日本図書館協会 > 図書館の自由委員会 > 声明・見解等  > 『フォーカス』(1997.7.9号)の少年法第61条に係わる記事の取り扱いについて(見解) 

「『フォーカス』『週刊新潮』問題,図書館界にも波紋
 −客疑者少年の顔写真掲載の雑誌について日図協が見解を表明−

  神戸の小学生殺害事件の容疑者として6月28日逮捕された中学生の顔写真を, 新潮社の写真週刊誌『フォーカス』が掲載,7月2日に発売された。 7月3日発売の『週刊新潮』にも目の部分を隠した顔写真が掲載された。 各コンビニエンス・ストアや大手の書店では,少年法61条に違反する行為と見て販売を取りやめたところが多かった。 しかし,一方でそのまま販売しただけでなく,『フォーカス』売り切れ後も客の要望にこたえて,関連ページをコピーして販売した書店もあった。その後,2誌に広告を掲載していた企業が新潮社の出版物への広告を取り止める動きが出ている。灰谷健次郎氏は新潮社に抗議し,版権をすべて引き上げると発表した。
 
 図書館においてもその取り扱いに苦慮するところが多く, 目図協事務局や図書館の自由に関する調査委員会に問い合わせが相次いだ。 「図書館の自由に関する宣言」に照らして各図書館で対応を決めるべきことであるが, 日図協ではこの事態を全く放置するわけにもゆかず,別掲のような見解を表明し,全国の図書館に伝えた。
 
 各図書館における対応はさまざまで,返品/廃棄/購入して非公開/該当ページ非公開/2部購入して1部保存, 1部制限つき提供,などである。なお,部分非公開の方法には,該当ページに紙をはったり,切り取ったりと, 問題のあるものがある。該当ページを除いたコピーの提供については,『フオ−カス』側の許諾が得られなかったという。
 
 もっとも週刊誌は市町村図書館ではおおむね短期保存なので,保存をあまり考慮する必要はないのでは ないかという思惑もからんでいるのであろう。また,非公開の期限はいつまでかという疑問も出されている。

(三苫正勝(みとま まさかつ):図書館の自由に関する調査委員会全国委員会委員長)

 
『フォーカス』(1997.7.9号)の少年法第61条に係わる記事の取り扱いについて(見解)   平成9年7月4日 

社団法人日本図書館協会

1.写真週刊誌『フオ−カス』(1997.7.9号)掲載の,14歳の殺人罪等容疑者の正面顔写真は,少年の保護・更生をはかる少年法第61条に抵触する可能性が高い。

2.すべての図書館資料は,原則として国民の自由な利用に供されるべきであるが,上記の表現は,提供の自由が制限されることがあるとする「図書館の自由に関する宣言」第2−1−(1)「人権またはプライバシーを侵害するもの」に該当すると考えられる。

3.この対応にあたっては,「宣言」第2−2(資料を保存する責任)に留意する。当該誌の損壊・紛失等のないよう配慮が必要である。また,受入・保存を差し控えるような対応或いは原資料に図書館が手を加えることについては,首肯しがたい。

4.『週刊新潮』についても上記に準ずるものと考える。

5,各図書館におかれては,以上を踏まえての対応をお願いする。

「図書館雑誌」 Vol.91,No.8(1997.8)に掲載

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