令和6年9月に能登半島で発生した豪雨について
この度、能登半島地震の被災地にて大雨により亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。また、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げ、一日も早く平穏な日々に戻る事をご祈念申し上げます。
日本図書館協会及び図書館災害対策委員会も微力ではありますが、支援を模索し、対応してまいります。被災情報並びにお困り事がありましたら、メールにてご一報いただければ幸いです。
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『日本会議の研究』(扶桑社)の出版差し止め仮処分決定について

経過(2017年1月12日掲載)

菅野完『日本会議の研究』(扶桑社 2016.5)について、東京地裁は2017年1月6日に販売差し止めを命じる仮処分決定を出した。宗教団体「生長の家」元幹部の男性が、真実ではなく社会的評価を低下させたと申し立てた6ヶ所のうち1ヶ所(約2行)について、この部分を削除しない限り販売しないよう扶桑社に命じた。

同書については、著者がツイッターで、発売日に「日本会議・椛島有三」氏から「直ちに出版の差し止めを求める」旨の「申し入れ書」が扶桑社に届いたと述べているが、日本会議は裁判所へ出版差し止めを求めておらず、新書としてはベストセラーとなっている。

東京新聞の記事によると、「扶桑社は「当社の主張がほぼ認められた決定ではあるが、一部削除を求められたことは誠に遺憾だ」とコメントした。自社にある在庫は出荷しないが、既に書店や出版取次会社に配送された本は回収しない方針。」という。
(「ベストセラー「日本会議の研究」 異例の出版差し止め決定」『東京新聞』2017年1月7日 朝刊 
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201701/CK2017010702000127.html

扶桑社は、「当面の措置として、指摘個所(第六章(289頁)の36字)を抹消した修正版を販売」する旨を2017年1月11日付けで告知している。
(「『日本会議の研究』(菅野完著)の修正版販売について」
http://www.fusosha.co.jp/news/info/info_article/224


考え方

今回の出版差し止め仮処分は、図書館に対する閲覧制限や回収の命令ではないことから、図書館としての法的な対応責任はなく、特別の扱いを考慮する必要はない。


なお、「公刊物の表現に名誉毀損、プライバシー侵害の可能性があると思われる場合に、図書館が提供制限を行うことがあり得る」要件としては、以下を既に示している。
①名誉毀損、プライバシー侵害を理由とする頒布差し止めの司法判断(仮処分を含む)があり、②図書館にその判断が通知され、③申立人(被害者)が図書館に提供制限を求めてきたとき
(<参考意見>『文藝春秋』(1998年3月号)の記事について 1998年2月13日
http://www.jla.or.jp/portals/0/html/jiyu/bunshun.html

実際に被害者から対応が求められた事例としては、『図書館の自由に関する事例集』(日本図書館協会 2008)86~91ページ掲載「事例10 秋田県の地域雑誌『KEN』提供禁止要求」がある。


出版差し止め仮処分の事例としては、『図書館の自由に関する事例集』137~141ページ掲載「事例18 『週刊文春』出版差止め事件」がある。
これは、2004年の『週刊文春』3月25日号(3月17日発行)について、東京地裁が2004年3月16日に販売差し止めの仮処分命令を決定し,19日には文芸春秋の保全異議申し立ても却下、その後東京高裁は文春側の申立てを認めて3月31日に処分取消しの決定をした。処分取り消しまでの間も、裁判所の決定は図書館に対するものではないので通常どおり提供したところも多かった。一方、該当ページを袋綴じなどで閲覧できないよう加工したり、カウンターでの保管や複写禁止にしたところもあったが、これは自由宣言の第2資料提供の自由にかかわる。


