図書館に関する政策についての日本図書館協会の質問と政党の回答

                 社団法人日本図書館協会

 社団法人日本図書館協会は2009年8月14日、各政党に対して、図書館に関する政策について文書による質問を行った。各政党に当面している図書館振興の課題を伝え、見解を聴くものである。寄せられた回答を質問ごとに分けて紹介する。◆部分が回答文。
 お願いした政党は、自由民主党、民主党、公明党、日本共産党、社会民主党、国民新党、新党日本、改革クラブの8党。回答は、民主党、国民新党、日本共産党、自由民主党(到着順)の4党から締切日(8月25日)までにいただいた。いただけなかった政党には選挙後改めてお願いしたところ公明党から寄せられた。社会民主党からは寄せられなかったので、同党のマニフェストから該当する内容を抽出し紹介する。また民主党の回答には、マニフェストで触れている内容についても補足して紹介する。

(質問の際添付したデータ等と回答へのコメントはこちら

すべての人々の図書館利用を保障するために政党の図書館政策について伺います

                 2009年8月 社団法人日本図書館協会

 平素のご精励に敬意を表します。昨年の図書館法改正に際しましては、当協会の考えを熱心に聴いていただき、国会では今後に生かすことのできる重要な議論をしていただきました。改めて感謝申し上げます。
 さて総選挙に際して御党は各分野の政策、マニフェストを公表しておられます。政党が今後の国政運営、国民生活全般にわたって見解と今後の方向を広く公表されることは極めて重要なことであり、旺盛な政策論議を期待するところです。私どもは、図書館の資料・情報の提供機能は国民生活に欠かすことのできないはたらきであり、そのための条件整備は政治に課せられた責務であると捉えております。昨年の国会審議に接し、国会議員の皆さんや政党の役割が大変大きいことを改めて確認しました。
 そこで図書館振興の課題、現場が直面している課題の主要な点について、私どもの考えを述べ、それについてのご見解を伺うことにしました。ご回答は広く図書館関係者に伝えるとともに、私どもの今後の取組みに生かしていきたいと思います。
 選挙の最中、ご多用のところ恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。


◆民主党
民主党は、党の教育政策の集大成である独自の「日本国教育基本法案」において、生涯学習及び社会教育の重要性を掲げています。 生涯にわたる学問の自由と、多様な学習機会の充実、社会教育の充実は、図書館や博物館、公民館等の施設と機能の整備などによって図られるものと考えています。
また民主党は「民主党政策集INDEX2009」において、学校図書館についての政策も掲げています(下記参照)。 
○学校図書館の整備等 
子どもの読書活動は、子どもが言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かにするうえで欠かせないものです。子どもの読書活動推進法や、2010年を国民読書年とすることを定めた衆参本会議での「国民読書年に関する決議」を足がかりとしながら、全国の学校図書館の整備・充実を進めるなど、子どもの読書環境を改善します。 また、文字・活字文化の振興を図るとともに、司書教諭が不足している現状にかんがみ、その充実に取り組みます。
民主党では以上のような考え方を基本に据え、国民生活における図書館の重要性に鑑みつつ、ご質問いただいた項目も含め、より一層議論を深めていきたいと考えています。
[マニフェストから追加]
○生涯学習の充実
技術の高度化、転職・再就職の準備、地域活動のリーダー養成、教養講座など多様な教育ニーズに対応する生涯学習社会を実現します。子どもから大人までが利用しやすい施設の整備、公民館活動の活性化、公立図書館の一層の充実を図ります。また、大学・短大を卒業し社会で働く人に、本人の希望で再び大学や大学院で教育を受けることができる制度(リカレント教育制度)を確立するなど、学ぶ機会の充実を図ります。

◆日本共産党 
図書館振興に大きな役割を果たしておられる貴協会のご尽力に敬意を表します。このたびいただいたご質問は、公共、学校、大学などを含め、すべての図書館が深刻な実状にあることを具体的に明らかにされています。図書館の条件整備に関する、国の責任が果たされていないことを指摘しないわけにはいきません。
日本共産党は、OECD諸国に比べて著しく低い国民一人当たりの教育費を大幅に増額するとともに、とりわけ図書館の分野では、司書など図書館専門職員の雇用と仕事に専念できる体制の確保を基本に置いた政策の実現を目指して奮闘することをまず申し述べ、以下、御質問に回答いたします。

