2018年著作権法第37条第3項の改正とそれに応じて改正された政令・省令について (2019年1月1日施行、法改正2018年5月、政令公布2018年12月) 1 第37条第3項改正の具体的内容  (1)対象者の拡大 【以前】視覚障害者や発達障害等で著作物を視覚的に認識できない者が対象 【改正後】肢体不自由等を含め、障害によって書籍を読むことが困難な者が広く対象  (2)提供方法の拡大 【以前】貸出、自動公衆送信、譲渡(別条文) 【改正後】貸出、公衆送信、譲渡→公衆送信は従来の自動公衆送信に加えて、メール添付による送付など個別の配信を認めるもの。  (3)具体的条文の変更 「視覚障害者その他」を「視覚障害その他の障害により」に 「に障害のある」を「が困難な」に 「自動公衆送信(送信可能化を含む。)」を「公衆送信」に  (4)ボランティアによる製作を認めること  製作できる主体は政令で定められているので、政令を改正して対応。(下記参照) 2 改正著作権法第37条第3項 (改正部分(3ヶ所)を『 』で囲んだ。)  (視覚障害者等のための複製等)  第三十七条 3 『視覚障害その他の障害により』視覚による表現の認識『が困難な』者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、 公表された著作物であって、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの (当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、 専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、 当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は『公衆送信』を行うことができる。 ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。 3 法改正に合わせて公布された政令、省令  (1)著作権法施行令(政令) (視覚障害者等のための複製等が認められる者) 第二条 法第三十七条第三項(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。  一 次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあっては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあっては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)   イ 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項の障害児入所施設及び児童発達支援センター   ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設   ハ 国立国会図書館   ニ 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設   ホ 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)   ヘ 学校図書館法(昭和二十八年法律第百八十五号)第二条の学校図書館   ト 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム   チ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項に規定する障害者支援施設及び同条第一項に規定する障害福祉サービス事業(同条第七項に規定する生活介護、同条第十二項に規定する自立訓練、同条第十三項に規定する就労移行支援又は同条第十四項に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設  二 前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項に規定する法人をいう。以下同じ。)で次に掲げる要件を満たすもの   イ 視覚障害者等のための複製又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあっては送信可能化を含む。ロにおいて同じ。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力及び経理的基礎を有していること。   ロ 視覚障害者等のための複製又は公衆送信を適正に行うために必要な法に関する知識を有する職員が置かれていること。   ハ 情報を提供する視覚障害者等の名簿を作成していること(当該名簿を作成している第三者を通じて情報を提供する場合にあっては、当該名簿を確認していること)。   ニ 法人の名称並びに代表者(法人格を有しない社団又は財団の管理人を含む。以下同じ。)の氏名及び連絡先その他文部科学省令で定める事項について、文部科学省令で定めるところにより、公表していること。  三 視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、当該事業の実施体制が前号イからハまでに掲げるものに準ずるものとして文化庁長官が指定するもの 2 文化庁長官は、前項第三号の規定による指定をしたときは、その旨をインターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする。  (2)著作権法施行規則(省令) 第三章視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人の公表事項等 (公表事項) 第二条の三 令第二条第一項第二号ニの文部科学省令で定める事項は、次に掲げるものとする。 一 視覚障害者等のために情報を提供する事業の内容(法第三十七条第三項(法第八十六条第一項及び第三項並びに第百二条第一項において準用する場合を含む。)の規定により複製又は公衆送信を行う著作物等の種類及び当該複製又は公衆送信の態様を含む。) 二 令第二条第一項第二号イからハまでに掲げる要件を満たしている旨 (公表方法) 第二条の四 令第二条第一項第二号ニの規定による公表は、文化庁長官が定めるウェブサイトへの掲載により行うものとする。 (参考 文化庁長官が定めるウエブサイト)  「教育利用に関する著作権等管理協議会」のホームページ内 著作権法施行令第2条第1項第2号の視覚障害者等のための複製・公衆送信が認められる者の一覧 https://kyoiku-forum.sakura.ne.jp/dai2jyo/