捜査機関から「照会」があったとき

2011年に実施した「図書館の自由に関する全国公立図書館調査」で、捜査機関からの貸出記録等の照会を受けたことのある館は192館(945館のうち20.3%)館でした。うち提供した館が113館(58.9%)となっています。貸出記録だけでなく、登録の事実や登録年月日、最終貸出年月日などについての照会もあるでしょう。このようなとき、図書館の自由の観点から確認しておくとよいことを以下にまとめてみました。
  1. 『「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」解説 第2版』より、「第3 図書館は利用者の秘密を守る」(34頁~)の項目を参照すると、利用事実も利用者のプライバシーに属することであって、「法令との関係」(39頁)の記述より、”刑事訴訟法第197条第2項「捜査に関し公務所への照会」ができることを規定している”が、”照会に応じなかった場合の罰則規定はない”ことがわかります。 単純に言えば、「警察からの照会に緊急性が認められるか否か図書館で判断する。緊急性がなければ、照会状による提供は断る。警察はそれでも情報がほしければ、捜索差押令状を裁判所に請求して出してくる(任意捜査から強制捜査に)。」ということになります。
  2. 個人情報保護法制との関連では、利用目的外の第三者に開示する場合は本人の承諾が必要ですが、「法令に基づく」開示請求については本人承諾不要となっています。 総務省の解説(よくある質問とその回答 5 個人情報の適正な取扱いについて http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/question05.html#5-7) によると、「利用目的以外の利用・提供をし得るとするものであり、本項により利用・提供が義務付けられるものではありません。実際に利用・提供することの適否については、それぞれの法令の趣旨に沿って適切に判断される必要があります。」としています。 合理的な理由(正当な理由)がないときは照会に応じる義務があると解されているが、公務員の守秘義務は正当な理由となります。この「職務上知り得た秘密」は、「公務員がひろくその担当する職務を行ううえでしることのできた行政の客体側の個人的秘密をも含む」(渡辺重雄さんが『知る自由の保障と図書館』102頁で通説文献を紹介)とされています。
  3. 一方、警察庁の内部通達ではプライバシー保護と逆方向の考え方を示していますが、これについての考え方を米田渉氏が「捜査関係事項照会について」(こらむ図書館の自由)『図書館雑誌』vol.109,no7.(2015年7月)で示しています。
  4. これまでの事例を振り返ると、照会書による捜査が利用者のプライバシー保護と衝突した初めてのケースは、「警視庁の係官による都立中央図書館の複写申込書閲覧」(『図書館の自由に関する事例33選』149~152頁)でした。『図書館は利用者の秘密を守る』(図書館と自由第9集)の中では、渡辺重男「図書館利用者のプライバシーの権利-図書館に対する捜査機関の介入との関連で」(100頁~)、福地明人「刑事訴訟法第197条二項をめぐって」(126頁~)、久岡康成「刑事司法と「利用者の秘密を守る」図書館の責務-捜査への協力は不可避か」(135頁~)の項目で、捜査機関からの照会について詳しく論じています。また、地下鉄サリン事件に係る国立国会図書館利用記録押収事件をきっかけに開催したセミナー記録「図書館利用者の秘密と犯罪捜査」を『現代の図書館』Vol.34 No.1(1996.3)の40~57頁に掲載しています。 『図書館と法』の第10章「図書館とプライバシーの保護」(176~178頁)にも、簡潔な解説がありますのでご確認ください。
  5. 『図書館雑誌』連載の「こらむ・図書館の自由」ではいろいろな事例を紹介しています。3.で最新の1篇を転載しましたが、こらむは図書館の自由委員会のサイトにも掲載しています。関連こらむを拾ってみました。
『図書館の自由』89号(2015年8月)掲載記事より
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