機関の職員,国立国会図書館,公立図書館等,点字図書館,第10条第1号のネットワークを運営する者,特定書籍又は特定電子書籍*等の製作を行う者,出版者,視覚障害者等その他の関係者による協議の場を設けることその他関係者の連携協力に関し必要な措置を講ずるものとする。

としている。この条文を受けて,国は関係者協議会を設置し,基本計画を検討し発表した。また,その評価や実施について協議を継続している。
 地方自治体においても,これらの趣旨を踏まえ,地方自治体内の関係部局(教育・福祉等)・公立図書館・学校図書館・大学図書館(短期大学・高等専門学校含む。以下同じ)・点字図書館・障害者支援施設*・視覚障害者等の当事者団体・専門家・有識者等,地域の実情に合わせた構成員による検討組織における協議が求められる。具体的には本章「3 読書バリアフリー計画を策定するための体制」にて後述する。

(2) すでに実施していることと,不足していることの把握(実態調査を含む)
 読書バリアフリー計画を策定するためには,その前提として地方自治体内の状況を正しく把握することが必要となる。
 点字図書館においては定期的に全国的な実態調査を行っているが,都道府県レベルで域内の状況を毎年調査している例はわずかである。定期的に実態調査を行い,地方自治体内の図書館等で,どのようなサービスがどのくらい行われているのかを把握し,現状と不足している点を確認することが必須である。
 あわせて図書館や関連施設間の連携の状況も把握したいが,事情により把握が難しい場合は,協議会における情報交換,お互いの訪問,ヒアリング調査なども活用する。
 さらに,実態調査を行うこと自体が,普及のためのPRになる。

(3) 既存の実施内容のみをもって計画を構成しない
 読書バリアフリー計画を策定する前提として,従来の公立図書館・学校図書館・点字図書館等による視覚障害者等へのサービスがまだ不十分であるという認識を持つことが重要である。事実,サービスが必要であると思われる人と,現実に利用している人の数には大きな隔たりがある。先進地域*の状況を知ることで,問題点を見つけることもできる。
 そこで,計画策定においては,従来実施している施策のみをまとめたのでは不十分といえる。先進地域の事例も参考にして,地域で不足している点を把握し,それを改善するための前向きな計画策定が求められる。

(4) 地方自治体レベルで行うことと国レベルで行うことの区分け
 国の読書バリアフリー基本計画と地方自治体の読書バリアフリー計画では,当然その内容に違いがある。
 たとえば,都道府県のものは,都道府県が自ら行うべきこと,都道府県立図書館・都道府県立学校の図書館の役割に加え,点字図書館等の関連施設との連携や,域内の市区町村立図書館や小・中学校等を加えた全体としてのビジョンが必要となる。さらに,国や地方自治体の福祉サービスも念頭に置く必要がある。
「サピエ図書館」への支援や,出版社が行うアクセシブルな電子書籍の刊行等については,国の基本計画で明らかにするべきものである。
 市区町村の読書バリアフリー計画では,地方自治体や地域の図書館の役割に加え,ネットワークを活用した視覚障害者等への直接サービス・個別支援に関することが中心になるものと思われる。

(5) 都道府県内に政令指定都市が存在する場合の注意点
 域内に政令指定都市がある都道府県が読書バリアフリー計画を策定する場合は,以下のことに留意する。
①教育部門の公立図書館では域内の都道府県立図書館や市区町村立図書館同士の何らかのネットワークが存在するのが普通で,そこには政令指定都市立の図書館も含まれる。それに対して,福祉部門の点字図書館等は,政令指定都市が存在するとそこにあるものは都道府県の所管ではないため内容を把握していないことが多い。
②義務教育学校は,政令指定都市内の学校とそれ以外の県内の学校では管轄が異なることも多い。
③これらの組織上の違いを考慮して,都道府県が計画策定をする場合は,政令指定都市内の点字図書館や学校図書館等もネットワークに加えて考えなくてはならない。

(6) 指標(数値目標)の提示
 読書バリアフリー計画では,本来指標・数値目標の提示が必要であることはいうまでもない。しかし,前述のように地域の実態把握がなされていない場合は,それを示すことも困難となる。各図書館等の業務統計から数値を出すと,現状の域を出ないものとなり,計画としては不十分になりやすい。
 現状を把握した上で,計画期間満了までの数値目標を立てると共に,現在行っていないが新たに行うべきことを加えたい。指標は館・施設ごとの目標ではなく,地方自治体全体として示したい。

