文献紹介1

さらに便利になった『情報リテラシー読本』第3版
 ―毛利和弘前委員長が「新版文献調査法」を出版―

戸田光昭(駿河台大学名誉教授)

文献:
『文献調査法―調査・レポート・論文作成必携― (情報リテラシー読本) 第3版』
毛利和弘著・刊
日本図書館協会発売 2008年7月7日発行
B5判 235p. 1,900円(税別)

本書は,4年前に初版が発行された。その第3版である。著者が「はじめに」で書いているように,「情報の陳腐化」に対処するために,隔年刊行をしている。
特に「今回の版では、第Ⅶ章の事実調査に関する部分をさらに充実するとともに,特に重要なものやサンプルがないと分かりにくいものについては,巻末の方にサンプルを付し利用の便宜を図った。また,最新のレファレンスツールもできるかぎり採録し強化した。また,動きが早いインターネット上の情報源ツールの差し替え・追加等も行い,事実・事項調査については,第Ⅷ章として独立させた」。
このように,文献調査に大いに役立つ内容になっているが,変化が激しい世界であるから,新情報に対しては各自が絶えず注視し,取り込む姿勢が重要であると注意している。ページ数は,第2版が214ページだったので,11ページの増加である。

『情報リテラシー読本』という副書名のついた本書は,学生の自学自習用,図書館の参考業務(レファレンス係)の文献調査の手引き,図書館利用指導の基本テキスト,ビジネスにおける調査業務の参考図書などで利用されることを意図して編纂されたものであるが,専門家が使っても役立ち,大学の新入生が自分だけで使うことができ,さらに,図書館業務にも使えるという多様な活用が可能なマニュアルであり,レファレンスブックでもある。

最初に,番外的な活用事例を紹介したい。「大きな書店」の代表である「ジュンク堂」(淳久堂)のことが知りたいと思って,巻末索引を引いてみる。「し」の所に,見出し語として採用されており,27ページに掲載されていることが分かる。
27ページのコラム「アルファータイム」に,「図書館の周辺③―大型書店の時代??」として,この大型書店の東京・池袋本店の紹介が,簡潔にまとめられており,新宿店も「ゆったりとした空間のある図書館のような」場所とある。ジュンク堂池袋本店は,10階建てのビル全体が書店であると書いてある。

では,本書の目次から全体を概観してみよう。全体が8つの部分からなっている。

最初は,「Ⅰ.本の探し方」である。1.国内の本を探す,2.国外の本を探す,3.レファレンスツール(参考図書等)を探す,4.官公庁図書・資料を探す,5.翻訳図書を探す,6.全集・叢書を探す,7.書評された図書を探す,8.主題から文献を探す(雑誌記事等含む)として8項目に分かれ,それぞれを具体的に解説し,事例紹介をしている。

「Ⅱ.雑誌記事の探し方」では,具体的な索引ツールごとに,解説と事例紹介をしている。すでに廃刊になったものも含まれていて,図書館蔵書の徹底的活用ができるようになっている。

それらは,1.雑誌記事索引として,(1)NDL-OPAC雑誌記事索引,(2)『雑誌記事索引―人文・社会編』,(3)『月刊雑誌記事索引(JOINT)』,(4)『総合雑誌記事索引』,(5)『全国短期大学紀要論文索引』,(6)『大宅壮一文庫雑誌記事索引総目録』,(7)『歴史学紀要論文総覧』,(8)『社会科学論文総覧』,(9)『明治・大正・昭和前期 雑誌記事索引集成』,(10)『主要新聞雑誌記事総覧 昭和戦前編』,(11)”Social Sciences Citation Index”。

