試案説明会1(2010年)

「日本十進分類法 (NDC) 新訂10版」試案説明会 (中間報告) の概要
                                 那須雅熙 ◆はじめに  日本図書館協会分類委員会 (以下, 委員会) は, 2009年11月10日に日図協研修室で 「日本十進分類法 (NDC) 新訂10版」 試案説明会 (中間報告) を開催した。 関東周 辺の大学図書館, 公共図書館の職員および研究者を中心に41名の参加者があった。  委員会は, NDC の維持管理のほかに改訂作業を主要な任務としている。 1995年8月に 石山洋委員長のもとで新訂9版が刊行された後, 2001年7月に金中利和氏を委員長とし て発足した委員会でその見直し作業が開始された。 2004年4月には改訂方針1) を提示 し, それに基づき改訂作業を行ってきた。 新訂10版の刊行は, 当初, 2008年8月を 目指したが, 諸般の事情で遅れが発生し, 現在まだ道半ばの状態にある。 これまで, 0類, 2類, 3類, 7類について 『図書館雑誌』2) , 委員会ウェブサイト上で 試案を発表してきている。  またその間, NDC が現在どのような使用状況にあり, どのような要望や意見がある のかを正確に認識する必要があり, 2008年4月に, 全国の公共図書館, 大学図書館を 対象にした 「図書の分類に関する調査」 を行い, 現況を把握した3) 。 2009年10月 30日には, 全国図書館大会の第9分科会 「現代の図書館分類法を考える」 において, 図書館をめぐる社会的環境や情報環境が激変するなかで, 図書館分類法はどのような 役割機能をもち, 将来どのような活用法があるのかについて論議する機会をもった4) 。  このような背景のもとで, これまで検討してきた内容を中間的に報告し, 広く意見 を徴し, 今後の改訂作業に資するため説明会を開催した。 ◆説明会の概要  最初に, 金中前委員長から10版作成の基本方針と改訂作業の進捗について, 報告を 行った。  次いで, 0類 (007を除く), 2類, 3類, 7類の試案の概要が担当の各委員か ら説明され, 意見交換が行われた。 質問, 意見は NDC の構造に係わる理論的なもの から, 具体的な項目の注記まで, 広範囲にわたった。 各類に対する主な質問意見は, 最後に行った全体の質疑応答意見交換で出されたものも含めて大略, 次のとおりであ る。 (1) 0類  例えば015.9には特定の利用者に対する各種サービスが展開されているが, 複合主題 に対しては交差分類が起きる。 全体に公共図書館とそれ以外の各種図書館の業務につ いての整理が不十分で, 注記も不足している。 (2) 2類  考古学に付した注記は, 歴史補助学全体に及ぶ問題に敷衍されるのではないか。 エ ジプトのビザンチン帝国やローマ支配時代の注記は, 占領期の歴史の取り扱いとして 一般的か。 各地のユダヤ人の歴史について地理区分が必要ではないか。 221は, 韓国 と北朝鮮の南北に分けられないか。 (3) 3類  NDC は観点分類表として, 320のように法律という事象でなく, 法律学といった学 問分野を優先する分類表にすべきではないか。 形式区分の01と02の適用と縮約形の問 題の解決が課題である。 339.47の注記は 「ここには…収める」 でなく 「…はここに 収める」 の形がいいのではないか。 (4) 7類  726.1にみられるような縮約形は, 階層構造を乱すことになるので慎重に検討すべき である。 また漫画の作品と作品論の分類に矛盾が見られる。 特定主題の絵本は各主題 の下に分類することを注記すべきか。  続いて, 委員会で懸案となっている二つの課題について説明を行った。 まず基本 方針にある, 情報科学 (007) と情報工学 (548) の統合について, 二つの案が 提示された。 以下のように007/008に統合する A 案と, 547/548に統合する B 案で ある。 〈A 案〉  「007 情報科学 (Information science)」 の項目名を 「情報学 (Informatics)」 とし, 主に007.6に分類されていた情報処理, データ処理, ソフトウェアに関する ものは新設する 「008 情報処理. データ処理」 に収める。 〈B 案〉  「547 通信工学. 