◆公明党
公明党はこれまで「文字・活字文化振興法」「子ども読書活動推進法」など読書活動を推進するための環境整備に全力で取り組んでまいりました。中でも、全国の地方議員と連携を図りながら、図書館の振興や司書教諭の拡充、関係予算の充実等に努めてきたところです。ご指摘頂いた要望等については、生涯学習社会の構築、学校教育の充実、地域社会の振興等の観点からしっかりと検討し、進めてまいります。以上のことを踏まえお寄せ頂いた要望等についてご回答申し上げます。

◆社会民主党
図書館を、「知の広場」と位置づけ、従来の予算を倍増し、多種多様な資料を取りそろえ、専門職員による支援が可能な環境を作り上げます。[マニフェストより]


1 市町村立図書館を整備すること

平成の大合併を経た今日でも図書館のない市町村はなお3割近くあります。人口比較でみると日本はG7各国平均の半分以下と大きく下回っております。
図書館は住民の身近な生活圏域、おおむね中学校区に1館は必要であると考えております。これが実現すると人口当たりではやっとG7各国の平均に到達することになります。
その実現を図るために、1.図書館法第20条が課している図書館整備の補助事業を実施すること、2.過疎地域自立促進特別措置法に基づく過疎債の対象事業に図書館整備を加えること、3.その他各省庁の公共施設整備の補助事業の対象に図書館事業を加えること、などの施策を実施すべきだと考えております。

質問:中学校区に1図書館設置することを早急に実現すること、および過疎債の対象事業に図書館の整備を加えることについて、お考えをお尋ねします。

◆国民新党
今後、党として議論していきます。

◆日本共産党
G7各国のなかでわが国が著しく図書館の少ない国であることは、先の国会で私たちも取り上げましたが、驚きをもって明らかにされました。図書館は、とりわけ子どもたちやお年寄り、障害者などにとって、日常生活のなかで身近に必要な施設です。中学校区を単位に図書館を設置することは適切な目標であると考えます。
全市町村の3割近くもある、図書館未設置の市町村を解消するためには、過疎の市町村や離島地域への特別の手立てが必要です。過疎債、離島対策の特別財源をその対象にすることを実現させるようとりくみます。何よりも、図書館法に明記されている図書館整備の補助事業を実施させるとともに、各省庁の施設建設の補助事業を図書館整備にあてるよう努力します。

◆自由民主党
公立図書館は、地域における生涯学習推進のための重要な拠点となっております。しかしながら、町村における設置率は依然として低く、市においても中学校区に1館などのきめ細かい整備が進んでいるとはいえず、その機能が十分発揮されているとは言い難い状況です。
公立図書館の施設整備にかかる補助金については、平成9年7月の地方分権推進委員会の勧告により地方公共団体の自主性・自立性を高める観点から、平成9年度限りで廃止されました。現在は、起債等による地方公共団体が単独で整備することとなっております。
また、過疎債について、「新過疎法(仮称)制定の基本的考え方(案)」において図書館の整備の対象拡大等をまとめたところであり、これらの制度を活用しながら、図書館の整備充実に努めていきたいと考えております。

◆公明党
ご指摘のように我が国の図書館整備は、その数も蔵書も欧米諸国から見劣りしている状況にあります。全ての中学校区に図書館を設置するなどの目標を明確にしつつ、過疎債の柔軟な活用も勘案し、図書館の振興に努めてまいります。


2 公立図書館に専任の司書、司書有資格の館長を配置すること

公立図書館職員の6割が非正規職員であり、正規職員のうち司書有資格者は5割、司書有資格者のいない図書館が4割近く、また司書資格をもつ館長は2割と、図書館は極めて脆弱な体制で運営されています。国会審議で文部科学省もこの実状を認め、「多様化、高度化する利用者のニーズに対応する専門性を備えた司書の配置」を自治体に期待する答弁をしましたが、図書館運営の根幹に関わる職員体制については自治体まかせにせず、その確実な実現を図るため図書館法第13条を「公立図書館に館長及び司書を置く」と改正するとともに、長期にわたって継続的に司書の業務に専念できる安定雇用を図るべきだと考えます。
さらに地域全体の図書館サービス計画の立案、実施の責任者である図書館長には司書資格をもつことを求めるべきです。

質問:図書館に司書を置くことを法律上明確にすること、司書が長期安定的に雇用される方策を採ること、司書有資格の館長を配置すること。以上について、ご見解をお尋ねします。

