新型コロナウイルス並びに令和2年7月豪雨により甚大な被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げますとともに、早期に健やな日常が戻りますよう祈念申し上げます。
 
新型コロナウイルス関連情報のページ 


図書館災害対策委員会のページ
東日本大震災対策委員会のページ

 

平成30年7月豪雨(西日本豪雨)による公共図書館の被害状況

平成30年7月豪雨(西日本豪雨)による公共図書館の被害状況

日本図書館協会 図書館災害対策委員会

6月末から降り続いた多量の雨により,7月6日から7日にかけて,広範に洪水被害が発生し,崖崩れが多発した。200人を超す人命が失われ,図書館でも浸水被害が発生した。
図書館災害対策委員会は,被害が大きかった県の県立図書館と連絡をとり,公共図書館の被害の情報を集めた。7月24日時点の情報では,図書に被害が及んだ館が複数あり,長期閉館せざるを得ない重篤な被害が発生した。委員会は,現地を訪問する必要があると判断し,委員3名と臨時委員1名,それに国立国会図書館職員1名が加わり,岡山県と愛媛県を訪問した。
以下は,図書館の被害情報の抜粋と,訪問した図書館の状況報告である。なお,大学・学校の図書館に調査が及んでいないこと,訪問先に限りがあることなど充分な調査とはいえず,ご理解願うと共に,情報提供の協力をお願いする。

◆床上浸水等の被害があった図書館
〈岡山県〉総社市昭和公民館  膝の高さまで浸水
     倉敷市立真備図書館         8/9訪問(下記)
     高梁市立図書館BM 冠水し積載約1,500冊のうち約900冊を水損
〈愛媛県〉宇和島市立簡野道明記念吉田町図書館 8/10訪問(下記)
     大洲市立図書館           8/10訪問(下記)
     大洲市立図書館 肱川分館        8/10訪問(下記)
〈京都府〉福知山市立大江分館  床上約50cm浸水 約2,000冊水損

◆訪問した各図書館に共通する状況(床上10cm浸水の大洲市立図書館を除く)
6日夜間から7日朝にかけて浸水しているため,閉館中の被災であった。直後の対応は,水が引かない,道路の分断,市民ケアの優先等から,迅速な状況確認や資料レスキュー,支援の要請は困難であった。濁流には泥・有機物が混ざるため,程度の差はあるものの泥・臭気が残る。本は水に没すると水を吸って重くなり膨張する。そのため,書架から取り出すことが困難になり,搬出は重労働となる。木製の書架は水や泥汚れに弱く,廃棄される割合が高い。紙・石膏ボード・合板・壁クロス等は水に対し劣化しやすく,汚れと水分からカビが生えやすい。電気設備は隠蔽部が多く,精密で漏電リスクが高いため,早期再開の障害となる。再開には,前途を考慮した施設の災害復旧や失われた図書を戻すことが必要になるが,訪問時点では,被災した資料や書架等を屋外に出すという第一段階の片付けが終わり,寄贈本を受け入れる場はまだない状態であった。

(岡山県)
◆倉敷市立真備図書館
真備図書館は,市の北西部に位置し,市町合併より前に真備町の図書館として平成12年に建てられた。円形の開架スペースと横溝正史文庫が特徴である。真備地区には,高梁川・小田川が流れ,小田川とその支流の堤防が複数か所で決壊し,最深5mを越す冠水被害があった。
図書館敷地は約1.5m周囲より高かったが,1階床から3.5mの高さまで浸水し,2階床レベルに至った。1階の開架・閉架エリアに置かれた本は全て泥水に没し,大半は外に搬出された。館職員・市内他館職員が作業にあたり,県立・民間有志の応援を得た。手動集密書架は動かすことができず,集密書架に収められた本は,水を吸って膨張し重くなり取り出せないままであった。(8/24搬出完了)郷土資料や横溝正史文庫を含む12万7千冊(在架の全てと貸出中の多くが被災している)の資料ほとんどを処分する予定。公文書と数冊の郷土資料は修復するため,外部に預けられた。
2000人規模のホールが隣あう敷地が廃棄物の集積場となっており,被災した図書館の什器・資料は外部に山積み状態であった。内部は,壁・天井材に発生したカビ,天井材の落下や劣化,床材の汚損,ガラスの割れ,電気設備の損傷等,甚大なダメージがあり,今後の再開への見通しは立っていない。
施設概要:鉄筋コンクリート造2階建 平成12年7月に現在地開館 延1,693㎡

<被災直後の図書館内部>倉敷市立図書館提供
 
                 1階 真備図書館閲覧室
<8/9訪問時> 委員撮影
 
       1階 真備図書館閲覧室           屋外に積まれた被災図書(真備図書館)