(7) 進捗状況の把握と,計画の更新
 読書バリアフリー計画では,計画策定自体が目標ではなく,その推進,目標達成が求められる。数年単位で計画が策定されるが,その進捗状況を最低でも年に1度は確認していきたい。関係者協議会等の協議会組織による継続的な確認と検討が求められる。
 読書バリアフリー計画の更新時は,これらの進捗状況の確認と,全国で新たに取り入れられたサービス等を踏まえ,地方自治体の特徴も加味して,より積極的な計画を策定したい。他地方自治体の優れた計画も参考になる。

(8) 従来の教育計画・福祉計画に新項目として追加する場合の注意点
 独立した読書バリアフリー計画を策定するのではなく,従来の福祉や教育の計画に追加する方法で計画を策定することもできる。その場合は以下の点に注意する。
① 視覚障害者等の当事者の意見を反映できるように工夫する。単なるアンケート調査や,後述の本章「3(4)パブリックコメントの実施」だけではなく,ヒアリング調査等により,具体的な意見を定期的に取り入れられるようにする。
② 庁内の教育部門と福祉部門の連携はもちろん,公立図書館等と点字図書館,福祉関係機関等との連携についても十分配慮する。前述したように,従来の施策に満足してはならない。
③ 個々の部局からの計画の寄せ集めにならないように,地方自治体全体としての実情把握に努め,地方自治体全体としての計画が策定できるように工夫する。特に,指標や目標設定では,全体を見据えた前向きな対応が求められる。
④ 個々の計画が離れた位置に掲載されることも考えられる。それにより読書バリアフリー計画の全体が把握しにくくなることが懸念されるため,関係の計画をまとめたもの(ウェブサイトや冊子)を提示したい。

3 読書バリアフリー計画を策定するための体制

 以下のいずれの方法をとる場合でも地方自治体本庁の教育部局と福祉部局の協力体制が必須となる。また,図書館も計画策定に必ず参画しなくてはならない。

(1) 関係者協議会を設立する方法
 国の関係者協議会を参考に,その地方自治体版を立ち上げる方法。
 必ず障害当事者*(障害のタイプが異なる複数の団体から)の構成員を含める。
 必要に応じて途中で構成員の追加や変更もある。
 事務局は,教育・福祉部局の職員が担当する。状況により都道府県立図書館等の職員が担当することも考えられる。
 障害当事者の構成員のために,情報保障*や会議への安全な参加方法に十分配慮する。

★関係者協議会の構成員の例
地方自治体内の関係部局(教育・福祉等),公立図書館,学校図書館,大学図書館,点字図書館,障害者支援施設,視覚障害者等の複数の当事者団体,出版社や書店,音訳等の資料製作者,専門家・有識者等

(2) 従来ある協議組織を活用する方法
 既存の協議会等をそのままあるいは新構成員を追加することで関係者協議会と同じものとする方法。
 地方自治体によっては,従来から公立図書館と点字図書館や学校図書館等との連絡協議会を設置しているところがある。その協議会をそのまま,もしくは新構成員を追加することで関係者協議会と同じものとする方法がある。
 事務局は従来担当しているところがそのまま担当することが多い。ただし,読書バリアフリー計画に対する責任を確認するためにも,本庁内の教育・福祉部門の職員を必ず参加させる。

(3) 地方自治体の組織内で策定する方法
 特別な関係者協議会や協議組織を立ち上げずに行う方法。
 地方自治体の教育・福祉部門が協力して計画案を策定する。ただし,図書館や点字図書館等の現場の職員とも連携して,より具体的な実情把握と計画策定に努める。さらに,障害当事者の意見の集約について積極的に取り組む必要がある。
 注意する点は前述の「2(7)進捗状況の把握と,計画の更新」に示したので,あわせて参照いただきたい。

(4) パブリックコメントの実施
 読書バリアフリー計画案ができたところで,必ずパブリックコメントを実施する。特に関係者協議会を設けていない地方自治体では,パブリックコメントに寄せられた意見を反映できるように柔軟に修正していく。
 パブリックコメントの実施に当たって,パブリックコメント募集のウェブサイトや回答方法のアクセシビリティ*にも配慮して,さまざまな障害者が意見を出せるように工夫する。また,募集期間も十分な長さをとる。さらに,関連する障害者団体へのヒアリング調査を行う方法もある。
寄せられた意見とそれに対する対応策をまとめて,ウェブサイト等で公開する。

第2章 読書バリアフリー計画の内容

 以下の内容を参考に地方自治体の読書バリアフリー計画を策定する。
表紙
(地方自治体名)視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画
目次