電気通信」 および 「548 情報工学」 の空き番号を活用して, データ通信, インターネット, 情報セキュリティなど, 主としてコンピュータネッ トワークに関わる技術は547.48に, データ処理, ソフトウェア, インターネットコ ミュニティなど, データ処理に関わる技術は548.4に収める。  二つの案にはそれぞれ長短があり, 547/548に統合する方がよいという意見が1件 あったほかは, 明確な意見表明はなかった。 引き続き各方面の意見を求め, 慎重 な検討を要するところである。  次いで, これも基本方針に明示されている 「NDCMRDF9の本表と相関索引の統合 による分類典拠ファイルの作成」 および 「基本件名標目表 (BSH) 4版, 国立国 会図書館件名標目表 (NDLSH) などの用語分類記号の取り込み」 に関する検討状況 について報告した。 諸般の事情から 「MRDF9および NDLSH 等の名辞をもとにした 10版作成作業用データベース」 および 「相関索引を拡張した分類作業者用データベ ース」 の作成提供へと計画を変更したこと, 後者が実現すれば, 利用者に多大な 便益をもたらす可能性があることが示された。 索引語に BSH や NDLSH を追加し, CD-ROM 版にして10版に添付することが予定されている。 これに対し, CD-ROM 化 は評価するが, 相関索引だけでなく本表も一体化してほしいという意見が出された。  最後の全体の質疑応答意見交換では, すでに紹介したものを除くと, 「記号の保 全と改訂履歴の記録化」, 「図書館情報学教育場面での利用への要望」, 「相関索 引の充実と本表の電子化」, 「増加する蔵書に対応し桁数の伸長も視野に入れた階 層関係の徹底と分析合成型の導入」 等の重要な意見が述べられた。 またその後も, メールを通じていくつかの意見が寄せられている。 ◆今後の課題  これまでの貴重なご意見やご指摘を勘案し, 現時点で, 委員会が取り組むべき課 題をまとめると, 以下のようになろう。 (1) 論理性の確保  階層構造の破綻を回避し, 形式区分の適用の理論を明確にして表の論理性を確保 する。 すでに導入されている縮約形等については, 注記の徹底等により実用性との 協調を図る。 (2) 各類の改訂事項  改訂方針に依拠するとともに, 主題分析を厳密に行い, その後の時代や環境の変 化に対応する必要がある。 強調すべき点, 改善すべき点をさらに精査する。 (3) NDC の提供方法  NDC のデジタルデータ提供について, 今後もさらなる検討が必要である。 「NDC MRDF9」 の本表と相関索引を統合し, これに改訂データと 「BSH4版」 および 「NDLSH」 を取り込み, 最終的に 「NDCMRDF10」 を作成し提供することを目指し ている。 技術的には, 進展の著しいウェブ環境における新たな情報システムに対 応した提供方法や, 著作権や頒布などの法制度的, 財政的な諸課題の検討を進める。 (4) 館種への対応  全国の各種図書館で使用される標準分類法として, 各種図書館の利用に適ったき め細かい対応を考慮する。 (5) 解説の充実  解説をさらに充実し, 表の理論と使用法についてわかりやすく説明を行う。  これらの課題に対処するとともに, 未着手の部分についても早期に検討を行い, 速やかに10版を刊行できるよう努力する所存である。 今後ともより多くの方々のご 協力, ご支援をお願いしたい。 注 1)金中利和 「日本十進分類法新訂第10版の作成について-JLA 分類委員会の改訂方 針」 『図書館雑誌』 98,2004,p.218-219. 2)「日本十進分類法第10版試案の概要」 『図書館雑誌』 102,102,103,103. 3)JLA 分類委員会 「「図書の分類に関する調査」 結果報告-平成19年度 「日本の 図書館」 ミニ付帯調査」 本誌 p.166-169. また, 『現代の図書館』 2010年6月号 に大曲俊雄 「わが国における図書分類表の使用状況- 「図書の分類に関する調査」 結果より」 を掲載予定。 4)田村由紀子 「第9分科会-現代の図書館分類法を考える」 『図書館雑誌』 104, 2010,p.24.           (なす まさき:JLA 分類委員会委員長, 聖徳大学人文学部)
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