◆国民新党
雇用対策上、司書の長期安定的雇用に向けた方策は必要と考えますが、法律上、図書館に司書の配置を義務付けることについては、今後、検討していきます。

◆日本共産党
図書館で働く人々の雇い止めをやめさせ、労働条件の改善を図ることは労働者の権利を守るうえで必要なことであり、同時に図書館職員の専門性を高めるうえで重要なことです。非常勤、臨時の雇用にある人の正規職員化をすすめるとともに、労働者派遣法の改正などを図り、非正規職員と正規職員との均等待遇をはかります。
図書館法が司書の配置を求めていることは明らかであり、政府はそれを促進する具体的な施策を実施すべきです。
図書館長は、図書館事業を長期的視野にたってすすめる責任者であり、地域の読書環境整備にも中心的役割をはたす職です。司書有資格の館長を配置するとともに、その業務にふさわしく処遇されるべきだと考えます。

◆自由民主党
公立図書館が地域の知の拠点としての役割を十分果たすためには、専門性を備えた司書が、多様化・高度化する利用者のニーズに適切に対応して、その知識や経験を十分に発揮することが必要です。
司書の配置については、第一義的には設置者である地方公共団体が判断するものであり、それぞれが地域の実情や財政事情等を勘案して、必要な数の職員を配置し、運営を行っております。地方公共団体が、図書館における専門的職員の配置などの住民生活に不可欠な行政サービスを安定的に提供できるよう、地方税の充実、地方交付税の増額など地方が自由に使える財源の充実確保に努めてまいります。
また、図書館長には、図書館についての専門的な知識に加え、経営力やリーダーシップ、説明能力などの様々な能力が求められます。その任用にあたっては、多様な観点から人物評価を行い、任命することが必要であり、館長となる者が司書資格を有することも専門的知識の必要性という観点から望ましいと考えております。

◆公明党
図書館の振興には専門的な知見をもつ人材の配置が欠かせません。これまでも司書の配置推進に努めてまいりましたが、今後も司書の配置と待遇の向上を進めてまいります。


3 指定管理者制度は図書館の管理運営になじまない

図書館は利用の度合いに応じた金銭的な収益が生じない事業であり、民間企業にその管理運営を委ねる指定管理者制度は基本的になじまないと考えております。図書館は行政が責任をもって実施する公共サービスであり、司書がその専門性を継続して安定的に蓄積できる体制の構築があってできる事業です。文部科学省も同様な見解をもち、また先の国会では全会派一致して「指定管理者制度の弊害」を指摘する決議を行いました。
利用者に直接サービスを行う「窓口業務」を民間企業に委託したり、図書館業務を「市場化テスト」の対象にする動きについても、図書館本来のあり方にそぐわないものであり、図書館の内実を損なうものです。

質問:御党は、図書館の管理を指定管理者に、図書館業務を民間企業に委ねることについて、どのような見解をおもちですか。

◆国民新党
教育と文化に関わる施策について、経費節減の目的から指定管理者制度を導入することは、行き過ぎであると考えます。

◆日本共産党
図書館業務は教育委員会が責任をもって実施する公共サービスであり、利潤追求を目的とする企業に委ねるべきではありません。当然、「市場化テスト」の対象にはなじまないものです。また、利用者に直接サービスする「窓口業務」の請負契約は、「偽装請負」になりかねない側面があります。利用者住民、図書館協議会、議会などの十分な情報の共有と議論がないまま、図書館の管理、業務を外部化するようなことは、許されるものではありません。
図書館業務のアウトソーシングは、行政が責任をもって実施すべき公共サービスを「安あがり」にするためのものです。司書が「官製ワーキングプア」の例として挙げられているようなことは、公共サービスの部門であってはならないことです。

◆自由民主党
指定管理者制度の目的は、施設管理の費用対効果の向上、管理主体の選定手続きの透明化、出資法人の経営の効率化、民間事業者の活力を活用した住民サービスの向上を図ることにあります。
公立図書館に指定管理者制度を導入するか否かは、第一義的には設置者の判断でありますが、各設置者において、公立図書館の利用者に対するサービスの充実に資するよう配慮しつつ、指定管理者制度の導入の是非を判断することが重要であると考えております。

◆公明党
図書館の管理運営を金銭的な収益を第一の目的とした民間企業に全て委ねることは、社会や地域の中で図書館が持つ意義や果たすべき役割を損なう可能性があり、基本的には行政が責任をもって実施すべき公共サービスであると考えます。


4 地方交付税の積算内容を図書館サービスの進展に即して改善すること

地方交付税は自治体の一般財源ですが、その積算内容は行政の最低水準を示す側面をもっています。図書館についての現行積算内容は、実態と非常に乖離しています。コンピュータシステム、資料の相互貸借の経費のほか、市町村の図書館長の給与費、図書館協議会委員の報酬を加えるなど、改善を図るべきだと考えています。