1 概要

(1) 読書バリアフリー法の概要
 初めに法律の目的・対象・施策の概要等を簡潔に記す。

(2) 読書バリアフリー計画策定の意義,目的
 地方自治体の状況を踏まえ,この計画で何をしたいかを簡潔に記す。

(3) 読書バリアフリー計画の対象
 本計画の対象者を具体的に示す。

(4) 読書バリアフリー計画の策定者
 読書バリアフリー計画を検討,策定した組織やプロセスを記す。

(5) 読書バリアフリー計画の期間
 本計画がいつの期間を対象としているかを記す。

(6) 地方自治体の現状
 地方自治体の読書バリアフリーの現状を以下の点について記す。実態調査等を行っている場合は,その結果の概要も加える。
① 視覚障害者等の状況
② 都道府県立図書館(資料,サービス,利用者等)
③ 市区町村立図書館(全体的なサービスの状況,特徴のあるサービス等)
④ 点字図書館(資料,サービス,利用者等)
⑤ 大学図書館
⑥ 学校図書館
⑦ 音訳者等のボランティアグループ
⑧ ネットワーク,連携の状況
⑨ 福祉サービス,ICTサポートセンター*等
⑩ 課題

(7) 今後の目標
 地方自治体全体として,これからどこに力を入れていくのか,特に取り組む項目等を記す。

2 具体的施策

(1) 基本的な方針
① アクセシブルな電子書籍等の普及及びアクセシブルな書籍*の継続的な提供
 出版社によるアクセシブルな電子書籍の刊行を見守り,図書館等は刊行された場合に積極的に購入提供する。また,視覚障害者等が自ら購入して利用できるように支援する。
 図書館は,引き続きアクセシブルな書籍等を積極的に購入し提供する。提供にあたってはネットワークを活用して種々な図書館で行えるようにする。
② アクセシブルな書籍等の量的拡充・質の向上
 著作権法第37条第3項*で製作する資料について,国立国会図書館・都道府県立図書館・市区町村立図書館・点字図書館等による製作分担,役割分担を行い,より多くの資料が提供されるように努める。
 資料の質の向上のための研修会を連携して行う。
③ 視覚障害者等の障害の種類・程度に応じた配慮
 公立図書館等・点字図書館・ICTサポートセンターの,それぞれによる支援等を明らかにする。
 関連する福祉サービスを紹介する。
④ その他
 それぞれの地方自治体で特に力を入れる部分や,特徴を明らかにする。

(2) 視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係)
 以後の項目は,「基本的な考え方」「具体的施策」のように分けて表記してもよい。
① アクセシブルな書籍等の充実(資料)
 図書館の種類(都道府県立・市区町村立・大学・学校等)ごとに,購入等して蔵書とするものを示す。
 点字図書館の資料についても明らかにする。
 現在実施していることだけではなく,これから実施する予定も加える。
② 円滑な利用のための支援の充実(サービス)
 図書館の種類(都道府県立・市区町村立・大学・学校等)ごとに,実施している障害者サービスを示す。
 点字図書館のサービスを示す。
 現在実施していることだけではなく,これから実施する予定も加える。
③ その他,体制の整備等(施設,予算,職員)
 現状と新たな取り組み,課題などを示す。

(3) インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係)
① 基本的な考え方
 「サピエ図書館」「国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービス」を活用して,資料の全国的な相互貸借とダウンロードによる情報提供と,視覚障害者等が自ら利用できるサービスを記す。
② 具体的施策
 公立図書館等・点字図書館等によるネットワークを活用したサービスを示す。

(4) 特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係)
① 基本的な考え方
 著作権法第37条第3項による資料製作について,都道府県立図書館・域内の市区町村立図書館・点字図書館等の役割を示す。
② 具体的施策
 各図書館の実情や,目指すものを示す。

(5) 視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係)
① 基本的な考え方
 アクセシブルな電子書籍の販売等の促進については,地方自治体の読書バリアフリー計画でそのまま記すものではないが,利用者が図書を購入した場合に,出版社からアクセシブルな電磁的記録(テキストデータ等)*の提供が受けられる場合があることを知らせる。
 図書館は電子書籍の配信サービスのアクセシビリティを検証し,優れたものを積極的に導入する。
②具体的施策
  電子書籍配信サービスのアクセシビリティの検証には,国立国会図書館等の関係者による「図書館におけるアクセシブルな電子書籍サービスに関する検討会」の報告(ガイドライン)を用いる。