関連記事

・「日本会議本の出版差し止め」『共同通信』2017.01.06. 19:36
https://this.kiji.is/190048285732718075
・「「日本会議の研究」販売差し止め 地裁が扶桑社に命令」『朝日新聞デジタル』2016.01.06. 20:02
http://www.asahi.com/articles/ASK1662PPK16UTIL04Z.html
・「ベストセラー「日本会議の研究」に販売差し止め命令」『日本経済新聞』・2017.01.06. 20:04
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG06H8Q_W7A100C1CC1000/
・「「日本会議の研究」販売差し止め 東京地裁が仮処分決定」『産経ニュース』2017.1.6 19:46
http://www.sankei.com/affairs/news/170106/afr1701060025-n1.html
・「ベストセラー「日本会議の研究」名誉毀損 出版差し止め 東京地裁」『神戸新聞』2017.01.07.
・(解説)「出版差し止め 影響力の大きさ考慮 東京地裁 異例の決定/出版元と著者「極めて遺憾」/表現の自由の問題に詳しい梓沢和幸弁護士の話「表現の自由に大きな危機」」『神戸新聞』2017.01.07.
・「ベストセラー「日本会議の研究」 異例の出版差し止め決定」『東京新聞』2017.01.07.
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201701/CK2017010702000127.html
・「ベストセラー 「日本会議の研究」販売禁止の仮処分決定」『毎日新聞』2017.01.07. 07:10
http://mainichi.jp/articles/20170107/k00/00m/040/116000c
・「「日本会議の研究」販売差し止め 書籍差し止め請求の容認ケース少なく 背景に言論の自由」『産経ニュース』2017.01.07. 08.27 
http://www.sankei.com/affairs/news/170107/afr1701070007-n1.html
・「『日本会議の研究』(菅野完著)の修正版販売について」
http://www.fusosha.co.jp/news/info/info_article/224
・「日本会議の研究 修正版販売へ 差し止め決定受け扶桑社」『毎日新聞』2017.01.11. 23:04
http://mainichi.jp/articles/20170112/k00/00m/040/113000c
・(社説)「出版差し止め 表現の自由の理解欠く」『朝日新聞』2017.01.12.
・「「日本会議の研究」修正版で」『朝日新聞』2016.01.12.
・「扶桑社 差し止め本の修正版販売へ 「日本会議の研究」」『神戸新聞』2017.01.12.

(新聞記事等へのリンク確認はいずれも2017年1月12日)


【追補(2017年4月11日掲載)】
東京地裁の『日本会議の研究』販売差し止め仮処分決定に対して、日本出版社協議会が1月13日、一般社団法人日本書籍出版協会と一般社団法人日本雑誌協会が1月27日にそれぞれ抗議声明を公表した。
扶桑社は、これを不服として保全異議を申し立ていたが、東京地裁は3月31日、「記述が真実でないと断じるには疑念が残る」などとして仮処分決定を取り消した。

※関連記事

・日本出版者協議会「東京地裁による『日本会議の研究』販売差し止め決定に抗議する」2017.01.16.
http://shuppankyo.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-493b.html
・「日本会議の研究の販売差し止めに抗議 書籍出版協会など」『朝日新聞デジタル』2017.01.27. 18:50
http://digital.asahi.com/articles/ASK1W4RSRK1WUCVL01S.html
・日本書籍出版協会 出版の自由と責任に関する委員会、日本雑誌協会 人権・言論特別委員会「東京地方裁判所による『日本会議の研究』出版差し止め命令に抗議する」2017.1.27.
http://www.j-magazine.or.jp/doc/20170127.pdf
・「『日本会議の研究』東京地裁仮処分決定の取消しについて」『扶桑社』2017.03.31. 
www.fusosha.co.jp/news/info/info_article/241
・「菅野完氏著「日本会議の研究」 販売差し止め仮処分決定を取り消し 東京地裁」『産経ニュース』2017.3.31 20:16 
http://www.sankei.com/affairs/news/170331/afr1703310047-n1.html 
・「日本会議の研究」販売認める=差し止め仮処分取り消し-東京地裁 『時事ドットコムニュース』2017. 03.31. 21:41
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017033101382&g=soc
(この項、新聞記事等へのリンク確認はいずれも2017年4月11日)

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