質問:地方交付税を以上のような豊かな積算内容に改善することについて、お考えをお尋ねします。

◆国民新党
国民新党としては、地方活性化のため、地方交付税の率を高める必要があると考えており、地方自治体が自由に使用できる枠組みを拡大すること目指しています。

◆日本共産党
政府の「三位一体改革」により地方交付税は年々削減され、自治体の財政運営は困難な事態となっています。地方財政を抜本的に見直すとともに、地方交付税の積算内訳を実状に即して改善することは当然です。

◆自由民主党
公立図書館については、職員の給与費及び図書購入費等が、基準財政需要額の単位費用として計上されております。地方公共団体が、図書館の設置・運営などの住民生活に不可欠な行政サービスを安定的に提供できるよう、地方税の充実、地方交付税の増額など地方が自由に使える財源の充実確保に努めてまいります。

◆公明党
 ご指摘のように、地方交付税を改善することは大変に重要です。図書館振興の充実へ向け、引き続き取り組んでまいります。


5 政府刊行物や地方公共団体の刊行物を公立図書館に無償で確実に提供すること

図書館法第9条は、政府刊行物および地方公共団体の刊行物を図書館に提供することを課しています。行政の情報公開に資する極めて重要な条項ですが、政府刊行物については十分に行われていないことが明らかとなりました。文部科学大臣は改善に努力する旨答弁しましたが、少なくとも官報、法令全書、白書、指定統計など主要な政府刊行物を確実に図書館に届ける仕組みを政府自らつくるべきです。それによって国民が政府の公的な資料に接する機会を広げることができます。

質問:主要な政府刊行物が図書館に確実に届く仕組みを政府がつくるべきだと考えますが、これについての見解をお尋ねします。

◆国民新党
地域間で、情報の格差が生じない仕組みを構築する必要があると考えます。

◆日本共産党
資料費の削減が続くなか、統計書等の政府刊行物の購入を差し控える動きが広がっていると聞いております。政府情報の公開は国民の知る権利を保障するうえで必要なことであり、民主的な行政運営の基本に関わることです。国の立法、行政、司法のすべての機関は、その刊行する資料を、図書館の求めに応じて提供すべきです。刊行した機関が自らの責任で迅速、確実に図書館に直接送付する仕組みをつくるべきです。またこれは公共図書館だけでなく、学校や大学の図書館なども対象にすべきです。

◆自由民主党
図書館法第9条に関し、刊行物を発行する省庁及び地方公共団体の理解、協力を求めながら規定の趣旨の実現に向けて努めてまいります。

◆公明党
 ご指摘のように、政府が責任をもって主要な政府刊行物を図書館に確実に届ける仕組みを構築すべきと考えます。


6 県域を超えた図書館資料の相互貸借の経費は政府が負担すること

図書館活動の進展、コンピュータによる資料検索の普及により、図書館間の資料の相互貸借はますます拡大しております。図書館は全国的な連携協力、ネットワークによりサービスを実施する特質がありますが、年間190万件を越える資料が個々の図書館を越えて全国的に流通し、大学図書館からの借用も4分の1の図書館で実施しています。しかし地方財政の現状から、この流通経費が捻出できず、利用者からの資料要求を断る事態が生じています。
県内図書館間の流通については県立図書館が担うべきことですが、県を越えた流通については、その公益性に則り国が担うべきです。

質問:県域を越えた図書館資料の相互貸借の事業については、国が担うべきだと考えますが、ご見解をお尋ねします。

◆国民新党
地方が生き生きと自立するためには、国から地方への大幅な財源の移行と権限の委譲が求められています。このことを踏まえますと、出来るだけ国の関与をなくしていくことが重要であり、地方の自治体相互間でその仕組みを考えるようにすることを望みます。

◆日本共産党
図書館資料の全国的な流通を保障する責任の一端を政府は担うべきです。利用者や図書館にその経費を負担させるのではなく、政府は図書館関係団体と連携して、その合理的な仕組みをつくるべきだと考えます。

