[特集]図書館と災害被害・その教訓


特集にあたって

平田紀子


 度重なる台風に,新潟県中越大震災(地震)や釧路沖地震など,2004年は各地で天災が多発した年と言えます。世界的に見ても,年末のスマトラ沖地震は未曾有の災害として記憶に残るものでした。今年に入ってからも,福岡県西方沖で大きな地震が起こり,九州大学附属図書館では,10万点の資料が書架から落下し,またガラスが割れる,壁面にひびが入るなどの被害があったと伝えられています。

 本誌は,2004年3月号で「図書館と災害・安全対策」と題する特集を組んでいます。この特集は,2003年9月の十勝沖地震の被害報告のほか,図書館施設・家具の地震対策や,災害時の図書館の役割など,多面的な観点から災害について考えようというものです。今回は,災害を経験された図書館の方に被害の状況を伺い,図書館が住民に対してできること,被災した図書館に対して図書館関係者ができることを考える特集としました。復旧作業でお忙しい中,執筆・取材にご協力いただきましてありがとうございました。

 徐々に明るい話題も聞かれるようになってきています。今回執筆いただいた河原茂記氏のレポートの続報として,台風23号による浸水の影響で休館していた京都府大江町立図書館では,5か月ぶりに再開したというニュース1)が報道されています。また,同じく河原氏のレポートにある舞鶴市立西図書館加佐分館では,浸水した児童書を購入・寄贈により補充し,新たに利用に供することにしたとのことです2)

 なお,中越大震災については,本誌に掲載した久保田昌代氏のレポートのほか,安原明子氏のレポート3)でも復旧までの様子が詳述されており,併せて一読されることをお勧めします。また,IFLAのホームページでは,スマトラ沖地震に際して,現地の図書館でどのような物資や助力が必要とされているかについてまとめられています4)。こちらも図書館関係者に何ができるかを示唆する資料です。

 これまでの災害で被害に遭われた多くの方々には心よりお見舞い申し上げます。今回の特集を機会に,すべての図書館員の方々が,自館での災害に対する備えを今一度点検していただければと思います。また,今回の特集ではお話を伺うことができなかった被災地の図書館の方からも,引き続きレポートをお寄せいただき,情報交換をすすめることができれば幸いです。

 


1)京都新聞(電子版),2005年3月23日
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2005032300044&genre=K1&area=K60
2)京都新聞(電子版),2005年3月14日
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2005031400172&genre=K1&area=K60
3)安原明子「長岡技術科学大学附属図書館における新潟県中越地震の被害と復旧プロセス」『大学の図書館』Vol.24, No.1 p.11-13
4)http://www.ifla.org/V/press/tsunami-SriLanka-report4.htm

 

(ひらた のりこ : 本誌編集委員,国立国会図書館)
[NDC9 : 013 BSH : 1.災害 2.図書館]

 

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図書館雑誌 2005年5月号

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