★第13条(外国からの視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の入手のための環境の整備)については,地方自治体の読書バリアフリー計画でそのまま記すものではないが,外国で製作されているアクセシブルな電子データ*の相互貸借ができることを知らせる。記載場所は,図書館のサービス,またはネットワークを活用したサービスに入れる。

(6) 端末機器等及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係)
① 基本的な考え方
 各図書館等による,再生機器*の体験,操作支援,貸出を行う。
 福祉サービスの「日常生活用具給付等事業*」や障害者ICTサポート事業*等の情報を記す。
 図書館等職員は,これらの情報や操作技術を学ぶ。
② 具体的施策
 上記サービスの具体的利用方法等を記す。

(7) 製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係)
① 基本的な考え方
 司書,司書教諭・学校司書,職員等の確保と資質向上
 点訳者・音訳者,アクセシブルな電子データ製作者*等の人材の養成と育成
② 具体的施策
 職員の状況,職員研修会の実施状況
 音訳者等の資料製作者の状況,養成講座や研修会の状況
 これらの課題と解決策

3 指標,数値目標

 この計画期間に達成したい数値目標を記す。
 ただし,現状を数字で把握していないと目標も立てられないため,最初からは出さずに,次回更新時の課題とすることもできる。
 おおむね以下のことを図書館の種類別(都道府県立,市区町村立,点字)に,数値で記したい。
① 視覚障害者等の利用者数
② 障害者サービスのサービス実施館数
③ 資料の所蔵数,製作数(著作権法第37条第3項によるもの)
④ 資料の提供数
⑤ 再生機器等の所蔵数,貸出・案内件数
⑥ ICTサポートセンター等,福祉サービスの利用件数
⑦ 担当する職員数,音訳者等資料製作者数
⑧ 職員研修会,音訳者等資料製作者研修会の状況
⑨ その他

4 読書バリアフリー計画の今後

(1) 読書バリアフリー計画の周知及び啓発
 第3章にある普及方法を参考に,具体的取り組みを示す。

(2) 進捗状況の検討組織
 計画の進捗状況をどの機関ごとに確認するのか。また,それはどこで検討されるのかを記す。

(3) 読書バリアフリー計画の更新
 この計画を何年ごとに更新していくのか。また,更新のための検討組織について記す。

5 「読書バリアフリー計画の用語集」の作成

 計画で用いている用語の解説を付ける。

6 参考資料(例)

(1) 「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」
(2) 「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」(国の読書バリアフリー基本計画)
(3) 「著作権法(抜粋)」
(4) 都道府県立図書館障害者サービスの利用案内
(5) 都道府県内点字図書館の利用案内
(6) 障害者ICTサポートセンターの案内
(7) 「サピエ図書館」「国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービス」の案内

補足 市区町村が読書バリアフリー計画を策定する場合の留意点

 第1章で都道府県における読書バリアフリー計画策定で注意してほしいことを記載しているが,そこにある注意事項は第1章2「(5)都道府県内に政令指定都市が存在する場合の注意点」を除き市区町村にも当てはまる。
 しかし,第1章2(4)「地方自治体レベルで行うことと国レベルで行うことの区分け」にあるように,市区町村の読書バリアフリー計画では,地方自治体や地域の図書館の役割に加え,ネットワークを活用した視覚障害者等への直接サービス・個別支援に関することが中心になるものと思われる。
 そこで,ここでは特に市区町村レベルで計画策定をする場合の留意点を記載する。

(1) 計画策定のための体制作り(関係部局などとの連携)
 都道府県と同じく市区町村でも,地方自治体内の関係部局(教育・福祉など),学校(特別支援学校・学級など),障害者支援施設,高齢者施設,点字図書館,障害者の当事者団体,専門家・有識者等,地域の実情に合わせた構成員による検討組織における協議が求められる。
 市区町村では地方自治体の規模・地域により,点字図書館や,障害者の当事者団体などがない地方自治体もある。その場合は,これらの施設・団体の代わりとなるような方法(例:当事者団体がなければ,地域の障害当事者を構成員に含めるなど)を取り入れる。