◆自由民主党
県域を超えた図書館間貸し出しのための図書館資料搬送料についても、地域の実情により、受益者もしくは図書館が負担すべきものと考えております。

◆公明党
 地方等の財政的な理由から市民が図書館サービスを受けられないような状況は、国が責任をもって改善すべきと考えます。


7 学校司書を配置すること

学校図書館に学校司書を配置している学校は4割以上となり、急速に増加しています。父母や教員の要求に応えて自治体が施策として実施していることで、大いに奨励されるべきです。しかし政府においては、これに対する具体的な支援措置がなされておりません。
また学校司書の多くは、単年度雇用の非常勤、請負契約による派遣など不安定な条件のもとで仕事に従事しています。学校図書館の専門業務を担うにふさわしい雇用となるよう改善を図るべきです。

質問:基本的には学校図書館法の改正を必要とすることですが、学校司書整備についてのどのような見解をお持ちですか。お尋ねします。

◆国民新党
今後、党として議論していきます。

◆日本共産党
学校司書は、こどもたちの読書や調べることへの支援、教員の豊かな授業づくりなどに資する専門的な職務を担っています。学校司書の配置により、学校図書館が機能するようになりつつあります。しかしその到達は十分とは言えず、文部科学省調査によっても常勤職員は非常勤職員の半分に過ぎません。
学校図書館に専任の専門職員を配置し、専門職にふさわしい法制度上の位置づけを図ります。政府にたいし、自治体まかせではなく、政府として司書配置をすすめる責任をはたすことを求めます。

◆自由民主党
いわゆる「学校司書」(学校図書館担当事務職員)は、各地方公共団体において、その実情に応じて配置されております。「学校司書」の配置については、各地方公共団体の実情に応じて判断されるべき性質の事項です。
しかしながら、学校図書館の運営に当たっては、校長のリーダーシップの下、司書教諭が中心となり、教員や事務職員、ボランティアが連携・協力して運営し、それぞれの立場から学校図書館の機能の充実を図っていくことが重要であると考えております。

◆公明党
 子どもたちに豊かな読書環境を提供するために、安定した雇用環境の下で学校司書を配置すべきと考えます。法整備を含め、学校司書の拡充に取り組んでまいります。


8 11学級以下の学校にも司書教諭を発令すること

学校の規模にかかわらず、すべての学校に司書教諭が発令されるよう学校図書館法を改正すべきです。また司書教諭がその職務に従事できるよう授業時間数等の軽減措置を行うなど条件整備を図る必要があります。

質問:11学級以下の学校にも司書教諭を発令すること、およびその職務に従事することができる措置を採ることについて、見解をお尋ねします。

◆国民新党
今後、党として議論していきます。

◆日本共産党 11学級以下の学校においても司書教諭を発令できるよう学校図書館法の改正をおこなうべきです。また司書教諭がその職務を十分はたせるような条件整備を進めるべきです。
なお、司書教諭発令により学校司書の配置を止める動きがありますが、学校図書館の機能を弱めるものであり、司書教諭、学校司書双方の配置をすすめる必要があります。

◆自由民主党
司書教諭は、学校図書館法上、12学級以上の学校には必ず置かなければならないこととされております。そのため、まずは12学級以上の学校に司書教諭の配置が定着し、その役割を十分に果たすことが重要であり、引き続き、発令の促進が図られるよう努めていくべきと考えております。
また、司書教諭の負担軽減については、各学校の校務分掌上の工夫等において対応していくことも一つの方途であると考えております。

◆公明党
 規模に関わらず全ての学校に司書教諭を配置すべきです。法整備や財政的な支援を含め総合的な支援策に取り組んでまいります。


9 学校図書館の資料費を増額すること

2007年度の公立小中学校図書館の図書整備費予算額は、地方交付税で積算した基準財政需要額を下回ることが明らかになりました。地方教育費調査によれば公立学校の図書購入費は年々減少しており、2007年度決算では197億円と1993年度の水準に落ち込んでおります。地方財政の三位一体改革のもと、学校図書館の資料費に充てることが極めて困難になっております。政府には、学校図書館への期待の高まり応え、資料費が確実に措置される施策の実施が求められます。
また学校図書館図書標準は、新規受入図書冊数を基準に加えるとともに、高等学校も対象とするなど現場に役立つ豊かな内容に改正すべきです。

質問:学校図書館図書標準は、新規受入冊数を基準に加え、高等学校図書館も対象にするなどの改正について、どのような見解をおもちでしょうか。お尋ねします。

◆国民新党
今後、党として議論していきます。

◆日本共産党
学校図書館図書標準が設定されて16年がたちました。「児童生徒の健全な教養を育成」するにふさわしい内容となっているか、今日の条件にもとであらためて見直すべきです。図書に限定することなく、新鮮で利用できる図書館資料のすべてにわたる内容とし、高等学校も対象とすべきです。それを踏まえた地方交付税措置を求めます。

