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2005年2月1日

図書館は読書の秘密を守ることについて(ご理解の要請)

(社)日本図書館協会

 図書館が、利用者の読書記録を第三者に伝える、というシーンを描いたテレビドラマが少なからずあります。このようなことは本来あり得ないことで、ドラマ制作者に図書館の役割が理解されておらず、視聴者に誤解を招くものとして見過ごしのできないことです。

 最近では、2004年12月8日に「テレビ朝日」が放映したドラマ「相棒」の中で、図書館職員が犯罪捜査のために訪れた警察官を事務室に案内し、指定された人物の氏名とその借出図書名を表示するパソコン画面を検索して見せるというシーンがありました。

 図書館は思想、知識、情報の媒体である図書、雑誌、新聞等を収集、保存し、市民に提供することをもって国民の知る自由に寄与しております。図書館の蔵書を読むことは、憲法が保障する思想、良心の自由、表現の自由を構成する内面の自由に属します。したがって図書館において読書の秘密が守られるためには、第三者の関与や公的権力の介入は厳しく排されねばなりません。

 日本図書館協会は、1979年総会で「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」を決議し、「図書館は利用者の秘密を守る」ことを基本原理の一つとして表明し、「図書館員の倫理綱領」(1980年総会決議)において、「図書館員は、国民の読書の自由を保障するために、資料や施設の提供を通じて知りえた利用者の個人名や資料名等をさまざまな圧力や干渉に屈して明かしたり、または不注意に漏らすなど、利用者のプライバシーを侵す行為をしてはならない。このことは、図書館活動に従事するすべての人びとに課せられた責務である。」と確認しています。図書館が読書の秘密を守るべきことは、近年、国と自治体が公務員の守秘義務に加え、法令で個人情報の保護を定める以前から、世界の図書館界が合意し、実践してきたものです。犯罪捜査目的といえども厳密な法手続を欠くならば例外にはなりません。

 上記ドラマと同様のことが2003年11月19日「テレビ東京」が放映した「夏樹静子サスペンス」にもありました。図書館への信頼を損ねたという指摘を受けて「テレビ東京」は謝罪し、再放送ではそのシーンをカットしました。これまでも他のテレビ局において、図書館が警察官を含む第三者に図書館の利用記録を提示するというドラマがしばしば放映され、実名をだされた図書館と自治体の抗議や当協会の要請に応じて、内容の改変や釈明、謝罪などの対応がなされてきました。
今回、「テレビ朝日」は釈明と遺憾の意を表明しましたが、このように同様の事例が繰り返されるのは、問題の理解や対応の経験が当該番組の制作当事者にとどまっている状況の結果であると受け止めざるを得ません。

 つきましては、図書館は利用者の読書の秘密を守ることにつき、貴社としてご認識をいただき、番組制作方針に位置づけるべく周知徹底されることを要請いたします。

 そのための研修、説明等の機会を設けていただけるならば、当協会としてご協力したいと考えております。

以上

※第5段落1行目で日付を2000年11月19日と誤記していました。正しくは2003年11月19日ですので、訂正します(2018年8月10日)。