(2)  計画実施のための連携協力
 上記(1)で挙げた組織・団体等とは,計画を実施していくにあたっても連携協力を行う。

(3) 当該市区町村の実情に合わせた計画の策定
 市区町村立図書館は住民と直接サービスを行う最前線の図書館である。そのため,身近にある図書館だからこそ行いやすい,各市区町村の実情に合わせた計画を策定する。
例:
① 自館で実施している障害者サービス(図書館利用に障害のある人々へのサービス)の具体的提示。特に,扱っている障害者サービス用資料,行っているさまざまなサービス,行っている支援,施設設備等を明らかにする。
② 障害者・高齢者福祉,包括支援センター*との連携
③ 地域の学校,学校図書館,特別支援学校・学級との連携
④ 地域の障害者・児施設,障害者団体との連携
⑤ 過疎地域,離島,山間部,豪雪地域など,アクセスが良くない地域においては,郵送,配本,自動車文庫等の,より積極的な活用
⑥ 地域への障害者サービスの広報の充実

(4) 当該市区町村の実情を踏まえた住民への直接サービス,個別支援を踏まえた計画の策定
例:
① デイジー・拡大読書器等の読書支援機器*に関する情報及び読書支援機器の操作説明
② 視覚障害者等が読みやすい資料の案内
③ 自宅への訪問・配本
④ 日常生活用具給付等事業等の福祉サービス,ICTサポート等のボランティア活動

(5) 視覚障害者等への読書支援についての人材育成
 策定した計画を実行していくには,視覚障害者等への読書支援を行える人材が必要である。
 読書バリアフリー計画には,視覚障害者等へのサービスのための研修への積極的な参加,人材の育成,障害当事者の雇用なども計画に取り入れる。
 デイジー等の資料を製作している図書館では,資料製作の充実(製作数,質の向上)等の目標も立てる。音訳者等の資料製作者の養成や育成についても明らかにする。

第3章 読書バリアフリー計画の周知,普及

1 対象

 策定した計画を推進するにあたり,地方自治体内部で共有することはもちろんであるが,次のような対象へ周知することが求められる。
(1) 住民(サービスの対象となる人,家族,ボランティアをはじめとする広く一般の市民)
 視覚障害者等のサービス対象となる人が,居住する地方自治体の読書バリアフリー計画の存在を知り,自分に役立つ情報であることを知ってもらうことが大切である。
 さらに,ネットワークを活用した図書館等のサービス*やアクセシブルな図書等を実際に利用することにより,現状の問題点や課題を考え,それは計画の評価や修正にもつながっていく。
 そのためには,サービス対象である人に計画の周知がなされることが必要であるが,当事者に直接周知するのは難しい点もあるため,合わせて広く一般の市民にも周知したい。
 広く住民に伝えることで,今現在サービスを必要としている人だけでなく,サービスを必要とする人の家族,友人,介護者等,本人と関係する人に伝えることにもつながる。
 さらには,将来,誰しも「視覚による表現の認識が困難な者」となるかもしれず,視覚障害者等への情報提供の存在を知っておくことは,将来の読書機会の喪失を回避することにもつながる。

(2) 域内市区町村
 読書バリアフリー計画の策定は,都道府県のみならず市区町村にも求められる。
 域内市区町村が計画を策定するにあたり,都道府県が策定した計画が参考となることから,研修や会議等を通じて,域内市区町村に都道府県の計画を周知することが重要であり,同時に市区町村に計画策定を働きかけることも求められる。

(3) 関連する団体
 教育・福祉・当事者団体・ボランティア等の関連する団体に周知することで,視覚障害者等につないでもらうことができる。
 また,関連団体の多くは,直接当事者とつながっているか,あるいは障害当事者への周知の手段を確立していることも多く,協力を得ることが欠かせない。

(4) 文部科学省・厚生労働省
 文部科学省及び厚生労働省では,地方自治体の計画策定を推進するため,両省のウェブサイトや主催する会議・研修会等において,地方自治体の策定状況や実際に策定した事例等の周知が図られている。

2 周知方法

 本章1に示した対象者への周知に当たって,特に必要と思われる周知方法に次のようなものがある。
 それぞれ協議会,関係部局,関係団体等と協働して行うことが望ましい。

(1) 各戸配布される県政だよりのような広報誌
 地方自治体の広報の基本であり,各戸配布されることで,広く住民に伝えることができる。
 音声版,点字版といった視覚による表現以外の媒体に変換されることも多い。
 計画策定時や更新時には,特集を組むなどして紹介するとより効果的である。

(2) ウェブページ・SNS
 作成に当たっては,アクセシビリティに配慮する必要がある。
 ICTの進化により画面の文字情報を自動的に音声化することが可能になってきているが,操作が困難であったり,そもそもウェブへのアクセスができない人がいることも忘れてはならない。

