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「図書館の自由に関する宣言」

   A STATEMENT ON INTELLECTUAL FREEDOM IN LIBRARIES

採択 1954.5 改訂 1979.5

 

移動展示 なんでも読める 自由に読める!?

日本図書館協会 図書館の自由委員会 2005年作成


<なんでも読める 自由に読める!?>

 1954年5月、日本図書館協会は「図書館の自由に関する宣言」を採択し、1979年にはその改訂が採択されました。

図書館は、だれもが日々の暮らしや仕事、学習、楽しみのために必要な資料を自由に入手し、利用できるようにする機関です。基本的人権としての国民の「知る自由」を保障することが図書館の重要な任務であり、また責任であることをこの「宣言」はひろく社会にアッピールし、その実現に努めることを約束するものです。

近年、図書館をめぐる環境は大きく変化し、利用者の増加につれて社会との関わりも強くなっています。資料提供の自由と人権やプライバシーの保護とが真っ向から対立するような事例がマスコミに大きく取り上げられ、図書館の自由への社会的関心が高まっています。

このような機会に、移動展示〈なんでも読める 自由に読める!?>を開催し、事例を紹介することにより、ひろく利用者・市民に図書館の自由の原則について知ってもらい、理解と認識を深めていきたいと考えています。

なお、移動展示の開催等についてのお問い合わせ、疑問や要望がございましたら、日本図書館協会「図書館の自由委員会」までご連絡ください。

 社団法人 日本図書館協会


図書館の自由に関する宣言 1979年改訂 (主文)

図書館は基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする。

この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実践する。

第1 図書館は資料収集の自由を有する。
第2 図書館は資料提供の自由を有する。
第3 図書館は利用者の秘密を守る。
第4 図書館はすべての検閲に反対する。

図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。

事例パネルより(抄)

小林多喜二「蟹工船」の削除部分

 この作品は、蟹工船の労働者たちのストライキと海軍の水兵による弾圧を描いているが、クライマックスは、「此の頁全部削除」となっている。治安維持法下の官憲が、真実の暴露を恐れて、通常の伏せ字「××」ではなく、「一頁全部削除」という戦前の検閲でも異例の手段を用いた言論弾圧事件である。


『ピノキオの冒険』

1976年、この作品に「障がい者差別」の表現が含まれているので、図書館から排除してほしいという要望が障がい者団体から名古屋市図書館にあった。図書館は、いったん書架からとりのぞいたが、いい本か悪い本かは、読者ひとりひとりが判断することであるとして、ふたたび本を書架に戻し、自由に利用できるようにした。このときの経験が、ピノキオ検討三原則として、以後の侵害事件にひとつの教訓を与えた。


名前の残る貸出しカード

 いつ、だれが、なにを借りたかという利用者のプライバシーに属することがらは、他人の目に触れては困る。「宣言」では、「図書館が利用者の読書事実、利用事実を外部にもらさない」となっている。しかし、学校図書館などでは、まだ、他人に読書記録がわかる貸出方式をとっているところが多い。このため、ブラウン式、逆ブラウン式やコンピュータの利用によって、利用者の秘密をまもることが望まれる。


「サンボ」と「さんぼ」

1988年、広く子どもたちに親しまれてきた絵本「ちびくろサンボ」が、サンボの名やイラストが黒人差別にあたるとして、出版社が相次いで絶版にした。図書館での対応はさまざまであるが、出版社の過剰反応に大きな論議を呼んだ。さらに、長野市が冬季オリンピック誘致にむけて、市内の学校、図書館等に対し、同書の廃棄・焼却を指示していた。最近では異版数種が出版されるなど、まだまだ論議は続いている。


大量の利用記録押収

 1995年4月6日地下鉄サリン事件捜査に関連して、警視庁は捜査令状にもとづき、国立国会図書館の1年余の利用記録数十万件を押収した。結局、2ヶ月後に利用申込書3枚複写申し込み書7枚を残して、すべて返還された。憲法第35条の規定では、令状に具体的に場所と押収物を明らかにしていなければならないはずであるにもかかわらず、関係のない数十万人のプライバシーを部外にさらした結果になった。


