日本図書館協会図書館の自由委員会声明・見解等特定秘密保護法案に関する声明


特定秘密保護法案に関する声明

2013年12月5日

日本図書館協会 図書館の自由委員会
委員長 西河内 靖泰

 政府が「安全保障」に関する情報で「特に秘匿することが必要であるも の」を「特定秘密」として指定し、取扱者の適正評価の実施や漏洩した場合の罰則などを定めた「特定秘密の保護に関する法律案」が185回臨時国会・衆議院で11月26日採決され、現在、参議院で審議が進められています。

 日本図書館協会は、「図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする。」(『図書館の自由に関する宣言』日本図書館協会1979年総会決議)として、その実践に努めてきました。この認識は、わが国のみならず世界の図書館及び情報専門機関に共有されています。
 『ユネスコ公共図書館宣言』(1994年11月採択)は、「人間にとっての基本的価値である社会と個人の自由、繁栄および発展は、十分に情報を得ている市民が、その民主的権利を行使し、社会において積極的な役割を果たす能力によって、はじめて達成される。/地域において知識を得る窓口である公共図書館は、個人および社会集団の生涯学習、独自の意思決定および文化的発展のための基本的条件を提供する。」としています。
 国際図書館連盟(IFLA)は、『透明性、適正な政治、政治腐敗からの自由に関する声明』(2008年12月3日)で「図書館と情報サービス機関は情報資料とアクセスを提供し、市民の知識を拡げ、市民の議論と討論を豊かにすることによって、適正な政治に貢献する。図書館員は最も正確で偏らない教育的、科学的、技術的、社会的に重要な情報を利用可能にすることに捧げられた、本質的に透明性ある機関にいるのであると断言する。/透明性は、適正な政治の基礎であり、基本的な社会的倫理を衰弱させ、法の支配を脅かし、政治制度への信頼を損なわせる政治腐敗との戦いにおける第一歩である。」と述べています。

 本法案については、これまでの国会審議のなかでも報道、言論、出版はじめ表現の自由を制約・萎縮させ、国民の知る権利を侵害するおそれが指摘されています。利用者の求める資料・情報を収集・探索・提供する図書館サービスは表現の自由が保障されてこそ十全に行えるのであって、私たちは、本法案が表現の自由を制約・萎縮することを懸念します。
 さらに、本法案は特定秘密に指定された資料・情報の公表を禁じていることから、特定秘密とは知らずに収集・探索し、利用者に提供する図書館・専門情報機関のサービス自体が、現行の守秘義務を定める各種法令より重く処罰されることが懸念されます。それらの資料・情報を図書館に求め、受領した利用者にも処罰の危険が及びかねません。
 わが国司法は、「公立図書館は、住民に対して思想,意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする公的な場」(最高裁判決.平成17年7月14日)であるとして、図書館と図書館員に対して「公正に図書館資料を取り扱うべき職務上の義務」の実践を求めています。本法案が成立することにより、資料・情報を公正に収集・探索・提供する「公的な場」である図書館は「公正に図書館資料を取り扱うべき職務上の義務」を果たすことが阻害され、歪められかねません。

 本法案が提起され論議されたことにより、国と地方自治体が作成・収集・保有する情報の重要性について、広く関心が喚起されてきたことは喜ばしいことです。これを契機として、本法案が慎重審議され、市民が必要とするあらゆる情報にアクセスできる環境が整備されることを心から期待します。


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