◆自由民主党
「学校図書館図書標準」は、公立の義務教育諸学校において、学校図書館の図書の整備を図る際の目標として設定したものであり、学校図書館図書整備5か年計画を策定し、図書標準を達成するため予算措置を講じてきたところです。
しかし、最新の調査においても、義務教育諸学校の図書標準の達成率は未だ十分ではなく、平成19年度から新たな学校図書館図書整備5か年計画を策定し、地方財政措置を講じているところです。よって、まずは図書標準の達成に向けた取組の充実が重要であると考えております。

◆公明党
 学校図書館は子どもの想像力や思考力を育成する教育現場の中心でもあります。ご指摘のように学校図書館図書基準の見直しや高等学校も対象に加える等の環境整備は重要と考えます。


10 大学図書館の資料整備に関わる経費増額の措置を採ること

大学図書館は、紙、電子媒体を問わず高度な学術・専門資料の購入維持、学生用資料の確保などのほか、貴重書の保存、その電子媒体変換を可能とする経費が十分措置されておりません。それら経費に充てられる国からの国立大学の運営交付金、私立大学への助成金は年々削減され、公立大学への交付金は「地方分権」を理由に廃止されました。これに応じて図書館資料費が削減されている状況にあります。大学図書館の研究者、学生への資料・情報提供機能は、研究、学習活動の基礎的な基本的営為を支えるものです。

質問:国の国立大学への運営交付金、私立大学への助成金を増額し、図書館資料の充実につながるようにすべきものと考えますが、ご見解をお伺いします。

◆国民新党
国民新党としては、教育予算の大幅な増額や私学助成の増額を選挙公約に掲げています。

◆日本共産党
国立大学への運営交付金、私立大学への助成金の削減は、全国の大学の教育研究条件を悪化させ、大学の図書館も必要な資料が購入できない、学部段階の図書館がまともに運営できなくなるなど、深刻な実態が広がっています。
資料の充実をはじめ、大学図書館の拡充をはかれるように、大学の基礎的な予算を抜本的に増額すべきです。

◆自由民主党
厳しい国の財政状況の中、平成21年度予算において、大学における基盤的経費として、国立大学法人運営費交付金を1兆1,695億円、私立大学等経常費補助金を3,218億円確保しております。この運営費交付金の中では、例えば大学図書館における文化的・学術的な資料の保存等について、可能な支援を行っております。今後も引き続き、大学における基盤的経費の確保に努めてまいります。

◆公明党
 運営費交付金や私学助成の増額等により大学図書館の充実を図ることは大変に重要であると考えます。


11 資料に精通した専門職員の確保と職務に専念できる環境を整備すること

大学図書館においても、その6割は非正規職員であり、民間企業からの派遣職員によって多くの業務が担われている実態にあります。将来にわたる安定した管理体制だけでなく、専門的業務に従事する職員の雇止め、短期雇用などによりその専門性の継続が困難な状況にあります。研究者や学生の要求に応えることのできる体制づくりが必要です。

質問:大学図書館に経験豊かな専門職員の蓄積のできる体制が必要だと考えますが、見解を伺います。

◆国民新党
大学の図書館に限らず、公立の図書館には資料に精通した専門職員を常時何人か配置することが必要であると考えます。

◆日本共産党
図書館で働く人々が、短期雇用など不安定な労働条件にあり、これを改善することは労働者の権利を守ると同時に、図書館員の専門性を維持し高めるうえで欠かせない課題となっています。予算を増額し、図書館機能にふさわしく正規の専門職員をおく体制を確立する必要があります。また、労働者派遣法を改正して正規職員化をすすめるとともに、非正規職員の均等待遇を実現するために全力をあげます。

◆自由民主党
大学において、学術情報の流通・提供、資料の体系的な収集などについて、専門的な知識・技能を備えた専門職としての図書館職員は不可欠であると考えております。このため、各大学の経営・人事の戦略や特性に応じながら、そのような専門職員の育成・配置に適切に対応して行くことが重要であると考えております。

◆公明党
 研究者や学生の要求にこたえることのできる体制づくりのために総合的な支援策を検討してまいります。


12 日本の出版物市場における公共、大学、学校を合わせた図書館のシェアが10%以上となる資料費を確保すること

日本の出版市場は2兆1,273億円です。図書館の資料費は公共、大学、学校、それぞれの図書館を合わせてもやっと1,250億円程度です。わずか6%程度に過ぎません。視聴覚資料や電子資料、外国資料の購入に充てる額も含んでおりますから実際に国内出版物の購入に充てられる額はさらに小さい額となります。
これでは図書館が出版文化を支える、とはとても言えません。図書館が学術書や専門書、地方の出版物を一定程度購入できるようにして、出版を支えることが必要です。 政府には、出版文化の振興の視点からも図書館の資料購入費を措置する政策が必要です。