『フォーカス』から『文春』へ

 少年事件の顔写真を掲載した『フォーカス』『週刊新潮』(1997年7月号)、少年の検事調書を掲載した『文藝春秋』(1998年3月)等、大衆誌による少年の人権・プライバシー関連問題により、図書館の資料収集・提供の自由について、マスコミ報道の対象となり社会問題化した。


完全自殺マニュアル

 1994年、鳥取県で『完全自殺マニュアル』を手引きに中学生が自殺したことにより、図書館での閲覧制限の動きが広がった。親の承諾を条件とする貸出し、あるいは『ぼくたちの完全自殺マニュアル』とセット貸出しなどが行われ、論議を呼んだ。さらに有害図書指定の動きも見られる。


「図書館の自由」に関する略年表

1954.4  「図書館の自由に関する宣言」採択

1959.4  文部省の青少年向き図書選定について反対運動起きる

1964.8  東京都「青少年健全育成条例」を公布

1967.6  TV<特別機動捜査隊>シナリオ訂正事件

1970.5  JLA『市民の図書館』刊行

1973.8  県立山口図書館図書抜き取り放置事件

     10 『目黒区史』回収問題

1974.4  「東村山市立図書館設置条例」に守秘義務を規定

1975.3  JLA「図書館の自由に関する調査委員会」発足

     11 名古屋市図書館で「ピノキオ」を回収

1979.5  「図書館の自由に関する宣言」の改訂

1981.3  『長野市史考』の取り扱いをめぐって論議

     11 愛知県立高校図書館で禁書事件

1983.8  品川区立図書館で区議が蔵書の偏向を指摘

1984.3  世田谷区議会で団体貸出用図書をめぐって論議

     4  広島県立図書館蔵書破棄事件

     5  JLA「貸出業務へのコンピュータ導入に伴う個人情報の保護基準」を決定

1986.8  岐阜県各務原市少女誘拐事件で図書館捜査

1987.11 富山県立図書館の図録『86富山の美術』の利用制限

1988.11 「3億円事件」の実名報道記事の閲覧制限

     12 『ちびくろサンボ』絶版・利用制限相次ぐ

1990.10 神奈川県で「個人情報保護条例」施行につき、学校図書館の貸出し方式問われる

1993.1  マドンナ写真集『Sex』の刊行 ヌードを理由とする利用制限

     12 遠藤周作著『こんな治療法もある』絶版・回収

1994.4  NHK「ぴあの」問題

     8  松本市立図書館『みどりの刺青』貸出中止

1995.5  国立国会図書館サリン事件に関連して利用記録数十万人分押収

     8  『タイ買春読本』について静岡市立図書館への廃棄要求問題

1996.4  三重県立図書館同和図書閉架措置問題

     7  秋田県立図書館、雑誌『KEN』閲覧停止申し立て受ける

     10 徳島県『富岡町志』問題

1997.7  少年法を理由として『フォーカス』の利用制限相次ぐ

     7  「福岡県青少年健全育成条例」改正。インターネット規制含む

     10 岡山県『完全自殺マニュアル』など有害図書指定

1998.3  福岡次郎著『三島由紀夫―剣と寒紅』仮処分決定・回収

1999.8  柳美里 「石に泳ぐ魚」図書出版差止東京地裁判決

2000.10 雑誌「クロワッサン」差別表現事件・横浜市で利用制限

2001.1  『タイ買春読本』など静岡県で有害図書指定

     2  『ハリー・ポッターと秘密の部屋』差別表現事件

     3  「東京都青少年の健全な育成に関する条例」改定  

     3 JLA「青少年社会環境対策基本法(案)についての見解」表明 

2002.1   東大和市立図書館『新潮45』提供制限問題、東京高裁判決

     4   千葉県船橋市西図書館蔵書廃棄問題

     9  柳美里「石に泳ぐ魚」図書出版差止最高裁判決

2003.8   住基ネット本格稼働と図書館利用カードの問題

2004.3   『週刊文春』3月25日号の出版差し止め、東京高裁で処分取り消し

2005.7   船橋市西図書館蔵書廃棄事件最高裁判決、高裁差し戻し

2006.4   船橋市西図書館蔵書廃棄事件高裁判決確定