日本図書館協会図書館の自由委員会大会・セミナー等2015年東京大会

平成27年度(第101回)全国図書館大会 東京大会 第11分科会 図書館の自由


第11分科会/図書館の自由

テーマ:図書館の自由と個人情報保護の現在を考える

マイナンバー制度開始を目前として個人情報保護法改正案が示されるなど、ビッグデータ活用と個人のプライバシー保護の調整が社会の関心事となっている。また、「忘れられる権利」と「表現の自由」や「知る権利」との調整も論議されている。
図書館においては従来から読書の秘密を守る立場で、図書館利用にかかわるさまざまな情報を慎重に取り扱ってきている。が、1984年に議決された「貸出業務へのコンピュータ導入に伴う個人上右方の保護に関する基準」だけではICT技術のもたらす問題に対処できなくなっている。本分科会では、憲法、情報法を専門とされ、個人情報保護法性について研究されている宮下紘先生に基調講演をお願いし、研究協議では、あらためて図書館利用者の秘密を守ることについての考え方を提起して議論したい。

内容(予定)
報告:図書館の自由この1 年/西河内靖泰(JLA図書館の自由委員会委員長) (25分)
基調講演:ビッグデータとプライバシー保護/宮下紘(中央大学総合政策学部准教授) (90分)
研究協議:図書館の自由と個人情報保護の現在を考える (50分)


大会への招待

 (『図書館雑誌』vol.109,no.9 2015.9 掲載原稿より)

第11分科会 図書館の自由  図書館の自由と個人情報保護の現在を考える

□基調報告:図書館の自由・この一年 西河内靖泰(JLA図書館の自由委員会委員長、広島女学院大学)
この一年間の図書館の自由に関する事例をふりかえり、自由委員会の論議と対応を報告します。
報告事例としては、
・図書館資料の収集・提供の原則について
・差別扇動本とされる蔵書の提供について
・イスラム風刺画と表現の自由をめぐる問題
などを予定しています。

□基調講演:ビッグデータとプライバシー保護 宮下 紘(中央大学総合政策学部准教授)
マイナンバー制度開始を目前として個人情報保護法改正案が示されるなど、ビッグデータ活用と個人のプライバシー保護の調整が社会の関心事となっています。また、「忘れられる権利」と「表現の自由」や「知る権利」との調整も論議されています。憲法、情報法を専門とし、個人情報保護法制について研究されている宮下紘先生に最新の動向と問題点をお話しいただきます。

□研究協議
図書館においては従来から読書の秘密を守る立場で、図書館利用にかかわるさまざまな情報を慎重に取り扱ってきています。が、1984年に議決された「貸出業務へのコンピュータ導入に伴う個人情報の保護に関する基準」だけではICT技術のもたらす問題に対処できなくなっています。研究協議では、あらためて図書館利用者の秘密を守ることについての考え方を提起して議論します。

□パネル展示
2010年改訂、2014年追加の「なんでも読める・自由に読める」パネル展示を行います。

(熊野清子:JLA図書館の自由委員会副委員長)

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大会ハイライト

(『図書館雑誌』vol.110,no.1 2016.1 掲載原稿より)

第11分科会 図書館の自由  図書館の自由と個人情報保護の現在を考える

 最初に基調講演として、宮下紘 中央大学総合政策学部准教授から「ビッグデータとプライバシー保護」のテーマで、お話をいただいた。
 まず個人情報保護法制について、公的部門と民間部門で適用される法律が異なることについての説明があり、続いて個人情報保護の国内動向や判例、成立したばかりの改正個人情報保護法のポイントについて説明があった。またこれに関連して、個人情報漏えいの発生状況についての説明や、武雄市図書館・Tポイントカード利用に関する個人情報保護の問題点についての指摘があった。
 次に、ビッグデータ時代の課題として、プロファイリング規制についての指摘があった。特にプロファイリングの始まりがナチスによるユダヤ人迫害にあることから、イギリスのIDカード廃止などEUのプライバシー権の哲学についての説明と、アメリカの哲学との違いについて、詳しく解説された。あわせて、忘れられる権利に関する動向についても説明された。一方日本では、プライバシーがなんとなく守ってきたエチケットのようなものになっているため、日本でもプライバシー権の哲学を考えるべきとの指摘があった。 

基調報告では「図書館の自由・この一年」として、西河内 図書館の自由委員会委員長から、『絶歌』をめぐる図書館での収集・提供に関する動き、『週刊新潮』による加害少年の実名報道に関する動きなどが報告された。あわせて直近の問題として、神戸新聞による村上春樹氏の図書館利用履歴の記事に関する問題、いわゆるツタヤ図書館と図書館の自由に関する問題についても触れられた。 

その後、お二人の講演・報告を基に研究協議が行われた。特にTポイントカードを図書館カードに利用することについて質問があり、宮下氏はセンシティブデータをCCCに提供することに問題があること、特に武雄市の例では機微情報の収集は条例で禁止されていることを指摘された。また、知る権利・自由とプライバシー保護という基本的人権の対立についての質問等があった。

(奥野吉宏:JLA図書館の自由委員会)

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