(3) 公立図書館
 公立図書館には,さまざまな障害者サービス用資料や,それを利用するための方法を広く市民に周知する役割がある。その中で,読書バリアフリー計画の存在や内容を案内する。さらに,より具体的な個別相談に応じられるようにしておく必要がある。

(4) 点字図書館(視覚障害者情報提供施設)
 点字図書館には多くの利用者(視覚障害者等)がいて,定期的に目録・利用案内等の情報を発信している。また,拡大・点字・録音等,利用者の希望に合わせた形での情報提供を行っている。
 そのような情報提供の機会に読書バリアフリー計画を合わせて掲載してもらう。

(5) 公立小・中学校,義務教育学校,中等教育学校,高等学校及び特別支援学校
 児童生徒においては,学校から伝える方法も有効である。特に,読書に困難のある子どもを最初に見つける可能性があるのが学校であることから,学校関係者にこの計画を周知して,そこから子どもや保護者への周知が期待される。

(6) 身近な医療機関等
 突発的な傷病による受診や検査で立ち寄るほかに,「視覚による表現の認識が困難な者」は,障害の原因となる疾患等で受診していることが考えられる。そこで,医療機関による案内やポスターの掲示なども有効である。

3 配慮すべきこと

 本施策の対象となる「視覚による表現の認識の認識が困難な者(視覚障害者等)」は,情報に触れる機会や方法が制限されている恐れがある。
 視覚障害者等への周知にあたっては,家族や支援者から伝わるということもあるが,自らが情報を得て理解できるようにすることが最も重要である。
 具体的な方法としては,障害特性に合わせ適切な媒体で情報を提供できるよう,通常の印刷版の他に,テキストデータや点訳データなどを準備するといったことがある。提供方法も,郵送・インターネットによる提供・データのメール添付等も行う。
 なお,家族や知人,福祉関係者から「直接話して伝える」ということも重要なので,関係者が広く知っていることは大切である。
 主な媒体においては,次の事柄に配慮する。
①ウェブページ:JIS規格「JIS X 8341-3:2016 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第三部:ウェブコンテンツ*」を参照して作成する。
②配布物:印刷資料においてはUDフォント*を活用するなどフォントを工夫し,文字間隔やコントラストにも配慮する。必要に応じて拡大文字版,音声版,点字版,やさしい日本語*版などを提供できるよう準備する。

指針 用語解説

用語解説 Word版
用語解説 PDF版
用語解説 テキスト版
用語解説 点字版

第1章 読書バリアフリー計画策定の考え方
1 読書バリアフリー法の特徴と計画策定の意義
(1) 読書バリアフリー法の特徴

「視覚障害者等」(p.5)
  読書バリアフリー法第2条で,「視覚障害,発達障害,肢体不自由その他の障害により,書籍(雑誌,新聞その他の刊行物を含む。)について,視覚による表現の認識が困難な者」と定義されている。
 具体的には,①視覚障害・高齢等で見えない見えにくい人,②発達障害等で目で見て内容が分からない人,③肢体不自由・いわゆる寝たきり状態等により物理的に本が利用できない人等をいう。
 著作権法第37条第3項でいう「視覚障害者等」もほぼ同じ。

「関係者協議会」(p.5)
 読書バリアフリー計画を策定し,その進捗状況の確認や計画更新のための検討組織。
主に自治体の関係部局(教育・福祉等)を事務局に,公立図書館・学校図書館・大学図書館・点字図書館・視覚障害者等の当事者団体・専門家・有識者等で構成される。

「サピエ図書館」(p.5)
 視覚障害者等のための総合情報ネットワークサービス。
 全国の点字図書館等が製作・所蔵する点字や録音資料等の書誌情報とそのデータ等を収録するオンライン図書館。資料の検索だけではなく,オンラインで貸出依頼を出したり,コンテンツをダウンロードできるものもある。図書館等の施設やボランティアには一部有料のサービスもあるが,視覚障害者等はすべて無料で利用できる。
 https://www.sapie.or.jp/cgi-bin/CN1WWW

「国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービス」(p.5)
   国立国会図書館が製作した学術文献の視覚障害者等用資料のデータ(デイジー・EPUB・プレーンテキストデータ等)と,全国の図書館等が製作し国立国会図書館が収集した視覚障害者等用のデータ(デイジー・点字・テキストデータ等)を,視覚障害者等の個人や図書館等がインターネットを通じて利用できるサービス。
   収録されているデータの内,デイジー及び点字データはサピエ図書館からも利用できる。
   https://www.ndl.go.jp/jp/library/supportvisual/supportvisual-10.html
  2023年3月より「国立国会図書館障害者用資料検索」(みなサーチ)から,デジタル化画像からOCRにより自動生成した未校正のテキストデータも利用できるようになった。
  https://mina.ndl.go.jp/