質問:この課題についてのお考えをお尋ねします。

◆国民新党
図書館が出版文化の一翼を担っていることは確かなことです。国民新党としては教育予算の大幅な増額や私学助成などを選挙公約に掲げています。

◆日本共産党
文字・活字文化振興法は、図書館資料の充実のための施策を講ずることを国に課しています(第7条第2項)。公共、学校、大学などの図書館全般にわたって資料費の削減が続いていることは、重大な問題です。出版文化を発展させる観点からも、資料費を大幅に増額することが必要だと考えます。

◆自由民主党
質問4、9及び10でお答えしたとおり、地方税の充実、地方交付税の増額など地方が自由に使える財源の充実確保及び大学における基盤的経費の確保に努めてまいります。

◆公明党
 図書館の資料費の拡充を図ることは、国民生活の向上にもつながります。関係予算の拡充など図書館振興へ向けた施策の充実に取り組んで参ります。


13 文字・活字文化に直接、接することが困難な障害者の権利を保障する

情報伝達の主要な媒体である図書等について障害者は直接「読む」ことができません。それを音訳、点訳などの媒体変換することが必要となります。著作権法による規制のほか、図書館の障害者へのサービスが極めて立ち遅れているために、「読む」ことができる障害者は非常に限られている実態にあります。
このたび著作権法が改正され、著作権者の許諾を求めることなく活字資料の音訳等の媒体変換が行えるようになりましたが、障害者の範囲やサービス提供の図書館を限定するような運用も検討されています。すべての出版物を、すべての障害者が利用できるような施策を政府が率先して実施すべきであり、図書館がそのサービスを主要に担えるよう条件整備を図るべきです。

質問:障害者の「読む」ことを保障するために、すべての館種の図書館において、多様な媒体に変換することができるよう改正著作権法を運用すべきと考えます。このことについての見解を伺います。

◆国民新党
賛成です。

◆日本共産党
障害者のために音訳など媒体変換することについて、権利者側との合意を得て著作権法が改正されました。その運用について、障害者の読書権を保障する観点で検討を重ね、国民的な理解を得て、多様な媒体への変換の実施をすすめるべきだと考えます。

◆自由民主党
平成21年の著作権法改正(平成22年1月1日施行)では、障害者のための著作物利用に係る規定について、障害者の情報格差を解消する観点から、対象となる障害の種類や対象施設等について範囲の拡大を行ったところです。
具体的には、例えば第37条第3項では、障害の種類について、視覚障害者のみから「視覚による著作物の表現の認識に障害がある者」(識字障害等の発達障害や色覚障害のある者などを想定)も対象としたほか、対象主体についても、従前の「福祉の増進を目的とする施設」から「福祉に関する事業を行う者」とし、その範囲を拡大しました。
実際の運用に当たっては、文字活字文化を担う著作権者への影響や規定の適用範囲の明確性の確保といった点を考慮しつつ、法改正の立法趣旨を踏まえた運用がなされることが求められるものと考えています。なお、「福祉に関する事業を行う者」については政令で定めることとなっており、先の考えに立って現在検討しております。

◆公明党
 これまでも公明党は障害者の権利を保障するために様々な施策を推進してまいりました。法改正による環境整備を含め、全ての障害者がいずれの図書館においても図書を閲覧できよう環境整備に取り組んでまいります。


14 図書館が人々の生涯学習を保障する役割を果たすことができるよう、その条件整備を図ることを求めます

ここまで図書館が直面している主要な課題について述べました。一言でいえば、公立図書館が少ないことのほか、いずれの図書館においても、図書館専門職員の配置と資料費が十分でないことが共通しています。図書館に充てる経費が十分ではないことの表れです。OECD比較で日本の教育費は極端に低い実態が明らかとなっています。このことの改善なくして図書館の充実はあり得ません。
資料・情報を提供する図書館の機能は、人々の学習活動にとって必要な基礎的基本的な「読む」ことを保障するものです。適切な資料や情報への公平なアクセスなくして教育、生涯学習はあり得ません。それはまた公共、学校、大学など地域にあるすべての図書館の連携協力の力によって実施すべきものです。
政府の教育振興基本計画には、そのような視点は欠如していますが、自治体における計画においては、このことを機軸に据え、地域の教育力を高めるために、すべての機関が連携した総合的な施策として策定されることを求めるものです。

