2023年4月1日 地方公共団体において「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画」を策定するための指針  用語解説 第1章 読書バリアフリー計画策定の考え方 1 読書バリアフリー法の特徴と計画策定の意義 (1) 読書バリアフリー法の特徴 「視覚障害者等」(p.5) 読書バリアフリー法第2条で,「視覚障害,発達障害,肢体不自由その他の障害により,書籍(雑誌,新聞その他の刊行物を含む。)について,視覚による表現の認識が困難な者」と定義されている。  具体的には,@視覚障害・高齢等で見えない見えにくい人,A発達障害等で目で見て内容が分からない人,B肢体不自由・いわゆる寝たきり状態等により物理的に本が利用できない人等をいう。  著作権法第37条第3項でいう「視覚障害者等」もほぼ同じ。 「関係者協議会」(p.5)  読書バリアフリー計画を策定し,その進捗状況の確認や計画更新のための検討組織。 主に自治体の関係部局(教育・福祉等)を事務局に,公立図書館・学校図書館・大学図書館・点字図書館・視覚障害者等の当事者団体・専門家・有識者等で構成される。 「サピエ図書館」(p.5)  視覚障害者等のための総合情報ネットワークサービス。  全国の点字図書館等が製作・所蔵する点字や録音資料等の書誌情報とそのデータ等を収録するオンライン図書館。資料の検索だけではなく,オンラインで貸出依頼を出したり,コンテンツをダウンロードできるものもある。図書館等の施設やボランティアには一部有料のサービスもあるが,視覚障害者等はすべて無料で利用できる。 https://www.sapie.or.jp/cgi-bin/CN1WWW 「国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービス」(p.5) 国立国会図書館が製作した学術文献の視覚障害者等用資料のデータ(デイジー・EPUB・プレーンテキストデータ等)と,全国の図書館等が製作し国立国会図書館が収集した視覚障害者等用のデータ(デイジー・点字・テキストデータ等)を,視覚障害者等の個人や図書館等がインターネットを通じて利用できるサービス。 収録されているデータの内,デイジー及び点字データはサピエ図書館からも利用できる。   https://www.ndl.go.jp/jp/library/supportvisual/supportvisual-10.html 2023年3月より「国立国会図書館障害者用資料検索」(みなサーチ)から,デジタル化画像からOCRにより自動生成した未校正のテキストデータも利用できるようになった。   https://mina.ndl.go.jp/ 「障害者サービス用資料」(p.5)  障害者の情報入手をサポートする資料。通常の活字の本や雑誌では利用できない人のために,録音図書,点字図書,大活字本,マルチメディアデイジー,布の絵本,LLブックなどが作られている。一部の資料は販売もされている。障害の状況は個々に違うため,それぞれの利用者にあった資料が求められている。 「アクセシブルな電子書籍」(p.5)  障害者や高齢者等も利用できるように配慮された電子書籍のこと。  具体的には,文字の拡大や,フォントの変更,縦書きや横書きへの対応等,利用者のニーズや特性に合わせた調整機能が必要。また,合成音声読み上げ対応や,点字表示への対応,文字の色や背景色の変更等の対応が求められている。 「アクセシブルなデータ」(p.5)  障害者等が音声パソコンや障害者に配慮された機器類やアプリで利用できる形式のデータのこと。テキストデータが代表的。  電子データでも,画像ベースで作られたものはそのままの状態では読めない人が多く存在する。  電子データにテキスト等の文字データを付加することで,合成音声や点字表示,画面拡大機能等の支援機能で読み上げが可能となる。併せて文字列が付加されることにより,検索等が可能となり,利便性が向上する。 「端末機器等」(p.5) さまざまな形式の資料を利用するための機器類の総称。専用再生機,スマホ・タブレット・パソコンに再生アプリ等が入ったものをいう。また,パソコンやスマホの音声化・画面拡大機能も広い意味でこれに該当する。   2 読書バリアフリー計画策定で注意してほしいこと (2)計画策定のための体制作り(教育部局と福祉部局の連携) 「特定書籍・特定電子書籍」(p.7)  点字図書館や公立図書館などが,著作権法第37条第3項により製作した資料のこと。点字本や拡大写本のようなアナログなものと,デイジーやテキストデータのようなデジタル形式のものがある。 「障害者支援施設」(p.7)  障害者に生活相談や助言,日常生活上の支援を行ったり,入所する障害者に介護を行う施設。 (3) 既存の実施内容のみをもって計画を構成しない 「先進地域」(p.8)  一定レベルの障害者サービスを実施している館が多い地域。 障害者サービスの提供は不十分な図書館も多く,地域差も大きいのが現状である。そのため障害者サービスの基礎・基本を知り,着実に実践し実績もある館を知り参考にすることが必要である。 3 読書バリアフリー計画を策定するための体制 (1) 関係者協議会を設立する方法 「障害当事者」(p.10)  障害者自身のこと。「当事者」「当事者団体」のように使われる。 「情報保障」(p.10)  会議や研修会等で,障害者が障害のない者と同様の情報が得られる,及び発信できるように行なう配慮やサポートのこと。  具体的には,聴覚障害者に対する手話通訳や要約筆記,視覚障害者に対しては資料の点訳や文字データの提供などが挙げられる。 「ウェブサイトや回答方法のアクセシビリティ」(p.11)  パブリックコメントを行う場合に,その案内サイト自身のアクセシビリティを確保するのはもちろん,回答方法もいろいろな障害者を想定して準備しなくてはならない。回答フォームのアクセシビリティの確保,手紙・電話・ファックスによる回答なども用意する。 