[特集]図書館と災害被害・その教訓


はじめての大きな地震に遭遇して

土井道子・端紀美枝


 2004年12月1日からの市立留萌図書館の資料展は,「2004 天災」と題して,地震・雪害・台風の新聞記事などを中心に開催した。

 留萌地方は,2004年9月の台風18号で手痛い打撃を受けた。1988年に起きた水害以来16年ぶりに出会った災害であった。また,留萌で起こり得る北見の豪雪による市民生活のマヒ,雪の季節を迎えた新潟の地震災害地など,予測できずいつ身近に起きるかわからない天災を振りかえり,今後の災害の教訓にしたいという展示の意図があった。

 しかし展示を開始して2週間後の12月14日,留萌地方に地震が発生し,あまりの偶然にびっくりしてしまった。

 開館時間中に起きた地震で,職員はかなり動転した。留萌地方は,地震は関係ないと多くの住民が信じ込んでいた。

 留萌市は,市議会開会中のことであり,議場はかなりゆれて騒然となった。

 羽幌町役場は,庁舎のロビーのガラス3枚が破損し,町内のガラス屋さんのガラスの破損等,羽幌町の総被害額は940万円であった。

 しかし,羽幌町公民館の2階の図書室では,高さ1.8m,長さ4.5mほどの19架の開架書架が将棋倒しとなり,2万冊以上の図書が散乱した。

 このときの利用者は,本を探していた27歳の男性利用者1人だけであったが,転倒してきた書架に挟まれてしまった。男性は,公民館の男性職員3人によって引き出されたが,肋骨を折るケガをして病院に運ばれた。

 羽幌町公民館図書室では,強い地震を想定していなかったことから,書架には転倒防止策が施されてなく,もし子どもの利用者がいたらもっと被害が大きくなっていたかもしれない。翌日からすぐに復旧作業が始まり,背中合わせに並ぶ書架を釘と平金でとめ,通路を挟む書架同士も金具や渡り木でつなぎ,梁をつくって応急措置で様子を見ることにした。これで万全とはいかないが,今後今回程度の地震では十分耐えられると思われる。

 復旧作業は書架の転倒ということで全部の本を引っ張り出しながら,書架の修理をしていくという作業を公民館職員が総出で行った。このとき,全員に本を大まかに書架に詰めてもらい,翌日から開館に向けて図書室のしくみがわかる図書室職員3人だけで図書の配架作業を行ったが,本の大きさに合わせて棚の位置を変えながらの作業は予想以上に重労働であった。

 これは,棚の位置を変えながらの配架作業ということで,人手ばかりあっても仕方ないことと思い実施したが,後になって考えてみると,図書室の仕事を知らない人でもやり方を指示しながら作業していく方法があったと思った。

 留萌市は,新館建設が1990年であり,その時点で開架書架は床と書架を固定する工事をしたが,その2年後さらに開架6段書架すべてをレールでつなぎ転倒を防止した。書架を増設するときも必ずこの工事を実施した。

 図書館内には,防災無線が引かれており,災害などのお知らせは,館内全体に通報できるようになっている。

 しかし,図書館内には,書架だけでなく移動するブックトラックが本をたくさん乗せた状態で随所に置かれているので,開館中の作業は必ずストッパーを下ろしておくことが大事である。

 児童や赤ちゃんコーナーは,死角にならず常に目配りできるような配置にすることや,高い書架には,重量のある本は置かないことも災害を未然に防ぐことになるであろう。

 そして,不特定多数の市民と向き合う職員は,この災害時を想定した避難訓練を消防署などと連携をとって定期的に実施していくことも重要な図書館業務であることを痛切に感じた地震であった。

 

(どい みちこ : 市立留萌図書館,はた きみえ : 羽幌町公民館図書室)
[NDC9 : 012.29 BSH : 1.地震災害 2.災害予防]

 

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図書館雑誌 2005年5月号

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