全国図書館大会兵庫大会 資料保存分科会ハイライト

中田孝信


 今年は「マイクロ化とデジタル化-「利用のための資料保存」を支えるパートナー-」をテーマに、のべ93名の参加者を迎えて開催した。

 まず基調報告として安江明夫氏(元国会図書館副館長・資料保存研究家)が「代替保存-過去、現在、未来」と題して、従来からのconservation(修復)だけでなく、収集・廃棄、施設管理、図書館教育等マネジメントも包括するpreservation(保存管理)も考える必要がある。対象が多様化する中で技術を選択し計画的に実施しなければならない。代替保存は現在と将来の利用を保障するために不可欠なパートナーである、と話された。

 続いて、事例報告1として島村祐美子氏(神戸大学附属図書館)が「神戸大学附属図書館『震災文庫』について」と題して話された。阪神淡路大震災の中心地にある大学として関係資料を収集・公開・デジタルアーカイブ化している。13年が経過して運営・収集活動のあり方等に見直しが必要であるとともに、メタデータの多言語化等他機関との連携を進める必要がある、と報告された。

 次に事例報告2として小島浩之氏(東京大学経済学部資料室室長代理・助手)が「大学図書館における企業資料の保存:山一證券資料を中心に」と題して話された。企業資料は公的保存機関が無く企業資料室は不安定なため保存できるのは学術・研究機関以外にない。東京大学経済学部図書館では倒産した山一證券の内部資料を寄贈依頼・受け入れ整理し、公表の方法として管理面・保存面から媒体変換が妥当と判断して出版社によるマイクロ化を実施した。この資料を利用した研究が進展することを期待したい、との内容だった。

 午後に入って事例報告3として西村豪氏(尼崎市立地域研究史料館)が「尼崎市立地域研究史料館における写真資料の保存・活用とボランティア-広報写真の史料館受入を通じて-」と題して、市広報課撮影の戦後から現在に至る24枚撮り8000本分の写真が移管され、劣化を止めるためにさまざまな対策を試みた経験を話された。

 次に岡野康寛氏(四国工業写真株式会社)が「デジタル・マイクロフィルムのリスクマネージメント」と題して解説された。マイクロ化・デジタル化の選択は、それぞれの持つ利点・欠点を知った上で将来を見据えた結論を出す必要がある、また代替資料についても原本同様に保管環境を整える必要がある、という内容だった。

 続いて特別報告として小堀淳子氏(京都大学経済学研究科・経済学部図書室)が「京都大学における資料保存の取り組み」と題して話された。大小50余に分かれていた図書館がまとまり保存環境アンケートを実施、資料保存環境整備部会を立ち上げマニュアル作成等取り組んでいる。今年度もマイクロフィルムの劣化調査等様々な取り組みを予定している、という内容だった。

 ワークショップ1として中尾康朗氏(国会図書館関西館電子図書館課主査)が「図書館資料をデジタル化する」と題して講義された。目的・対象・範囲・作業期間・手法・作業主体」等を明確にし、データは適切なメタデータと結びつけ組織化を行い、作製後もその見読性の維持のため記録媒体の保管管理が重要である、と講義された。

 最後に、ワークショップ2として安江明夫氏(前出)が「マイクロフィルムの健康診断-A‐Dストリップを用いて」と題して、実物を回覧し参加者に触れてもらいながら、フィルムの劣化度を検知できるADストリップの使用法とその結果を対策につなげる方法などを話された。

(なかた たかのぶ・資料保存委員会委員長)

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