1類 10版試案



                                                                下線:改訂箇所
 はじめに
 人間の精神界にかかわる著作を収める1類「哲学」は,短い期間での変動は少ない分野か
もしれない。しかし,心理学においては,近年,細分化の傾向が著しくみられる。10版に
おいてはできる限り変化を取り入れた。
 以下,順を追って,試案について述べる。

100 哲学
   *特定主題についての哲学は,各主題の下に収める 例:161.1宗教哲学,321.1法
        哲学
      *芸術哲学.美学→701.1
 9版では特定主題の哲学の例を注参照の形で多く列記していたが, NDC全体の注記の表記
と統一するため,7版,8版のように1,2個を挙げるに止め,表記も改めた。
 『図書館雑誌』2010.9.の100哲学の注記例:116.1宗教哲学は161.1の誤記でした。
 美学は701.1に項目があり,100の注記から削除することを検討したが,芸術哲学.美学は,
学問体系上は哲学の下に位置するため,701.1を「を見よ」参照として残した。
 
〈110/130 哲学〉 
   *哲学各論は,111/118に収める
   *各国の哲学・思想は,120/139に収める 
 収めるべき分類記号を指示する注記を付した。

110 哲学各論
   *111/118には,包括的な著作・概論・歴史などを収め,個々の哲学者・思想家の著
        作で111/118の主題に関するものは,120/139に収める 例:135.54サルトル著
        「実存主義とは何か」;ただし111/118に収まらないものは,各主題の下に収める 
        例:951.6サルトル著「マラルメ論」
 
 9版では,個々の哲学者・思想家の著作で111/118の主題に関するものは,西洋の哲学者
の著作のみを想定し,131/139に収めるとしていた。
 しかし,9版解説末尾の1類概説において「哲学各論(110/119)は西洋哲学の体系によ
っており,そこには概説,歴史などを収め,個々の哲学者の学説は131/139に収める(日本
の現代哲学者(121.6)など,西洋以外の現代哲学者の学説にもおよぶことがある).」と述
べられているように,西洋以外の哲学者においても111/118の主題に関する著作は存在する。
そこで西洋以外の哲学者の著作においても,西洋の哲学者の著作と同様の措置とするよう注
記を改めた。

115.3 合理主義[理性論.唯理論].理性 
 項目名に「理性」を追加した。「合理主義」の同義語として「理性論」「唯理論」を付記
した。  
 
116 論理学.弁証法.方法論 
 9版で項目名「弁証法」の同義語としていた「弁証法的論理学」は一般的な名辞ではない
ため外し,索引語とする。

116.9 構造主義
 9版では135.5を「をも見よ」参照としていたが,135.5のみを参照とする必要はないため
削除した。

[119] 芸術哲学.美学 →701.1 
 項目名に「芸術哲学」を追加した。

121.7 昭和時代.平成時代 [新設] 
 
132.4  神秘主義者:アグリッパ Agrippa von Nettesheim,Heinrich Cornelius,1486?-1535,
     ヴァイゲル Weigel,Valentin,1533-1588,ニコラウス・クサヌス Nicolaus 
     Cusanus,1401-1464,ベーメ Bohme,Jakob,1575-1624
 ベーメについて,原綴と生年を訂正した。

134 ドイツ・オーストリア哲学
 この箇所は項目名に学派と時代が入り混じり,区分原理が異なっている。134.6以降を再
編する検討を重ねたが,継続性も考慮し,9版のままとした。
 
135.5 20世紀−:アランAlain,1868−1951,マリタン Maritain,Jacques,1882−1973 →:
         114.5 
     *.53/.57以外の個々の哲学者は,ここに収める
 9版では116.9を「をも見よ」参照としていたが,116.9の「をも見よ」参照の削除に伴い,
削除した。

140 心理学
   *特定主題についての心理学は,各主題の下に収める 例:321.4法心理学,490.14
        医学と心理 
 9版では,特定主題の心理学の例を注参照の形で多く列記していたが,100の注記と同様の
表記とした。

145 異常心理学
 異常心理学は,「常態とは異なる心的現象を研究対象とする心理学の一分野」(広辞苑)
であり,精神病理学とほぼ同義である病的障害としての異常と,催眠状態や薬物における幻
覚など,正常者における例外的状態としての異常を扱う。また異常という概念は相対的,流
動的に定義されるものであり,異常と正常を画然と分ける基準はないため145.5/.8の項目
名を見直した。

145.5 幻覚.錯覚 
 9版では「知覚の異常」が項目名,「幻覚」「錯覚」が小項目名であったが,「幻覚」「錯
覚」は,ともに「知覚の異常」とは異なる。「知覚の異常」を削除し,「幻覚」「錯覚」を
項目名とした。

145.6 記憶障害.思考障害 
 項目名を「記憶の異常.思考の異常」から改め,関連分類項目名「妄想」「健忘症」「失語
症」を削除した。

145.7 意欲障害 
 項目名を「意欲の異常」から改めた。小項目名を削除し,145.7以下を細分した。

   .71 自殺.自傷行為 [新設]

   .72 摂食障害:不食,過食,異食 [新設]

   .73 異常性欲.性的倒錯:フェティシズム,衣装倒錯,露出症,窃視症,窃触症,小児
          性愛,サディズム,マゾヒズム [新設]