第2章 読書バリアフリー計画の内容 1 概要 (6) 地方自治体の現状 「ICTサポートセンター」(p.13)  障害者等へのICT機器の利用機会の拡大や,活用能力の向上を図る総合的支援拠点。都道府県,指定都市及び中核市の福祉関係部署により設置が進められている。 2 具体的施策 「アクセシブルな書籍」(p.13)  大活字本やLLブック,ピクトグラム,やさしい日本語などわかりやすく内容を伝える書籍を総称して表現した言葉。  配慮の内容や工夫には様々あるが,手話付きの書籍や点字付きの書籍,点図付きの書籍など,市販された段階で何らかの配慮が行われた書籍を指す。 「著作権法第37条第3項」(p.13)  著作権を制限して,視覚障害者等が自分に合った形の読書ができるように定めた規定。  視覚障害者や発達障害などで目で読んでも理解ができない者,上肢障害などでページがめくれない者など,印刷物をそのままの状態では利用できない「視覚障害者等」が対象。  点字図書館・公立図書館等の政令で定められた施設では,著作権者の許諾なしに音声や文字の拡大など障害者が使える形の資料を製作し,視覚障害者等に提供できる。  ただし,同じ形式のものが販売されている場合は製作できないことになっている。 (5) 視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係) 「アクセシブルな電磁的記録(テキストデータ等)」(p.15)  電子データで,障害者等が音声化等の支援技術を用いて利用できる形式のものをいう。 一般的に電子データとして普及しているPDF形式であっても,画像データのみのものと文字列を含むものに大別される。アクセシビリティが確保された電子データは画像ベースではなく,文字データを含むことが基本となる。 これにより,パソコンやスマートフォンの音声読み上げ機能を使用し読み上げさせたり,点字表示をさせることが可能となる。 「外国で製作されているアクセシブルな電子データ」(p.15)  外国で作成された,日本でいう著作権法第37条3項に相当する法律による電子書籍。デイジー・ワード・テキストデータ等が含まれる。 (6) 端末機器等及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係) 「再生機器」(p.16)  障害者等がデータ形式の資料を読む際に使用する機器。たとえば,デイジー再生機「プレクストーク」,再生アプリの入ったタブレット・パソコンなどが挙げられる。 「日常生活用具給付等事業」(p.16)  障害者総合支援法により,市区町村が行う地域生活支援事業。障害者が日常生活をより円滑に行えるように,用具等を給付又は貸与するもの。対象となる障害の種類・等級,用具の種類,貸与年限等が定められている。たとえば,重度視覚障害者が安価でプレクストークを購入できる。 「障害者ICTサポート事業」(p.16)  障害者に利用しやすい機器類を紹介し,その入手や使用を支援するさまざまな事業。パソコンやスマホの講習会,ICTサポートセンター,点字図書館等の施設による利用案内,パソコンボランティアによる個別支援等がある。 (7) 製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) 「アクセシブルな電子データ製作者」(p.16)  音声デイジー・マルチメディアデイジー・テキストデータ等のアクセシブルなデータを製作する人。デジタル録音,パソコンによるデータの編集などを行っている。 補足 市区町村が読書バリアフリー計画を策定する場合の留意点 (3) 当該市区町村の実情に合わせた計画の策定 「包括支援センター」(p.19)  介護保険法に基づいて自治体が設置する施設。福祉関係の専門職員を配置し,高齢者などの暮らしを地域でサポートしている。 (4) 当該市区町村の実情を踏まえた住民への直接サービス,個別支援を踏まえた計画の策定 「読書支援機器」(p.19)  拡大読書器,書籍の自動読み上げ機,デイジー再生機,点字ディスプレイなどが挙げられる。広い意味では,ルーペ,書見台,リーディングトラッカーなども含まれる。  パソコンやスマートフォンに画面読み上げソフト等の専用アプリを入れる場合と,専用の再生機器を用いる方法がある  近年ではスマートフォンを活用して,録音図書や電子書籍を利用できるようになってきている。スマートスピーカーによる読書も開発が進められている。 第3章 読書バリアフリー計画の周知,普及 1 対象 (1) 住民(サービスの対象となる人,家族,ボランティアをはじめとする広く一般の市民) 「ネットワークを活用した図書館等のサービス」(p.21)  ここでいう「ネットワーク」は,「インターネット接続によるネットワーク」に限らず,図書館間や他機関との資料・情報の相互利用ネットワークを指す。 3 配慮すべきこと 「JIS規格「JIS X 8341-3:2016 高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス−第三部:ウェブコンテンツ」(p.24)  障害の有無に関わらず,誰もがウェブコンテンツを利用できるようにするための基準。使用している端末,ウェブブラウザ,支援技術などに関係なく,ウェブコンテンツを利用することができるようにすることを目的としている。そのためにウェブコンテンツが満たすべきアクセシビリティの品質基準として,レベルA,レベルAA,レベルAAAという3つのレベルの達成基準が定められている。 https://waic.jp/knowledge/accessibility/#view-obtain-jis 「UDフォント」(p.24)  ユニバーサルデザインのコンセプトに基づき,多くの人が見やすく,読みやすいように工夫されているフォント。 「やさしい日本語」(p.24)  難しい言葉や表現をわかりやすく言い換えるなどして,相手に配慮した日本語のこと。外国にルーツのある人だけでなく,知的障害者や認知に障害のある人など,必要としている人は多い。