新委員長・新委員就任のご挨拶

委員長就任のご挨拶

野末俊比古

今年度,委員長を拝命しました野末です。よろしくお願いいたします。
本来ならば,私以外の適任の委員,とりわけ図書館界で諸経験豊かな方に就任をお願いすべきところかと思いますが,当委員会委員の経験年数については,現在,私が最長であることから,お引き受けした次第です。

私の本務は,大学教員です。現在,青山学院大学教育人間科学部において,主として図書館情報学関連の科目を担当しております。研究については,大学院時代から15年以上,「図書館利用教育・情報リテラシー教育」をテーマとしております。

当委員会が20周年を迎える節目の時期に重責を担うこととなり,少々緊張いたしております。このメールマガジンをお読みの方々をはじめ,委員OB・OGを含め,ご関係の皆様のご協力を得ながら,委員会のめざす図書館利用教育の普及・啓発に向けて,微力ながら貢献していきたいと思っております。改めましてどうぞよろしくお願いいたします。

委員就任のご挨拶

福田博同

新委員の福田です。利用教育と言うとなぜか「絵解き」を思い浮かべます。
平凡社『世界大百科事典』CD-ROM版によると,承平元(931)年に重明親王が貞観寺に参詣の際,寺僧から「釈迦八相図」を絵解かれた記事が現存する最古の記事で,出典は『李部(りほう)王記』(醍醐寺雑事記所収),とのことです。

「絵解き」こと案内僧や学芸員と同様の役割を持つ図書館員はレファレンスワークとして,記事の信憑性を調査し,現物を見て結果を知りながら調査方法を利用者へ伝えます。しかし,それは旧来の方法でしょう。
世界的に電子図書館を構築しつつある現在,図書館員でなくとも以下のことまでもwebで調査できます。

googleで「醍醐寺 重明親王」を検索→「吏部王記 - Googleブック検索結果」から米田雄介,吉岡真之編『吏部王記』の本文の大部分が表示され→承平元年の項に「9.30醍醐天皇の山陵に参拝,勧修寺・貞観寺を巡拝す[醍],,,」の記事を発見。

「李部王記」と「吏部王記」の違いを確認するため,googleで「李部王記 wiki」と検索→wikipediaの「吏部王記」に,複数書名の存在と,典拠の古代学協会編や米田・吉岡編の『吏部王記』刊本も示されます。
wikipediaの現時点の記事が正しいか,東京大学史料編纂所の「大日本史料総合データベース」で「重明」を検索→『本要記』保安二年一一月二十一日の条に「,,,兵部禅門云、李部王ハ重明親王也,,,」とあり原本もTiff画像で見ることができます。

写本の所蔵はwebcatで筑波大学を確認。webで『醍醐寺雑事記』は塙保己一の『群書類従』25輯「雑部」(刊本)をも確認します。そこには「延長九年(承平元年九月三十日)に「貞観寺ニ入リ,,,覲楹繒八相,成道寺座主説其意,,,」の記事があり,どうやら『世界大百科事典』記事の典拠がここだと分かります。

種々の方法で他の情報をも確認した後,wikipediaに入り,「絵解き」を共同入力で,より詳しいレファレンス原本も作れます。

こんな現代に,塙検校がおられたら「Tiff画像は典拠として必要ですが,国内の重要な図書は全てテキストデータとしても保存し,我々も「聞く」ことができるようしよう!」と実践運動を興すに違いありません。

15年前に,おそらく日本で初めての「図書館利用案内PCアニメーション」を作成して新入生オリエンテーションで上映した私ですが,現在ではアクセシビリティ中心のwebサイトで,図書館利用教育として役立つようにしたいと思ってます。今後ともよろしくお願いします。

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