質問:この考えについて、見解をお聞かせください。

◆国民新党
人々の生涯学習を支援する方法には、現在いろいろな考え方がありますが、中でも図書館の果たす役割は大きいと思います。そのための環境整備を図ることは必要であると考えます。

◆日本共産党
ご指摘のように、国の教育振興基本計画は、教育行政としてもっとも肝心な条件整備の計画が基本的に欠落しています。これをあらため、国の教育行政の中心に条件整備をすえます。図書館は生涯学習を支援する重要な役割を担っており、その整備が教育条件整備の計画の中に位置づけられることは当然です。
自治体の教育振興基本計画も同様に、条件整備を中心にすえるべきです。地域にあるすべての関係機関の連携協力もその大事な要素であると考えます。
なお、振興基本計画は、子どもたちに読書を強制するような「読書冊数の数値目標化」など、教育活動の方法や内容を拘束するべきでないと考えます。

◆自由民主党
公立図書館は、地域における生涯学習推進にための重要な拠点となっております。その機能を十分に発揮できるよう、上記のとおり、施設整備、職員、資料のための条件整備を図るとともに、過疎債の充実により、図書館の整備充実に努めていきたいと思います。

◆公明党
 公明党は生涯学習社会を構築するため大学等の教育機関や自治体、企業等が総合的に連携を図るための体制づくりを進めております。その中で公立図書館等の役割は大変に大きいと考えており、そのため図書館の条件整備に取り組んでまいります。


15 政党の政策、マニフェストを公共図書館において提供すること

最後に、政党の政策、マニフェストの国民への提供について伺います。
政党の政策やいわゆるマニフェストについての関心が高まっていますが、その現物を閲覧することは極めて困難な実態にあります。公共図書館には時事に関する情報の提供が図書館法で課せられ、また教育基本法にも政治教育を重視する条項があります。図書館は利用者から求められた資料は確実に提供することを任務としており、これに応える努力もしております。しかし公職選挙法により、総務省に届けられた「マニフェスト」や選挙用の文書図画は選挙期間中に閲覧に供することは肯定されていません。このことは、国民の政治参加を重視する上で妥当でないと私どもは考えております。

質問:このことについての見解とともに、御党の政策を明らかにした文書、冊子等を図書館に提供することについて、どうお考えかお尋ねいたします。

◆国民新党
国民の政治に対する関心を高めるために、各政党の政策やマニフェスト等が図書館で閲覧に供されることは、選挙期間中であると否とに拘わらず、本来、必要であると考えます。今後、公職選挙法改正の議論の中で党としてのスタンスを主張していきます。
また、我が党の政策等について記した文書・冊子等を図書館に提供することについては、法律上認められた範囲内であれば、異論はありません。

◆日本共産党
公職選挙法によって、選挙期間中に「マニフェスト」などが図書館で閲覧を制限されていることは、国民の知る権利を制限し、国民の政治参加を妨げる措置であり、ただちにやめるべきです。
日本共産党は、「マニフェスト」などわが党の政策を明らかにした文書、冊子等を図書館に提供することを、積極的におこないたいと思います。

◆自由民主党
選挙は、国民が主権を直接行使する重要な機会であり、政党の正式な公約集であるマニフェストについては、私どもも様々な方法により頒布に努めておりますが、必ずしも希望する方々が確実に入手でき得るものではありません。
現在はマニフェストの点字版については、点字図書館などで閲覧することができますが、そうした意味で、少なくともマニフェストについては(過去のものも含めて)、公立図書館において国民に閲覧の機会を保障することは、多様な選択肢の中からより良き未来を選択するという選挙の目的にも適うものと考えます。
なお、政党の考えを明らかにした文書や冊子等の提供については、通常、政党は機関紙誌を発行しておりますので、その提供は可能と考えますし、マニフェストと同じく一般の国民には入手し難い資料ですので、国民に対する情報提供という観点からも有意義と考えますが、政党により提供する・しないの対応の差が生じることも好ましくないため、まずは各党による話し合いが必要と考えます。

◆公明党
 政党の政策やマニフェストを図書館に提供し広く有権者が閲覧できる環境を整えることは国民の政治参加の上で大変に重要であると考えます。また、党の政策を明らかにした文書、冊子等を図書館に提供することについても上記の理由等から積極的に取り組むべきと考えます。