2.論文索引として,(1)『論文集内容細目総覧』,(2)『学会年報・研究報告論文総覧』,(3)『人文・社会翻訳記事論文索引』。

3.雑誌記事の抄録・目次として,(1)『科学技術文献速報』,(2)『日本雑誌総目次要覧』,(3)『政府定期刊行物目次総覧』。

なお,雑誌記事探索の二次資料の中には,上記のように,廃刊になったものもある。情報を探す人には,現在発行されているのか,あるいは既に消滅してしまったのかなどということは,全く問題でない。探す人は求めるものが出てくればよいのである。廃刊になったものは分かりませんでは,街の書店員以下ということになる。これらのうちで廃刊になったものは,大半がデータベース化され,ウェブ上のオンラインサービスなどで提供されている。このように著者は解説しており,これらの事情を本書ではしっかりとおさえている。

「Ⅲ.新聞記事の探し方」では,最初に,

  1. 新聞情報調査機関概要が掲載され,国内の3機関と海外の2機関が紹介されている。新聞は特別な資料で,そのバックナンバーも含めて所蔵している機関は限定されており,新聞の現物がなければ,索引も作れないし,原文を読むこともできない。そこで,このような新聞資料センター的な機関が重要になるのである。具体的な検索ツールを中心にした解説と事例紹介も付けられている。
  2. 新聞縮刷版(各紙,発行していない新聞もある)では,主要縮刷版一覧ならびに,縮刷版の事例が掲載されている。
  3. 新聞記事索引では,(1)日経テレコン21,(2)読売新聞オンラインサービス「ヨミダス文書館」,(3)朝日新聞オンラインサービス「聞蔵」,(4)『朝日新聞記事総覧』,(5)『読売ニュース総覧』,(6)『毎日ニュース事典』,(7)『会社・産業ニュース索引』があった。現在はオンライン版だけが残っているが,本書では,いずれについても解説されている。
  4. 新聞記事ニュース事典では,(1)『明治ニュース事典』,(2)『大正ニュース事典』,(3)『昭和ニュース事典』がある。
  5. 新聞集成(新聞から主要な記事を選択し,そのまま転載したもの)では『国際ニュース事典 外国新聞に見る日本』など,9種類が紹介されている。

「Ⅳ.どのような種類の新聞・雑誌があるか調べ、その所蔵館は?」では,8つのツールを紹介している。それは,(1)『雑誌新聞総かたろぐ』,(2)『日本雑誌総覧』,(3)”Ulrich’s International Periodicals Directory”,(4)NACSIS Webcat,(5)『学術雑誌総合目録』,(6)『明治新聞雑誌文庫所蔵目録』,(7)国立国会図書館所蔵目録,(8)『雑誌名変遷総覧』である。

「Ⅴ.人物から文献を探す」では,主要な11のツールを紹介している。(1)『現代日本執筆者大事典』,(2)『現代日本執筆者大事典77/82』,(3)『新現代日本執筆者大事典』,(4)『現代日本執筆者大事典』第4期,(5)『日本人物文献目録』,(6)『人物文献目録』1980~,(7)『人物研究・伝記評伝図書目録』,(8)『研究者・研究課題総覧』,(9)『伝記・評伝全情報』,(10)『年譜年表総索引』,(11)"Biography Index”である。

「Ⅵ.人名情報の探し方」では,『人物レファレンス事典』,『東洋人物レファレンス事典』,『西洋人物レファレンス事典』,『外国人名レファレンス事典』などを紹介している。

「Ⅶ.事実・事項調査のための情報源―書誌以外のレファレンスツールを主として―」では,(1)主要参考について,(2)主要参考図書一覧がある。

「Ⅷ.事実・事項調査に役立つ主要データベース一覧では,(1)オンラインデータベース一覧,(2)CD-ROM一覧があり,具体的に説明している。

巻末には付録として,(1)事実・事項調査の参考図書サンプル一覧,(2)調査に関する演習問題がついていて,本書をテキストとしてだけでなく,自学自習用にも使えるよう配慮がされている。なお,参考図書サンプル・ページは読本として,大変便利なものであるが,年次,版次の表記がないのが残念である。演習問題にはヒント,解答例などの検討をお願いしたい。さらに,巻末索引がついており,かなり充実してきたが,一層の工夫と補充を期待したい。

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