最近の目録委員会へのご質問・ご要望に対する回答



日本目録規則1987年改訂2版(NCR87-2R)第13章の改訂について

[ご意見]

ISBD(CR)と同様に、継続資料ということで、逐次刊行物と更新資料を一括処理するという13章の改定案に反対します。といいますのは、一口に継続と言っても、逐次刊行物の継続の様態と、更新資料の継続の様態は全く異質だからです。異質なものをごっちゃにして1つの章で扱うと、かえって分りにくくなり、使いにくくなります。AACR2の2002Rをみましても、この点は明かです。そこで、私は、逐次刊行物の章のほかに、更新資料の章を別途設けることを提案します。

[回答]

本年度中に刊行予定の改訂第13章については、次のような判断から、ISBD(CR)およびAACR2 2002R第12章と同様に、継続資料を対象として、逐次刊行物並びに更新資料を統合した形で編纂することとします。ただし、規則の明晰性を高めるために、逐次刊行物向けの条項と更新資料向けの条項は、それぞれをできるだけ切り分けて表現するように努めるものとします。

  1. 目録規則の構成について
    これまでNCRでは、書誌的記録は記述対象に基づき作成されるとして、記述対象の資料種別や刊行方式に基づき章を立て、「第1部記述」を構成してきました。しかし、たとえば近年爆発的に増大した電子資料(第9章)は、明らかにこの枠組みにおさまるものではありません。また、いわゆるmultiple versionといった原則に関わる問題も生じております。今後予定される目録規則の改訂において、どのように「記述」規則を構成するかは、喫緊の基本問題であると認識しておりますが、その検討はなおしばらく時間が必要です。
  2. 逐次刊行物と更新資料との関係について
    両資料群に共通する刊行の「継続性」という観点は、目録規則の構成原理を左右するものだと考えます。しかし、逐次刊行物と更新資料を区分する概念は、現段階では、それに匹敵するものになっているとの共通認識にはいたりませんでした。
  3. 目録規則の利用性について
    目録規則は、それぞれの図書館現場の違いを反映させた運用など、詳細な条項が求められても、対応できないことがあります。そうしたときには、目録規則に併せて、それぞれの図書館で目録規則の解釈や運用についてのマニュアルが作成されますと好都合です。提起された問題については、このような手法で解決できる部分もあるかと思われますので、適宜ご配慮くださいますようお願いいたします。
  4. 規則刊行について
    NCRに関して、近い将来は今回提起された「記述」規則の再構成を含む全面的改訂が必要だと認識しておりますが、当面は機会を失することなく不可欠な改訂作業を行うように努めています。そのため改訂第13章は、今年度中に刊行する計画を立てております。これまで、逐次刊行物と更新資料を合わせて検討してまいりましたので、改めてそれぞれを別立てにして検討をいたしますと、例示の探索など、そのための負荷が生じ、この予定に遅れをきたすおそれがあります。

(2003年10月)


著者の識別のため生年を用いることの是非

[ご意見]

著者の識別のためにプライバシーに関わる個人情報である生年を当然のように用いて良いのか?

[回答]

目録利用者にとっても目録編成者にとっても、同名異人の正確な区別は不可欠なことであります。そのために、『日本目録規則』では、同名異人を区別する必要のある場合には、そのための情報として生没年を採録することを定めています(23.2.1.3)。生没年は、一般にもっとも有効な個人属性だと考えられてきたからであります。
しかしながら、確かにプライバシーを保護する社会的認識が高まり、趣旨は別にあるとはいえ公の機関があたかもそれに抵触するようなふるまいは困難だというご意見は理解できます。すべての個人がこの問題に対して強いプライバシーの侵害を訴えているわけはないと思いますが、慎重を期して、プライバシーを侵害するおそれのある場合については、運用上の対応で、問題に対処していただくことをご検討くださると幸いです。
たとえば、生年を出力形には表示されないなどの手段をとられるなどの対応が考えられます。なお、その際においてもデータそのものは保持し、個人のレコードの個別化が必要に応じて可能であるようにしておくのが望ましいかと存じます。

(2003年12月)


翻訳書の書誌的来歴の注記について

[ご意見]

翻訳書の書誌的来歴の注記について、書名、出版地、出版者、出版年を記載することを常例してはどうか?

[回答]

このご意見のように、「書名、出版地、出版者、出版年」を翻訳書の書誌的来歴として注記することは、至極当然のことと思われます。ただし、これまで和漢書目録の世界では、このような慣習はありませんでした(したがって、この場合の区切り記号法も決まった形が存在しません)。また、ご指摘のような詳しい記述とともに、これまでの慣習も許容できないというわけではありません。
したがって、次の修正の際には、これまでの例示に並べて、書名、出版地、出版者、出版年を表示する例示を付加するものとします。また、それに必要な、区切り記号法についての検討を進める所存です。

(2003年12月)