「障害者サービス用資料」(p.5)
 障害者の情報入手をサポートする資料。通常の活字の本や雑誌では利用できない人のために,録音図書,点字図書,大活字本,マルチメディアデイジー,布の絵本,LLブックなどが作られている。一部の資料は販売もされている。障害の状況は個々に違うため,それぞれの利用者にあった資料が求められている。

「アクセシブルな電子書籍」(p.5)
 障害者や高齢者等も利用できるように配慮された電子書籍のこと。
 具体的には,文字の拡大や,フォントの変更,縦書きや横書きへの対応等,利用者のニーズや特性に合わせた調整機能が必要。また,合成音声読み上げ対応や,点字表示への対応,文字の色や背景色の変更等の対応が求められている。

「アクセシブルなデータ」(p.5)
 障害者等が音声パソコンや障害者に配慮された機器類やアプリで利用できる形式のデータのこと。テキストデータが代表的。
 電子データでも,画像ベースで作られたものはそのままの状態では読めない人が多く存在する。
 電子データにテキスト等の文字データを付加することで,合成音声や点字表示,画面拡大機能等の支援機能で読み上げが可能となる。併せて文字列が付加されることにより,検索等が可能となり,利便性が向上する。

「端末機器等」(p.5)
 さまざまな形式の資料を利用するための機器類の総称。専用再生機,スマホ・タブレット・パソコンに再生アプリ等が入ったものをいう。また,パソコンやスマホの音声化・画面拡大機能も広い意味でこれに該当する。
 

2 読書バリアフリー計画策定で注意してほしいこと
(2)計画策定のための体制作り(教育部局と福祉部局の連携)

「特定書籍・特定電子書籍」(p.7)
 点字図書館や公立図書館などが,著作権法第37条第3項により製作した資料のこと。点字本や拡大写本のようなアナログなものと,デイジーやテキストデータのようなデジタル形式のものがある。

「障害者支援施設」(p.7)
 障害者に生活相談や助言,日常生活上の支援を行ったり,入所する障害者に介護を行う施設。

(3) 既存の実施内容のみをもって計画を構成しない

「先進地域」(p.8)
 一定レベルの障害者サービスを実施している館が多い地域。
障害者サービスの提供は不十分な図書館も多く,地域差も大きいのが現状である。そのため障害者サービスの基礎・基本を知り,着実に実践し実績もある館を知り参考にすることが必要である。


3 読書バリアフリー計画を策定するための体制
(1) 関係者協議会を設立する方法

「障害当事者」(p.10)
    障害者自身のこと。「当事者」「当事者団体」のように使われる。

「情報保障」(p.10)
 会議や研修会等で,障害者が障害のない者と同様の情報が得られる,及び発信できるように行なう配慮やサポートのこと。
 具体的には,聴覚障害者に対する手話通訳や要約筆記,視覚障害者に対しては資料の点訳や文字データの提供などが挙げられる。

「ウェブサイトや回答方法のアクセシビリティ」(p.11)
 パブリックコメントを行う場合に,その案内サイト自身のアクセシビリティを確保するのはもちろん,回答方法もいろいろな障害者を想定して準備しなくてはならない。回答フォームのアクセシビリティの確保,手紙・電話・ファックスによる回答なども用意する。


第2章 読書バリアフリー計画の内容
1 概要
(6) 地方自治体の現状

「ICTサポートセンター」(p.13)
 障害者等へのICT機器の利用機会の拡大や,活用能力の向上を図る総合的支援拠点。都道府県,指定都市及び中核市の福祉関係部署により設置が進められている。


2 具体的施策

「アクセシブルな書籍」(p.13)
 大活字本やLLブック,ピクトグラム,やさしい日本語などわかりやすく内容を伝える書籍を総称して表現した言葉。
 配慮の内容や工夫には様々あるが,手話付きの書籍や点字付きの書籍,点図付きの書籍など,市販された段階で何らかの配慮が行われた書籍を指す。

