日本図書館協会図書館の自由委員会図書館の自由に関する宣言知る自由を保障するための図書館の任務に関する声明

知る自由を保障するための図書館の任務に関する声明

1979年5月30日 社団法人 日本図書館協会


 日本図書館協会は,1975年以来,委員会を設置して,憲法で保障されている表現の自由を守るために図書館のとるべき態度と方針について検討をすすめておりましたが,本日,東京で開催された本協会の定期総会において,別添の「図書館の自由に関する宣言1979年改訂」が可決承認されました。

 わたくしたち図書館員は,いまから25年前,1954年5月に開催された全国図書館大会において,「図書館の自由に関する宣言」を採択しました。それは,「知る自由」を権利として有する国民に,収集した図書,視聴覚資料,その他の資料と集会室等の施設を提供することが図書館の重要な任務であるとの認識に立って
 1.図書館は資料収集の自由を有する
 2.図書館は資料提供の自由を有する
 3.図書館はすべての不当な検閲に反対する
という三か条と,これらの自由が侵されようとするとき,団結して,あくまで自由を守るという内容のものでありました。

 その後十数年間は,図書館の自由を侵害するような事件が顕在化することが少なく,そのために宣言の維持発展をはかる日常活動を怠ったことを,今となっては反省するのであります。しかし,1970年代に入って,図書館の振興がはかられ,図書館を利用する住民が増加し,図書館という存在が従前より身近なものになるにつれて,図書館の自由にかかわる事件がたびたび表面化するようになったのであります。発行所から寄贈図書の回収を要求されたり,あるいは警察から利用事実の報告を求められたり,あるいは問題のある資料の提供について図書館の責任が問われるなどの事件が,あいついで発生し,その一部は新聞にも報道されて,今日にいたっております。

 図書館が収集し保存している図書その他の資料を,たといその一部でも破棄することは,過去から受けつぎ後の世代に伝えるべき文化的遺産を滅却することを意味し,あるいは,自分たちと異なる思想の存在を否定するような行為は民主主義の根幹をゆるがすものであって,図書館は,これらの干渉に対して,あくまで冷静に慎重に対処しなければならないと,わたくしたちは考えます。民主主義は寛容の精神によって支えられており,不寛容は人びとの自由と平和を危険におとしいれるものであります。しかしながら,国民の学習権と知る自由を保障し,文化的遺産を後世に伝えるという図書館の使命を守り貫くことは,単に図書館員だけの責任と能力で果たせることではなく,ひろく社会の同意と支持を得なければ達成されないことは,歴史にてらしても明らかであります。

 日本図書館協会では,図書館の自由をめぐる昨今の状況を十分に考慮し,そこで得た貴重な経験をいかしながら,1954年の「図書館の自由に関する宣言」をより充実した内容のものに改訂し,図書館運営の基本的な指針として採択しました。ついては,この新しい宣言を公表して,わたくしたちの決意を表明するとともに,国民全体の奉仕者であり民主主義を擁護する一機関としての図書館の立場に対する深い理解と強力な支援を願うものであります。


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