観光情報リテラシー
  高尾山が『ミシュラン』の三ツ星観光地になった

観光情報を収集するのに「観光ガイドブック」を活用するのは誰でも行うことであろう。しかし,日本の観光ガイドブックや旅行雑誌,旅行案内書には批判が多い。これは,編集方針と掲載広告に関係していると思われる。ここでは,編集方針のうち、ランキングという観点からの情報リテラシーに焦点をあてて,具体的に考えてみよう。

 フランスの『ミシュラン』といえば観光地やレストランを星の数で格付けすることで有名である。そのミシュランが遂に日本の観光ガイドを出版した。2007年3月に発行されたのはフランス語版(Michelin: Japon;Voyager pratique,488p)だけで,11月には東京を対象としたレストランガイドを日本語と英語で発行する予定という。(朝日新聞2007年4月26日付け朝刊)

 ミシュランでは星★の数で格付けしており,★よい,★★とてもよい,★★★最高となっている。そこで三ツ星に選ばれたのは,姫路城,京都,厳島神社,日光,富士山,奈良,東京などであるが,東京の他に「高尾山」が選ばれているのは驚きである。「大都市近郊にこれだけ自然豊かな山があるなんて,パリでは信じがたいのです」とガイドブックの取材をしたキャップは言う。(朝日,前掲)

 高尾山への最短ルートである京王線の沿線に長く住み,初詣,夜間ハイク,春秋の自然散策と家族も含めて楽しんできた者にとっては,ようやく高尾山の良さが,世界に認められたと,大変喜んでいる。

 しかし,個人的な感情からだけでなく,三ツ星にふさわしい山であることは客観的に保障できる。世俗的な表現を使えば「速い,安い,おいしい」の三拍子が揃っていることである。

まず「速い」は,京王線新宿駅から特急に乗れば,47分で高尾山口駅(高尾山の麓)に到着する。そこから山頂までは,徒歩でもケーブルカーでも観光リフトでも,自分に適した方法で行くことができる。

つぎに「安い」は,新宿から京王線で370円である。往復でも740円で行ける。こんなに安く行ける観光地はほとんど無い。

そして観光地そのものの評価であるが,これが「おいしい」。空気がおいしい。自然がおいしい。上に引用した「自然豊かな山」である。行ってみれば誰にでも理解できる。

高速道路の圏央道が高尾山の北側の麓まで伸びて,まもなく開通するが,これが高尾山をどのように貫いて進むのか。その工法によっては,三ツ星から転落することも考えられるが,そのような事態にならないように見守りたい

(戸田光昭/駿河台大学名誉教授)


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