「著作権法第37条第3項」(p.13)
 著作権を制限して,視覚障害者等が自分に合った形の読書ができるように定めた規定。
 視覚障害者や発達障害などで目で読んでも理解ができない者,上肢障害などでページがめくれない者など,印刷物をそのままの状態では利用できない「視覚障害者等」が対象。
 点字図書館・公立図書館等の政令で定められた施設では,著作権者の許諾なしに音声や文字の拡大など障害者が使える形の資料を製作し,視覚障害者等に提供できる。
 ただし,同じ形式のものが販売されている場合は製作できないことになっている。


(5) 視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係)

「アクセシブルな電磁的記録(テキストデータ等)」(p.15)
 電子データで,障害者等が音声化等の支援技術を用いて利用できる形式のものをいう。
一般的に電子データとして普及しているPDF形式であっても,画像データのみのものと文字列を含むものに大別される。アクセシビリティが確保された電子データは画像ベースではなく,文字データを含むことが基本となる。
これにより,パソコンやスマートフォンの音声読み上げ機能を使用し読み上げさせたり,点字表示をさせることが可能となる。

「外国で製作されているアクセシブルな電子データ」(p.15)
 外国で作成された,日本でいう著作権法第37条3項に相当する法律による電子書籍。デイジー・ワード・テキストデータ等が含まれる。


(6) 端末機器等及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係)

「再生機器」(p.16)
 障害者等がデータ形式の資料を読む際に使用する機器。たとえば,デイジー再生機「プレクストーク」,再生アプリの入ったタブレット・パソコンなどが挙げられる。

「日常生活用具給付等事業」(p.16)
 障害者総合支援法により,市区町村が行う地域生活支援事業。障害者が日常生活をより円滑に行えるように,用具等を給付又は貸与するもの。対象となる障害の種類・等級,用具の種類,貸与年限等が定められている。たとえば,重度視覚障害者が安価でプレクストークを購入できる。

「障害者ICTサポート事業」(p.16)
 障害者に利用しやすい機器類を紹介し,その入手や使用を支援するさまざまな事業。パソコンやスマホの講習会,ICTサポートセンター,点字図書館等の施設による利用案内,パソコンボランティアによる個別支援等がある。


(7) 製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係)

「アクセシブルな電子データ製作者」(p.16)
 音声デイジー・マルチメディアデイジー・テキストデータ等のアクセシブルなデータを製作する人。デジタル録音,パソコンによるデータの編集などを行っている。


補足 市区町村が読書バリアフリー計画を策定する場合の留意点
(3) 当該市区町村の実情に合わせた計画の策定

「包括支援センター」(p.19)
 介護保険法に基づいて自治体が設置する施設。福祉関係の専門職員を配置し,高齢者などの暮らしを地域でサポートしている。


(4) 当該市区町村の実情を踏まえた住民への直接サービス,個別支援を踏まえた計画の策定

「読書支援機器」(p.19)
 拡大読書器,書籍の自動読み上げ機,デイジー再生機,点字ディスプレイなどが挙げられる。広い意味では,ルーペ,書見台,リーディングトラッカーなども含まれる。
 パソコンやスマートフォンに画面読み上げソフト等の専用アプリを入れる場合と,専用の再生機器を用いる方法がある
 近年ではスマートフォンを活用して,録音図書や電子書籍を利用できるようになってきている。スマートスピーカーによる読書も開発が進められている。


第3章 読書バリアフリー計画の周知,普及
1 対象
(1) 住民(サービスの対象となる人,家族,ボランティアをはじめとする広く一般の市民)

「ネットワークを活用した図書館等のサービス」(p.21)
 ここでいう「ネットワーク」は,「インターネット接続によるネットワーク」に限らず,図書館間や他機関との資料・情報の相互利用ネットワークを指す。


3 配慮すべきこと

「JIS規格「JIS X 8341-3:2016 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第三部:ウェブコンテンツ」(p.24)
 障害の有無に関わらず,誰もがウェブコンテンツを利用できるようにするための基準。使用している端末,ウェブブラウザ,支援技術などに関係なく,ウェブコンテンツを利用することができるようにすることを目的としている。そのためにウェブコンテンツが満たすべきアクセシビリティの品質基準として,レベルA,レベルAA,レベルAAAという3つのレベルの達成基準が定められている。
 https://waic.jp/knowledge/accessibility/#view-obtain-jis

「UDフォント」(p.24)
 ユニバーサルデザインのコンセプトに基づき,多くの人が見やすく,読みやすいように工夫されているフォント。

「やさしい日本語」(p.24)
 難しい言葉や表現をわかりやすく言い換えるなどして,相手に配慮した日本語のこと。外国にルーツのある人だけでなく,知的障害者や認知に障害のある人など,必要としている人は多い。
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