図 書 館 員 の 倫 理 綱 領
この倫理綱領は、「図書館の自由に関する宣言」によって示された図書館の社会的責任を自覚し、自らの職責を遂行していくための図書館員としての自律的規範である。日 本 図 書 館 協 会 1980.6.4 総会決議
(図書館員の基本的態度)
(利用者に対する責任)
第3 図書館員は利用者の秘密を漏らさない。
図書館員は、国民の読書の自由を保障するために、資料や施設の提供を通じて知りえた利用者の個人名や資料名等をさまざまな圧力や干渉に屈して明かしたり、または不注意に漏らすなど、利用者のプライバシーを侵す行為をしてはならない。このことは、図書館活動に従事するすべての人びとに課せられた責務である。
(資料に関する責任)
第4 図書館員は図書館の自由を守り、資料 の収集、保存および提供につとめる。
第5 図書館員は常に資料を知ることにつとめる。
資料のひとつひとつについて知るということは決して容易ではないが、図書館員は常に資料を知る努力を怠ってはならない。資料についての十分な知識は、これまでにも図書館員に対する最も大きな期待のひとつであった。図書館に対する要求が飛躍的に増大している今日、この期待もいちだんと高まっていることを忘れてはならない。さらに、この知識を前提としてはじめて、潜在要求をふくむすべての要求に対応し、資料の収集・提供活動ができることを自覚すべきである。
(研修につとめる責任)
第6 図書館員は個人的、集団的に、不断の 研修につとめる。
図書館員が専門性の要求をみたすためには、(1)利用者を知り、(2)資料を知り、(3)利用者と資料を結びつけるための資料の適切な組織化と提供の知識・技術を究明しなければならない。そのためには、個人的、集団的に日常不断の研修が必要であり、これらの研修の成果が、図書館活動全体を発展させる専門知識として集積されていくのである。その意味で、研修は図書館員の義務であり権利である。したがって図書館員は、自主的研修にはげむと共に研修条件の改善に努力し、制度としての研修を確立するようつとめるべきである。
(組織体の一員として)
第7 図書館員は、自館の運営方針や奉仕計 画の策定に積極的に参画する。
個々の図書館員が積極的な姿勢をもたなければ、図書館は適切・円滑に運営することができない。図書館員は、その図書館の設置目的と利用者の要求を理解し、全員が運営方針や奉仕計画等を十分理解していなければならない。そのためには、図書館員は計画等の策定にたえず関心をもち、積極的に参加するようつとめるべきである。
第8 図書館員は、相互の協力を密にして、集団としての専門的能力の向上につとめる。
図書館がその機能を十分に果たすためには、ひとりの図書館員の力だけでなく、職員集団としての力が発揮されなければならない。このためには、図書館員は同一職種内の協調と共に、他職種の役割をも正しく理解し、さらに、地域および全国規模の図書館団体に結集して図書館に働くすべての職員の協力のもとに、それぞれの専門的知識と経験を総合する必要がある。図書館員の専門性は、現場での実践経験と不断の研修及び職員集団の協力によって高められのであるから、図書館員は、経験の累積と専門知識の定着が、頻繁すぎる人事異動や不当配転等によって妨げられないようつとめるべきである。
第9 図書館員は、図書館奉仕のため適正な労働条件の確保につとめる。
組織体の一員として図書館員の自覚がいかに高くても、劣悪な労働条件のもとでは、利用者の要求にこたえる十分な活動ができないばかりか、図書館員の健康そのものをも維持しがたい。適正数の職員配置をはじめ、労働災害や職業病の防止、婦人図書館員の母性保護等、適切な図書館奉仕が可能な労働条件を確保し、働きやすい職場づくりにつとめる必要がある。
図書館員は図書館奉仕の向上のため、図書館における労働の独自性について自ら追求すべきである。
(図書館間の協力)
第10 図書館員は図書館間の理解と協力につとめる。
図書館が本来の目的を達成するためには、一館独自の働きだけでなく、組織的に活動する必要がある。各図書館は館種・地域・設置者の別をこえ、理解と協力につとめるべきである。図書館員はこのことをすべて制度上の問題に帰するのでなく、自らの職業上の姿勢としてとらえなければならない。図書館間の相互協力は、自館における十分な努力が前提となることを忘れてはならない。
(文化の創造への寄与)
第11 図書館員は住民や他団体とも協力して、社会の文化環境の醸成につとめる。
図書館は孤立した存在であってはならない。地域社会に対する図書館の協力は、健康で民主的な文化環境を生み出す上に欠くことができない。他方、この文化環境によって図書館の本来の機能は著しい発達をうながされる。図書館員は住民の自主的な読書運動や文庫活動等をよく理解し、図書館の増設やサービス改善を求める要求や批判に、謙虚かつ積極的にこたえなければならない。さらに、地域の教育・社会・文化諸機関や団体とも連携を保ちながら、地域文化の向上に寄与すべきである。
第12 図書館員は、読者の立場に立って出 版文化の発展に寄与するようつとめる。
出版の自由は、単に資料・情報の送り手の自由を意味するのではなく、より根本的に受け手の知る自由に根ざしている。この意味で図書館は、読者の立場に立って、出版物の生産・流通の問題に積極的に対処する社会的役割と責任を持つ。また図書館員は、「図書館の自由に関する宣言」の堅持が、出版・新聞放送等の分野における表現の自由を守る活動と深い関係を持つことを自覚し、常に読者の立場に立ってこれら関連分野との協力につとめるべきである。
日本図書館協会は、わが国の図書館の現状にかんがみこの倫理綱領を作成し、提唱する。本協会はこの綱領の維持発展につとめると共に、この綱領と相いれない事態に対しては、その改善に向って不断に努力する。