ガイドラインの解説と具体的な取り組み方法      2016年3月2日、4日 日本図書館協会差別解消法セミナー      (東京会場)埼玉県立久喜図書館 佐藤聖一      (大阪会場)大阪府立中央図書館 杉田正幸 1 差別解消法施行に向けた日本図書館協会の取り組み  (1)「図書館利用における障害者差別の解消に関する日本図書館協会宣言」 2015年12月  (2)「図書館における障害を理由とする差別の解消の推進に関するガイドライン」    2016年3月正式決定予定(公開案にいただいた意見を元に最終修正中)    @プロジェクトチームによる検討    A専門家からの助言  (3)国や自治体が作成する差別解消法に基づく対応要領・対応指針と、日図協ガイドラインの関係  (4)全国で開催される職員研修会への講師派遣 2 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)  (1)「障害者の権利に関する条約」批准までの国内法の整備と差別解消法の目的    @障害者の権利条約 2006年12月国連採択    A著作権法第37条第3項 2009年6月改正    B障害者基本法 2011年8月改正    C障害者差別解消法 2013年6月制定    D障害者の権利条約 2014年1月批准  (2)2016年4月 国や地方公共団体に合理的配慮の提供を義務化、民間には努力義務化  (3)障害者差別解消法のポイント    @「不当な差別的取扱いの禁止」→民間事業者を含むすべてに求めている    A社会的障壁を除去するための「合理的配慮の提供」と「基礎的環境整備」  (4)不当な差別的取扱いの禁止(ガイドライン 6P)    @不当な差別的取扱いとは    A不当な差別的取扱いの例 6P    B不当な差別的取扱いに当たらないものの例 7P  (5)社会的障壁(ガイドライン 7P)    @社会的障壁の意味    A具体例 7P  (6)合理的配慮と基礎的環境整備    @合理的配慮とは    A基礎的環境整備とは    B合理的配慮と基礎的環境整備の違い    C目標→基礎的環境整備が整えられ、個々の合理的配慮を依頼せずに、図書館の利用が保障されている状態 3 障害者差別解消法の考え方と図書館の障害者サービス  (1)障害者サービスへの誤った認識    @視覚障害者サービスではない    A障害者を対象とした、「特別な」、「対象別」サービスではない    B恩恵的、福祉的サービスではない  (2)ノーマライゼーション社会の実現とバリアフリー・ユニバーサルデザイン    @ノーマライゼーションの意味    A社会(図書館)の側から見たノーマライゼーション  (3)障害者サービスの定義と目的    定義「図書館利用に障害のある人々へのサービス」    目的「すべての人にすべての図書館サービス・資料を提供すること」  (4)定義と目的から分かること    @誰もが使える図書館にするのは誰が行うのか    A図書館のすべてのサービスの基礎    B障害は障害者にあるのではなく、図書館のサービスにこそある * 障害者サービスの詳細は、ガイドライン巻末にある参考資料を参照してください。 4 「図書館における障害を理由とする差別の解消の推進に関するガイドライン」 (以下、ガイドラインそのものの目次の一部抜粋、必要箇所を説明していきます。) 1 基本事項 (1)ガイドラインの目的 2P (4)対象となる図書館 3P (5)対象となる障害者 3P (6)対象となる業務、サービス 4P 2 障害を理由とする差別と図書館に求められる対応 (4)図書館における具体的取組み 5P 4 合理的配慮(後述) 5 基礎的環境整備(後述) 6 ガイドライン実施のために必要なこと (1)相談体制と合理的配慮の判断・調整を行う責任者 11P 用語解説、参考資料 5 合理的配慮  (1)合理的配慮とは    @個々の依頼を受けて、図書館の利用を保障する活動・支援・工夫・ルールの変更    A個々に合理的配慮ができるかどうか、またはその代替え方法を検討・判断する →利用者と図書館の状況により判断    B過度な負担でないこと    C同じ合理的配慮が長期的にある・回数がある→基礎的環境整備として整える    D職員が個人で考えるのではなく、図書館として組織で対応する  (2)過度な負担の考え方 8P    @やらない理由を探すのではなく、どうしたらできるかを考える    A同じ負担が度重なると過度な負担になる→職員個人の責任にしない  (3)図書館における合理的配慮の例 8P 6 基礎的環境整備  (1)基礎的環境整備とは    @障害者を含む利用者が利用できるようにサービス・システムを構築する    A施設設備だけではない→サービスや資料が重要    B現状ですぐにでもできることから始めて、計画的に整備を進めていく    C障害者と協力して内容を修正していく  (2)職員の資質向上のための研修会 9P  (3)施設設備の整備 9P (4)読書支援機器 9P  (5)障害者サービス用資料 10P  (6)サービス 10P (7)その他の整備等 11P  (8)規則・ルールの修正 11P 7 まず図書館が取り組むべきこと  (1)障害者サービス担当者、合理的配慮を判断する責任者を置く    @障害者サービス担当者 自館の障害者サービスを組み立てる    A責任者 合理的配慮の判断・説明に最終的な責任を負う  (2)図書館として合理的配慮を検討する手順を確認する    窓口職員→係内で検討→障害者サーミス担当を含めて検討→責任者を含めて検討  (3)全職員向け研修    @合理的配慮・基礎的環境整備・障害者サービスの考え方を理解    A窓口での具体的対応方法を確認    B自館の障害者サービスの状況を知る    Cその他(障害者理解、障害者の支援方法)    D毎年新人に対し同様の研修を行う  (4)自館の施設・サービス・資料の確認(障害者サービス担当者と責任者が行う)  (5)(必要により)対応マニュアル・対応要領の作成     障害者サービスを学ぶための参考資料(ガイドライン巻末を抜粋) (1)『1からわかる図書館の障害者サービス 誰もが使える図書館を目指して』  佐藤聖一/著 学文社 2015.2 978-4-7620-2521-1 (2)『障害者サービスと著作権法 JLA図書館実践シリーズ26』 日本図書館協会障害者サービス委員会・著作権委員会/編 日本図書館協会 2014.9 978-4-8204-1409-4 (3)『本と人をつなぐ図書館員 障害のある人、赤ちゃんから高齢者まで』  山内薫/著 読書工房 2008.1 978-4-902666-15-1 (4)『多様性と出会う学校図書館 一人ひとりの自立を支える合理的配慮へのアプローチ』  野口武悟・成松一郎/編著 読書工房 2015.7 978-4-902666-35-9 (5)『読みやすい図書のためのIFLA指針 (ガイドライン) 改訂版 IFLA専門報告書 第120号』 国際図書館連盟特別なニーズのある人々に対する図書館サービス分科会/編・日本図書館協会障害者サービス委員会/監訳・日本障害者リハビリテーション協会/訳 日本図書館協会 2012.6 978-4-8204-1205-2 (6)『LLブックを届ける やさしく読める本を知的障害・自閉症のある読者へ』  藤澤和子・服部敦司/編著 読書工房 2009.3 978-4-902666-20-5 (7)『障害者の読書と電子書籍 見えない、見えにくい人の「読む権利」を求めて』  日本盲人社会福祉施設協議会情報サービス部会/編 小学館 2015.3  978-4-09-388413-6 (8)『高齢社会につなぐ図書館の役割 高齢者の知的欲求と余暇を受け入れる試み』   溝上智恵子・呑海沙織・綿抜豊昭/編著 学文社 2012.9 978-4-7620-2319-4 (9)『聴覚障害者に対する図書館サービスのためのIFLA指針 第2版』 ジョン・マイケル・デイ/編・日本図書館協会障害者サービス委員会聴覚障害者に対する図書館サービスを考えるグループ/訳 日本図書館協会 2003.3 4-8204-0229-3