(愛媛県)
◆宇和島市立簡野道明記念吉田町図書館
館名にある簡野道明(1865-1938)は吉田町出身の漢学者で,吉田町図書館の創立へ貢献した。敷地が吉田藩の陣屋跡地であることから,建物は京都の二条城を模している。平成17年に宇和島市に合併した。
川に面した立地であるが,7日未明に山側から押し寄せた水が半地下構造の1階に流れ込み,床上約1.2mまで冠水した。7万4千冊の蔵書(『日本の図書館』より)のうち,1階の開架・閉架の下部約2/3が水損し廃棄した。その冊数はまだカウントできていない。書架上部にあり被災しなかった本は県立図書館の応援・指導のもと2階に移した。郷土資料は3階の閉架部分に保管してあったため被害はなかった。2階は照明もクーラーも使用できるが,1階の電気はほとんど使えない。
被災資料は,地元高校等のボランティアの協力を得て屋外に運び出し,7月下旬から8月上旬頃に産業廃棄物として処分した。建物は大がかりな改修が必要な状況である。

施設概要:鉄筋コンクリート造3階建 昭和61年に現在地開館 延847㎡

<被災直後>宇和島市立中央図書館提供
 
      1階閲覧室     簡野道明記念吉田町図書館    屋外に運び出した被災図書

<8/10訪問時>委員撮影
 
       1階閲覧室   簡野道明記念吉田町図書館     2階に避難した図書

◆大洲市立図書館
大洲市の図書館は4館体制で,東若宮に本館がある。7日午前11時頃雨水が館内に入り,床上10cm浸水した。駐車場は約50cmの冠水であった。数人の職員が浸水を警戒して早朝より自主的に出勤し,最下段の図書を上にあげる対処を開始し,最終で約6人の職員が懸命に作業した。そのため図書の水損はなかった。
一方、浸水からの復旧作業で苦労したことは、固定家具等の隙間に入り込んだきめ細かな泥の除去・乾燥,床下の設備ピットやエレベータピットに入り込んだ水の汲み出しであった。被害としては,フローリングの床は,ムクリなどの変形・不具合が多く生じたが,テープでマーキングして様子を見ている。事務室の二重床は廃棄することになり,電気系統の本復旧はまだである。床より低いガレージ内にあった公用車は使えなくなった。
8月1日に仮再開したが,事務室が仮スペースで狭く,床や家具等の新たな不具合の発生を警戒している。

施設概要:鉄筋コンクリート造2階建 平成21年1月に現在地開館 延2,226㎡

<被災直後>大洲市立図書館提供
 
     1階閲覧室 床上浸水10㎝  大洲市立図書館   1階正面玄関ホール 床上浸水10㎝
 
<8/10訪問時>委員撮影
 
         1階閲覧室                 1階正面玄関ホール 

◆大洲市立図書館肱川分館
市中心部から南東の肱川に沿う山あいの分館で,1階の歯科診療所あとを図書館とした転用施設。施設内には肱川保健センター・公民館が併設されている。すぐ上流に鹿野川ダムがあり,さらに上流に野村ダム(西予市)がある。敷地は川に面しており,流れから約6m高い。7日朝6時20分から野村ダムの放流が急増し,下流の鹿野川ダムでも7時35分より放流が急増して肱川が氾濫した。
水は2階の膝の高さに達し,1階にある図書館は完全に水没した。壁掛け時計は8時25分で止まっていた。警戒にあたっていた分館長は,隣接する公民館の3階に避難した。水の引きは早かったが,泥と臭気が残り,郷土資料を含む蔵書17,000冊と什器備品は全て廃棄された。片付けには、分館職員・本館職員があたり,地元中高生ボランティアの協力を得た。今後の再開時期は未定である。

施設概要:鉄筋コンクリート造2階建の1階  118㎡

<被災直後>大洲市立図書館提供

   大洲市立図書館肱川分館1階閲覧室

<8/10訪問時>委員撮影

   大洲市立図書館肱川分館1階閲覧室

訪問日程等
1 期間 2018年8月9日(木)・10日(金)
2 訪問図書館等
  (1) 岡山市立京山中学校(8月9日(木) 8:30~)
(2) 岡山県立図書館(8月9日(木) 11:10~)
(3) 倉敷市立中央図書館(8月9日(木)14:00~)
(4) 倉敷市立真備図書館(8月9日(木)16:00~)
(5) 宇和島市立中央図書館(8月10日(金)9:00~)
(6) 宇和島市立簡野道明記念吉田町図書館(8月10日(金)10:10~)
(7) 大洲市立図書館(8月10日(金)11:30~)
(8) 大洲市立図書館肱川分館(8月10日(金)13:10~)
3 被災状況調査員 計5名
(1) 図書館災害対策委員 川島宏・矢崎省三・鈴木隆
(2) 加藤孔敬(名取市図書館)
(3) 佐々木紫乃(国立国会図書館)


トップに戻る
公益社団法人日本図書館協会
〒104-0033 東京都中央区新川1-11-14
TEL:03-3523-0811 FAX:03-3523-0841