新型コロナ時代の障害者サービスのヒント 2020年6月13日策定 日本図書館協会障害者サービス委員会  当面の図書館の障害者サービスにおいて、利用者や職員の安全を確保しつつ、できる限りの障害者サービスが実施できるよう、以下のことを参考にしてください。 (今後の感染状況などにより、この文書は更新をしていきます。) 1 障害のある来館者への対応  視覚障害者や肢体不自由者などへの支援では、直接接触が必要な場合もあります。接触は極力短くすむようにして、前後の手洗いなどを励行しましょう。また、コロナの影響で触れられることに敏感になっている方もいますので、了解を得てから接触しましょう。  聴覚障害者は、手話だけではなく口の形や表情でもコミュニケーションの参考にします。透明マスク、フェイスシールドの使用なども考慮してください。筆談用具やコミュニケーションボードを使用した場合は、使用後の消毒をしましょう。  感覚過敏のためマスクができない人もいますので、配慮をお願いします。  知的障害者への対応はいつもより慎重にお願いします。  (注意点)   知的障害者は、普段と違う状況で頻繁に変化があると、変化に対応できずパニックを起こしやすいです。   特に自閉症者は変化に対応しにくい人が多いので注意してください。  (機器の貸出など)   拡大読書器、ルーペ、デイジー再生機などの貸出では、使用後の消毒をしましょう。   音声パソコンなどの利用があった場合も、使用後の消毒をしてください。 2 対面朗読サービス  感染状況にもよりますが、従来の狭い対面朗読室内で相対して音訳する形の対面朗読は、当面難しいものと考えます。そこで、以下に挙げるような、利用者と音訳者が直接向かい合わない方式での実施を検討してください。  短いものであれば電話による音訳、既存の音声デイジーの活用、一部分のみを音訳した資料の製作なども併せて検討してください。  (注意点)  音訳者がマスクを着用したりアクリル板などを間に置いても、狭い個室内で、相対して長時間音訳するのは好ましくありません。  (1)オンラインによる対面朗読  遠隔コミュニケーションアプリ「Zoom」「Skype」「ライン通話」等を使用してオンラインによる対面朗読(利用者が在宅する形)を検討してください。その場合は以下のことに留意してください。   ①音訳者の長時間来館が可能かどうか。そのような活動を断る音訳者もいることを理解してください。   ②音訳する対面朗読室の定期的な換気と、使用後の機材や机などの消毒を行うこと。   ③音訳者に来館時のマスク着用や適切な手洗いをしてもらうこと。   ④利用者が読みたい資料が図書館にない場合は、事前に送るなどの準備をしておくこと。   ⑤利用者側の体制がとれること。パソコンやスマートフォンだけではなく、電話でもできるものがあります。ただし、利用者側の通信環境により、通信料金が必要な場合がありますので注意して下さい。  一般の利用者の長時間の来館が可能になるまで、対面朗読利用者の来館も困難であると考えます。  (2)広い部屋や異なる部屋での対面朗読(利用者の長時間の在館が可能になった場合)   ①広い部屋を利用する方法   研修室などの広い部屋で、定期的な換気を行い、音訳者と利用者が離れて座ることにより、飛沫感染を防止しながらの対面朗読が考えられます。ただし、音訳者が大きな声で読まなければならないような環境では、長い対面朗読ができませんので、実施する部屋に注意してください。   ②近くの異なる部屋を利用する方法  音訳者と利用者が別の部屋にいて、内線電話・遠隔コミュニケーションアプリ・マイクとスピーカーなどを用いて行う方法も考えられます。  この場合でも、そのような活動を断る音訳者がいることも理解してください。 使用後の機材や机などの消毒を行います。音訳者が入れ替わるときも換気や消毒を行いましょう。 3 郵送貸出  (1)音声デイジー、一般の図書や雑誌  返却された資料は、一定時間据え置いてから処理することをお勧めします。  職員への感染防止を図りましょう。(手袋をして作業をする、こまめに手を洗う) 利用者には、本を読む前と終わったときには手を洗うように促してください。(本と利用者自身を守るために必要です) (注意点) 紙の本はアルコールや紫外線による消毒は好ましくありません。   CDや郵送ケースもアルコール消毒は現実的ではありませんので、一定時間別置することをお勧めします。  (2)点字資料   点字はそもそもすべての文字を触読するものですので、返却後一定時間は別置して除菌するようにしてください。 (3)障害者サービス用資料の入手方法   資料は相互貸借(郵送)で取り寄せることに問題はありませんが、できるだけサピエ図書館や国立国会図書館サーチからダウンロードで入手することを検討してください。 4 職員などによる宅配・配本サービス  配本バッグや袋はアルコールなどでその都度消毒したいところです。(アルコールスプレーも検討してください)  本のリクエスト等の相談は、自宅で直接ではなく、なるべく電話などで行いましょう。  返却された資料は一定時間程度、所定の場所に置いておき、その後返却処理してください。  (宅配時の受け渡し例)  利用者宅到着時に利用者に電話をし、アルコール消毒した配本バッグをドアノブなどにかけて職員は少し離れたところで待機する。  利用者は借り受ける配本バッグを受け取り、返却する配本バックを同じようにドアノブにかける。(この時離れた位置でのあいさつやリクエストの受付は可能だと思います)  利用者が家に入りドアが閉まったら、配本バッグを受け取って帰る。 5 録音、点字資料の製作  全国の公共図書館・点字図書館の中には新型コロナの影響で、製作が止まってしまっている録音資料や点字資料があります。  音訳・点訳などの作業を図書館など施設内で行っている場合は、たとえば自宅での作業ができるような方法を検討してください。  図書館職員は、資料製作の進捗状況確認、読みの調査支援などに積極的に取り組みましょう。  (施設内の録音室を使用する場合)  録音室を使用するときには、同じ日に複数人が使用する場合は、その都度機材や机などの消毒と部屋の換気を行ってください。 6 研修会、養成講座等  音訳者等や一般向けの研修会の実施は、各自治体などが定める新型コロナ感染防止ルールに沿って行いましょう。(広い部屋で行う、参加者数を制限する、定期的な換気を行う等。)特に音訳者研修会にあたっては、飛沫感染を防ぐ意味からも、参加者の間が2メートル以上の距離を確保できるようにしましょう。  ウェブを活用した研修会の実施も検討してください。 2020年6月17日語句等一部修正