   .8 解離性障害.転換性障害:多重人格障害,ヒステリー
 「人格の異常」を項目名から削除し,上記項目名に改めた。
 
146.1 精神分析.深層心理学 
     *精神分析療法→146.815 
 療法としての精神分析を収める場所を示す注参照を付した。

146.8 カウンセリング.精神療法[心理療法]  
     *カウンセリングの一般理論はここに収める;ただし,教育相談としてのカウン
            セリングは,371.43に収める
     *医学としての精神療法は,医学の各主題の下に収める     
 9版で項目名としていた「心理療法」を「精神療法」に改めた。同義語であり,ともに浸
透しているが,より広く使用されている「精神療法」を採用した。
9版では2つに分かれていたカウンセリングについての注記を,セミコロンを使用してま
とめた。
 この分野は細分化の傾向が著しく,出版点数も多い。146.8の下を細分し,代表的な療法
を項目名とした。
 なお,146.8以下は146.82に児童という治療対象と,146.89にカウンセラーという行為者
が混在し,区分原理が異なっている。10版で大幅に改める案も検討したが,9版との継続性
を考慮し,146.8以下を細分するに止めた。

  .81 各種の精神療法[心理療法] [新設]
  
  .811精神療法:ゲシュタルト療法,行動療法,交流分析,認知療法 [新設]
 
  .812 集団精神療法:家族療法,サイコドラマ(心理劇療法) [新設]
 
  .813 芸術療法:音楽療法,絵画療法,箱庭療法 [新設]
        *アニマル セラピー,ダンス セラピー,読書療法は,ここに収める
   
   .814 催眠療法 [新設]

   .815 精神分析療法 [新設]

   .816 東洋的精神療法:自律訓練法,内観療法,森田療法 [新設]

   .82  児童の精神療法[心理療法]
    *ここには,児童の精神分析,精神療法,カウンセリングを収める
    *親子関係も,ここに収める
    *心身障害児も,ここに収める
    *児童心理<一般>→371.45 
 146.8の項目名変更に伴い,項目名を変更した。

147.7 心霊療法 
 項目名を「その他の心霊現象・心霊術」から改めた。それに伴い,「いわゆる心霊療法
は,ここに収める」という注記を削除し,また147.9を新設した。

   .9 その他の超常現象 [新設]

148 相法.易占
 148以下を占う手段によって整えるため,項目名を改める,注記を付すなどした。
なお,148.7の項目にあった「相性」は,占う手段により,148.1/.9に収める。
 
148.3 姓名判断.墨色判断
    *文字による占いは,ここに収める
 注記を追加した。

   .4 陰陽道[五行.九星].易
 項目名を改めた。 

   .5 方位:家相,地相,墓相
    *風水は,ここに収める
 注記を付した。

   .6 幹枝術[干支].四柱推命 
 干支による占いをここにまとめ,148.7は削除した。

[149] 応用心理学
   *特定主題についての応用心理学は,各主題の下に収める;140の注記を参照 
   *別法:ここに集め,綱目表に準じて細分 例:149.32法心理
100の注記と同様の表現に注記を改めた。

150 倫理学.道徳
151.2 当為.意志の自由.行為.定言命法
 9版で項目名としていた「形式主義」の意味内容は広すぎるため,「定言命法」に改めた。
索引語は残す。

153 職業倫理
   *特定の職業倫理は,各職業または各主題の下に収める 例:327.14弁護士の倫理,
        490.15医療倫理 
   *別法:ここに集め,綱目表に準じて細分例:153.32弁護士の倫理,153.49医師の倫理
 9版と同じ内容だが,1番目の注記をわかりやすいように改めた。また例を2番目の注記と
同じ主題にして付し,別法を採用した場合の置き場と対比させた。

159   人生訓.教訓
   *哲学者の人生論は哲学の下に収め,文学者の人生論は文学の下に収める
   *処世法は,ここに収める
 この箇所は出版点数が多く,また区分原理が異なっているため,分類記号の細分や,項目
名,注記をより具体的にし,対象の年齢を明確にする案も検討した。しかし,「人生訓」と
いう項目においては年齢の明確な区分は求められないこと, 9版との継続性を考慮し,中間
見出しの挿入と注記を付すに止めた。

159.4 経営訓
   *経営者・ビジネスマンのための教訓は,性別・年齢の別なく,ここに収める
   *経営論,経営者論→335/336
 1番目の注記を「年齢・世代の別なく」から「性別・年齢の別なく」に改め,優先順位を
明確にした。例えば,女性経営者は159.6ではなくここに収める。

〈.5/.79 対象別〉
 この箇所は区分原理が異なるため,中間見出しを設けた。

159.6 女性のための人生訓
     *ここには,159.5,159.7/.79に該当しないものを収める
 注記を付して年齢,性別の優先順位を明確にした。例えば,女子児童のための人生訓は
159.5に収める。

180 仏教
180.9 チベット仏教[ラマ教]  
 「ラマ教」は,「チベット仏教」の俗称のため項目名を改めた。項目名から「三階教」を
削除した。索引語には残す。

182.9 仏跡
    *ここには,釈尊の遺跡を収める 
注記を付し,釈尊の遺跡に限定した。

185.9 寺誌.縁起
    *地理区分
    *各宗共有寺院,単立寺院は,ここに収める
    *個々の寺誌は,各宗派の下に収める
 注記を付した。

190 キリスト教
198.25 教会組織.聖職者.修道院.修道士.神父 
 項目名を追加した。
 
   .35 教会.聖職.牧師 
 項目名を追加した。

199 ユダヤ教
   .1 教義 [新設]
   .2 ユダヤ教史.伝記 [新設]
   .3 聖典 [新設]
    *ここには,ミシュナ,タルムードなどを収める
    *旧約聖書 →:193.1
   .4 信仰録.説教集 [新設]
   .5 会堂:シナゴーグ [新設]
   .6 典礼.儀式.戒律 [新設]
   .7 布教.伝道 [新設]
   .8 教派 [新設]
 ユダヤ教について,今後も出版点数の増加が見込まれるため199以下を細分した。旧約聖
書については参照を付した。

(文責・田村由紀子: JLA分類委員会委員,国立国会図書館)