文献紹介2

健康情報を選ぶための基本的なツールが完成
―日本の公共図書館の「健康の本」コーナーはここから始まる―

戸田光昭(駿河台大学名誉教授)

文献:
『公共図書館のための「健康情報の本」選定ノート』
「市民への健康情報サービスのための基本図書およびWEB情報源リスト」を作成する会 編集・発行
(連絡先: e-mail:kenkojoho@gmail.com
2008年3月発行 A4判 49p. (非売品)
URL:http://booklog.jp/users/kenkojoho/ (試作版全ページ閲覧可能)
長寿社会の進展と健康ブームの高まりの影

長寿社会の進展と健康ブームの高まりの影響もあって,患者や市民への健康情報提供に取り組む公共図書館や病院図書館・医療関連研究機関図書館が増加している。しかし,適切な健康情報選択のためのツールが不足しており,特に医療専門家向けではなく,医療機関利用者(消費者)のための情報という観点からの選択・選定ツールがほとんど無い状態であった。今回,ここに紹介するのは,その不足を解消する手始めにもなるツールである。

現在の状況は,公共図書館での資料選定の困難さ,医学書情報や専門的知識の不足などがある。
これらを解決する第一歩として,この「選定ノート」が作成された。
これを編集・作成したのは,日本図書館協会(JLA)健康情報研究委員会の呼びかけに応じて集まった公共図書館,医学図書館,病院図書館,健康情報サービス研究機関などの関係者で,有志の会(作成する会)が編集母体として結成された。
当初の目標は,「基本図書リスト」で,「選定ノート」はその第一歩としていた。
しかし,作成するうちに,本の情報は常に更新されるもの,そして,これに協力してくれた,あるいはこれを利用してくれた人たちのもの,という思いが強くなり,タイトルは「選定ノート」をそのまま使うということになった。
その内容は,一般市民を対象に,公共図書館の諸事情も踏まえ,価格,入手状況,対象者,内容などを記載し,疾患別に,単行本90冊,叢書(シリーズもの,講座ものなど)16シリーズをリスト化したものである。
健康情報サービスを先進的に実践している13の図書館・医療研究機関情報施設(亀田総合病院,京都南病院図書室,県立がんセンター新潟病院,東京医科大学,東京女子医科大学,東京都中央区立日本橋図書館,東京都立中央図書館,東邦大学医療センター大森病院,虎の門病院,静岡県立こども病院,聖路加看護大学看護実践開発研究センター,聖路加国際病院,横浜市中央図書館)からの目録情報(7,304件,重複を含む)の提供と,東京都図書館協会の研究助成(2006~2007年度)によって実現した。

選ばれた情報源は,原則として,(1)調べものができる資料,(2)2004年以降刊行のもので,2007年7月現在で入手可能なもの,(3)3館以上で重複して所蔵のあった保健・医療関連資料,である。
この原則に当てはまらないが,入れた方が良いと判断した本もリストに入っている。
編集の仕方は,まず,全体が二部構成で,単行書と叢書(シリーズ)に分かれている。
それぞれに資料番号がついており,単行書は,01から90まで,叢書はS01からS16までとなっており,配列は単行書が米国国立医学図書館分類法(NLMC)を参考に20項目とし,分類項目(日本語)を五十音順に並べ,その中は出版年月、書名順になっている。
叢書は分類項目の五十音順,叢書名の五十音順になっている。
本に関する情報としては,単行書の場合,(1)資料番号(連番),(2)書誌事項(NDL-OPACに順ずる記述),(3)調べやすさの評価項目として,目次,参考文献,索引,名簿の有無,図表(多さ,色など),定期的な改訂の有無などを○×で示した。
(4)この本が対象とする主な読者(一般,患者,家族,高校生などと具体的に書かれている)。
(5)想定される主な利用者,(6)参考価格,(7)内容,(8)著者の所属。
記述のページ見本はつぎの通りである。
試作版URL: http://booklog.jp/users/kenkojoho/archives/4938866293

(2)全国患者会障害者団体要覧 / プリメド社「全国患者会障害者団体要覧」編集室編 - 第3版. プリメド社, 2006.4. 329p ; 26cm.
ISBN 4-938866-29-3. NDC(9)498.035.
(3)目次:○ 参考文献:△ 索引:○ 図表:なし 名簿:○ 定期的な改版:×
(4)この本が対象とする読者:病気や障害の当事者,家族,支援者
(7)内容: 体験を共有できる,共に歩む仲間と出会う。
- 日本全国の病気や障害の当事者の会,家族の会,当事者も参加している支援団体1442団体を収録。
活動範囲が都道府県以上,当事者はだれでも自由に参加できる,連絡先を公表している,などの基準に合った団体。
データは2005年12月31日現在のもの。
24の大カテゴリーをさらに中カテゴリー,小カテゴリーと3段階に分け,全国的なネットワークから地方単位で北から南へ順番に掲載。
会の本部の名称,連絡先,目的や活動内容,対象,刊行物などを紹介。
巻末に疾患・障害別索引,団体名索引,都道府県索引。

本稿作成後に,編集者から,「LITERISというサイトの「市民への医療情報提供」というページで暫定的に公開しております。
http://plaza.umin.ac.jp/~literis/cgi-bin/fswiki/wiki.cgi?page=ConsumerHealthInformation
先に配布した現物は在庫がなくなってしまいましたが,ご希望される方が多く,しばらくの間,上記URLよりダウンロードできるようにいたしました。」という最新情報が入った。

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