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スマトラ沖地震・津波の救援の訴え

−被災地図書館の状況と要請−


 国際図書館連盟(IFLA)ラゼロカ会長は12月30日,スマトラ沖地震・津波による被害について,次のような要旨の救援を求める緊急の訴えを出した。

 津波による被害を受けた国々の皆さんに,IFLAを代表して心からのお見舞いを表明する。IFLAは,さまざまに行われている国際的な救援行動に協力するとともに,IFLA加盟のメンバーに実現可能な方法により救援をすることを訴える。復旧支援を求める情報を得たならば直ちに行動を起こしていただきたい。図書館サービスの重要性について確信をもち,医療,教育などに必要な情報提供ができるよう図書館の回復を支援する。

 http://www.ifla.org/V/press/tsunami04.htm

 またスリランカ国立図書館長からは1月10日,次のような要旨の支援の訴えがあった。

 スリランカ災害対策委員会は津波により破壊され,または被害を受けた図書館や情報サービス機関に緊急支援が必要な物資・事項のリストを作成した。これはその後の復興にも必要なものである。しかしまだ交通が途絶え,被害全容の調査は済んでいない。

 

●支援の必要なリスト

金銭 : 復旧のための地元住民を雇用する経費。建物の再建,修理。ローカルに出版された資料の購入費。備品,設備。外国の専門知識を得る経費。

移動図書館 : 利用者に迅速にサービスを実施するために。

備品,設備 : コンピュータ,データベース,モデム(電話線は迅速に回復している)。家具,視聴覚設備,電子機器(ファックス,複写機)。乗り物。

資料 : 被害を受けた住民は英語を知らないので,シンハラ語,タミール語の資料。ただし幼児向けの絵本は英語でも歓迎される。被害を受けた地域の仕事に資する資料(漁業,ココナツ繊維製品,ボートなどの大工,モーター修理,カシューナッツ耕作)。外国語の基礎的学習資料。宗教書。

専門的技術をもった人 : ドキュメントの回復,保存。図書館情報学の国立研究所,大学等。

資料保存 : 専門的な知識,人。

 今後ももっと支援をお願いするので,このサイトは見続けてほしい。

 http://www.ifla.org/V/press/tsunami-SriLanka-report4.htm

 また国立国会図書館からは,IFLA/PAC(資料保存)アジア地域センターとして他のセンター等から得た情報の提供があった。

  • インドネシア,マレーシア,タイ,ミャンマーの国立図書館には影響がなかった。
  • モルディヴの国立図書館にも何らかの影響があったと考えられる。
  • スリランカでは,国のほとんどの図書館が被害を受け,蔵書の保存のための手助けを必要としている。スリランカ国立図書館には,海水による被害を受けた図書館資料への対処法を知りたいとの訴えがあったので,よごれを取り除き,海水を取り除くためにきれいな水で洗い,乾かすように指示した。PACオセアニア・東南アジア地域センターは,真水が手に入らない場合は,まず乾かし,後で塩分を取り除く洗浄を行うよう指導し,水害処理に関するガイドラインや文献を教示した。
  • インドは文化財,図書館,文書館の被害がまだ十分つかめない(インド文化財保存機関協議会)。

 

 

 


「スマトラ沖大地震・大津波被災文化遺産救済支援五人委員会」がアピール


 慶應義塾大学の高山正也教授などによる標記委員会が次のようなアピールを発表した。

 私たち,被災文化遺産救済支援五人委員会は昨年12月26日に発生したスマトラ沖大地震・大津波で被害を受けた方々に心より哀悼の意を表します。そして,今も多くの行方不明者や,生活の基盤を失った被災者が大勢おられることから,最大限の支援が今後も続けられることを願うものです。

 私たちは,ICA(国際文書館評議会)およびIFLA(国際図書館連盟)両事務局長のアナン国連総長への被災地域での歴史的,文化的諸資料の保全についての要請にみられますように,この未曾有の災害に,それぞれの専門的立場からも救援支援活動を行う責務があることをあらためて思い,世界の救援の輪に加わることを表明し,国内の諸学会,団体に協力を呼びかけます。

 当面の五人委員会の役割と支援内容としましては,

  1. インド洋大津波被災該当国の文化遺産救済,保全に関し英知をもって支援していく推進・調整役となること。(現在,対象国はインドネシアのみ。)
  2. 国内関係学会,団体に被災文化遺産救済,保全活動に要する諸費用の寄付を呼びかけること。
  3. 被害状況が現在もほとんど把握されていないことから,被害当事国の関係者により現地被害調査を行うことを物心両面で支援すること。
  4. 日本での災害時の文化遺産救出経験を助言し,実践的な救済活動の立ち上げをサポートする専門家を派遣すること。
  5. 現地被災文化遺産救済活動に必要と思われる緊急資材を調達し現地に届けること。
  6. 実践的な被災地での救済,保全作業をサポートする技術専門家を派遣すること。
  7. 今回の未曾有の災害の教訓を生かすために,被害該当国全域の「文化遺産被害状況報告書」の製作と刊行を支援すること。
  8. その後の,具体的支援内容については,1〜5の進捗状況を見て決めるものとする。
  9. 当面の五人委員会の事務局はTRCC東京修復保存センターに置く。現地状況,支援活動に関する最新情報は,www.trcc.jpに掲載されています。

呼びかけ人 : 青木繁夫(東京文化財研究所国際文化財保存修復協力センター長),安藤正人(国文学研究資料館アーカイブズ研究系教授),斎藤照子(東京外国語大学教授),坂本勇(TRCC東京修復保存センター代表),高山正也(慶應義塾大学教授)

<五十音順>


図書館雑誌 2005年2月号

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