出版者から回収・差替えの要求があったとき

 出版物に問題があるとして、出版者から図書館へ該当出版物の回収・差換えを求める文書が届くことがあります。みなさんの図書館ではどのように対応しておられますか。
【基本的には】
 基本は、いったん出版されたものについて、それが出版されたという事実を記録するという図書館としての社会的・歴史的役割に即して、回収を要求された版を保持すること、修正版が提供される場合は修正版をも受け入れるという対応です。
 これまでの事例では、回収の理由をまったく示さないか、曖昧な表現でのみ示す場合も多くあります。「データに誤りがありましたので・・・」というような文書がついている場合が、これにあたります。何がどのように問題になっているのかは、図書館の責任として出版者に問い合わせて把握するようにしましょう。また、回収(返送)を条件に新版と差換えるといった手順を示される場合もありますが、図書館としての立場を出版者に説明し、回収には応じず新版も入手しましょう。
 回収の理由は、事実に反する記述、盗用や剽窃など著作権の侵害、「差別表現」によるものなど、さまざまな事例があります。名誉毀損やプライバシー侵害の訴えなどで何らかの司法判断が介在する場合もあります。司法判断があったとしても、図書館での扱いについての判断・命令でない場合は、図書館は独自に判断する必要があります。たとえば、『石に泳ぐ魚』(柳美里著、新潮社)では、単行本の発行禁止が最高裁判所で判示されました。しかし、図書館に対する閲覧停止については、認められていないので、各図書館による判断が求められました。
【やむを得ない場合】
 また、資料の回収に応じず所蔵を続けるものの利用制限せざるを得ないケースも想定されますが、その場合であっても、館ごとに定められた手順にしたがって検討し、適切に決定すること、制限は必要最小限とすること、理由を明らかにして公表すること、そして時期を見て再検討する必要があります。
【書誌情報を適切に】
 なお、差換え版が提供される場合、奥付の表示が旧版とまったく同じというケースもあります。出版者とのやりとりで時間的な余地がある場合、異なる版であれば異なる版表示・刷表示になるべきことを指摘しておくことや、奥付が同じであっても自館の書誌では区別した処理とすることなども想定しておく必要があります。たとえば、奥付が同じ場合でも、新しいものに「新版」と補記するという方法があります。書誌データは購入する図書館が多いですが、こうした細かい補完こそが、専門職の仕事と言えます。
【参考となる事例】
 判断に迷うときは、まず『「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」解説』(2004年 第2版)で、関連項目を確認してみてください。また、『図書館の自由に関する事例集』(2008年)、『図書館の自由に関する事例33選』(1997年)、『図書館の自由に関する全国公立図書館調査2011年 付・図書館の自由に関する事例2005~2011年』(2013年)を開いて類似事例を参照し、そして各館で検討していただきたいです。
 『図書館雑誌』連載の「こらむ・図書館の自由」でもいろいろな事例について考え方を紹介していますが、これは図書館の自由委員会のサイトにも掲載しています。ただし、できるだけ新しいものを参照していただきたいと思います。具体的には、次のものが参考になるものと思います。 2017/08/09 改訂版掲載
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