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図書館資料の収集・提供の原則について(確認)
2015年6月29日
公益社団法人 日本図書館協会
図書館の自由委員会
委員長 西河内 靖泰
1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件の加害者である元少年が書いたとされる手記『絶歌』が,2015年6月11日に太田出版より刊行されました。
この書籍に関して,出版の是非や図書館での取り扱いをめぐって様々な報道がなされ,日本図書館協会へ図書館での取り扱いについて問い合わせが多く来ています。
図書館の自由委員会は,日本図書館協会がその普及に力を注いできた「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」(以下,「宣言」)に基づいて,図書館の資料収集・提供の原則について以下に確認します。
1.「宣言」は,収集の制限を首肯していません。
- (参考)
「宣言」主文の第1で「図書館は資料収集の自由を有する」とし,その副文では次のようにのべています。
「1.図書館は,国民の知る自由を保障する機関として,国民のあらゆる資料要求にこたえなければならない。
2.図書館は,自らの責任において作成した収集方針にもとづき資料の選択および収集を行う。その際,
(1)多様な,対立する意見のある問題については,それぞれの観点に立つ資料を幅広く収集する。
(2)著者の思想的,宗教的,党派的立場にとらわれて,その著作を排除することはしない。
(3)図書館員の個人的な関心や好みによって選択をしない。
(4)個人・組織・団体からの圧力や干渉によって収集の自由を放棄したり,紛糾をおそれて自己規制したりはしない。
(5)寄贈資料の受入にあたっても同様である。図書館の収集した資料がどのような思想や主張をもっていようとも,それを図書館および図書館員が支持することを意味するものではない。
(以下,略)」
2.提供について,「宣言」は,提供制限は行わないという原則を示した上で,例外的に提供制限があり得る3つの制限項目(注1)を示し,さらに提供制限を行うことがあり得る3つの要件(注2)を確認しています。
- (注1)
「宣言」主文の第2で「図書館は資料提供の自由を有する」とし,その副文で次のようにのべています。
「1.国民の知る自由を保障するため,すべての図書館資料は,原則として国民の自由な利用に供されるべきである。
図書館は,正当な理由がないかぎり,ある種の資料を特別扱いしたり,資料の内容に手を加えたり,書架から撤去したり,廃棄したりはしない。
提供の自由は,次の場合にかぎって制限されることがある。これらの制限は,極力限定して適用し,時期を経て再検討されるべきものである。
(1)人権またはプライバシーを侵害するもの
(2)わいせつ出版物であるとの判決が確定したもの
(3)寄贈または寄託資料のうち,寄贈者または寄託者が公開を否とする非公刊資料(以下,略)」
(注2)
私たちは,図書館が例外的に提供制限を行うことがあり得るのは,次の要件すべてに該当するときであるとの見解を,神戸連続児童殺傷事件の加害少年の供述調書を掲載した雑誌の取り扱いについて述べた<参考意見>(別掲)で示しています。
(1) 頒布差し止めの司法判断があること
(2) そのことが図書館に通知されていること
(3) 被害者(債権者)が図書館に対して提供制限を求めた時であること。
各図書館におかれては,以上に示した原則に照らして日頃から主体的にご判断いただいているものと考えますが,本件は上記の提供制限要件には該当しないことを念のため申し添えます。
●<参考意見>『文藝春秋』(1998年3月号)の記事について 1998年2月13日
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