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2009年2月号


- 北から南から -


地震,そのとき図書館は

(A県△△市立図書館の事例から)

中沢孝之


1)12月X日 午前900 地震発生(かなり大きな揺れ)

 開架書架上の蛍光灯が吊り下がり式のため揺れが大きく,閲覧席の利用者は机の下へ,「棚の間からできるだけ離れる」「頭を守る」指示(開館直後で利用者は少なかった)。歩行は困難。図書やCDが棚から落下。

 

2)地震直後

 

3)地震後の対応

 

4)被害状況の確認

 

5)地震後に職員で話あったこと(反省会)  今回の地震は,本震のみで余震はなく,人的な被害は無かった。ただ,土・日曜の日中や平日の午後に起きたらと考えるとゾッとする。利用者をいかにケガなく,安全な場所に誘導できるかが,今後の課題となろう。また,設備関係に支障がでているため,今後このようなトラブルをなくすことが必要(予算的な裏付けが必要にはなるが)。 <課題として以下のような意見が出された>

 

6)地震が起きたら,あなたの館では人はどう動くか?

 開館直後に大きな地震が発生したという想定で,図書館が受ける(であろう)被害とその対処を,今まで各地で収集してきた事例と関係者からの話などを参考に誌上シミュレーションの形でまとめてみた(最悪のケースではないが比較的起こりうるケースだと思う)。

 これをあなたが勤務する職場に当てはめて考えてもらいたい。地震が起きたらどうなるのか,そして,どうするのか案外知らなくて,とっさに動くことができないことに気づくはずである。図書館内のどこが弱くどこに見落としがあるのかも再確認し,もう一度地震への対策や自館においての安全管理を見直すことが大切な時期にさしかかっている(これを読んだ人だけが実践するのではなくて,図書館で働くすべての人が地震対策に関わることが重要であるということを付け加えておきたい)。地震が発生したら,誰がどのように動くかを確認し意識を高めることから始めてほしい。実際に動くことが大切だが,災害マニュアルを基に定期的に全員で話し合うことだけでも相当違う。前述したように,このシミュレーションも最悪のケースは想定していない。土曜日だったら,あるいは夜間開館時間だったら,子どもたちが見学している最中だったら…と考えるだけで恐ろしいこれらの問題をクリアして行かなければ図書館での被害は甚大なものになるだろう。地震は必ず“発生する”ことを前提に対策を練ることが肝心である。利用者と自らの命を守るためにも,館や地域の実情に合ったさまざまな備えをすることが急務だろう。

 地震に対する取り組みの一つとして。2007年度から一般向けに提供されている気象庁の緊急地震速報を紹介したい(詳細は気象庁HP1))。テレビやラジオといったメディアでも地震発生時には速報が流れているのでご存知の方も多いだろう。緊急地震速報の精度や運用についてさまざまな意見もあるようだが,どのようなものかを理解しておいて損はない。緊急地震速報のサイトの中の「一般向け緊急地震速報の利用の心得」には「(不特定多数の者が出入りする施設では)施設の従業員等の指示に従うことを基本とする」と書かれており,図書館も例外なく利用者の命を守らなくてはならない。緊急地震速報を使った対応訓練の方法も気象庁のHPに紹介されているので,避難訓練時の教材にするのもいいだろう。また,「緊急地震速報の利活用の手引き(施設管理者用)Ver.10」もダウンロードできる。これは,地震対応マニュアル作成に役立つのでぜひ目を通してもらいたい2)。

 2004年に発生した新潟県中越大震災では新潟県内の図書館が被害を蒙った。以後,毎年のように大きな地震は発生しているが,図書館では図書の落下や施設の破損にとどまっており,幸いなことに人命が危険にさらされる被害は確認されていない,しかし近い将来,大きな地震が発生する可能性は捨てきれない。何度も言うが,地震発生時には利用者の命を守り被害を最小限に抑えることが図書館員に求められている。

 


1)気象庁「緊急地震速報について」http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/index.html
2)緊急地震速報の利活用の手引きおよび緊急地震速報受信時対応行動訓練用キット http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/usage/index.html

 

 

(なかざわ たかゆき : 草津町立図書館)
[NDC9 : 013 BSH : 地震]

 

 

図書館雑誌 2009年2月号

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