2002日図協第86号
2002年4月25日
総務大臣 片山虎之助 様
社団法人日本図書館協会
理事長  竹 内  セ

盲人用郵便物の無料制度、ならびに障害者用冊子小包の割引制度 の存続を求める要望

 

 拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。  

 平素より、図書館事業の振興のためにご尽力を賜り、衷心より感謝申し上げます。  

 さて、政府においては、郵政事業改革の検討が進められております。その内容によっては、図書館における障害者サービスに重大な影響をもたらします。  

 全国の図書館からの意見をふまえ、別紙のとおり要望をいたします。事情ご賢察のうえ、適切な施策を実施されるようお願い申し上げます。

敬具
                   
社団法人日本図書館協会
                 104‐0033 東京都中央区新川1−11−14
03−3523−0811
FAX 03−3523−0841




2002年4月25日

盲人用郵便物の無料制度、ならびに障害者用冊子小包の割引制度 の存続を求める要望

          
社団法人日本図書館協会
 

 政府・総務省においては、郵政事業の公社化にともない、郵便法に規定されている第三種・第四種郵便物の割引制度の廃止を検討していると伝えられています。これが事実とすれば、公共図書館や点字図書館等における図書館サービスに大きな影響を与えることは必至であり、図書館における障害者サービスの後退を招くものと懸念を抱いております。
 

 点字図書館では、視覚障害のために一般の図書(墨字図書という)が利用できない人のために、点字図書や録音図書を全国の利用者に郵送貸出しをしてきました。また公共図書館においても、視覚障害者への点字図書、録音図書を郵送貸出しするとともに、図書館に来館することが困難な重度の身体障害者のために図書館資料を郵送による貸出しをしてきました。  公共図書館は、地域のすべての住民に資料、情報を確実に提供することを基本的な使命としております。このことを、図書館に来館することの困難な障害をもつ人たちに実現するためには、郵送による貸出しがもっとも有効であり、重要な方法のひとつだと考え、活用をしてきました。  

 こうした図書館における郵送貸出サービスを支えてきたのが、郵便法第26条に規定される第四種郵便物の「盲人用郵便物」無料制度、ならびに郵便規則第39条の2に規定される「心身障害者用冊子小包郵便物」および郵便規則第39条の6以下に規定される「盲人用点字小包郵便物」「聴覚障害者用小包郵便物」の料金割引制度です。これらの制度がなければ、図書館の運営費の中からその経費を捻出したり、あるいは利用者から送料を徴収することになり、十分なサービスの保障どころか、そのサービスの制限、中止などを招くことになったと推測しております。  

 その意味で、この制度の必要性、重要性についてご理解いただき、支えてきていただいた関係者、関係機関の皆さまには心から感謝しております。
 

 さらに、同じように廃止が検討されていると伝えられている新聞・雑誌・機関紙などの定期刊行物の料金割引制度である第三種郵便物についても、図書館にとっては大切な制度であると考えております。この制度が廃止されれば、こうした紙誌類を刊行している団体等では、会費・料金を値上げしたり、発行回数を減らしたりせざるを得なくなることが十分に予測され、そのことは図書館にとって、最も大切な資料収集にも大きな影響を与えることになります。
 

 障害をもつ利用者への図書館サービスの拡大や、資料収集の一層の拡大を目指している日本図書館協会としては、今回の第三種・第四種郵便物制度の廃止の動きに大変憂慮しております。 この問題は、単に図書館の運営にとって重大であるばかりでなく、障害をもつ人たちが社会生活を送る上で不可欠な情報の摂取に大きな影響を及ぼしたり、民主主義の基本である団体活動の自由や、表現の自由、思想信条の自由にも影響を与える大きな問題であると認識しております。 先進諸外国においても、盲人用郵便物の無料制度があり、この制度を利用しての国際間のやり取りも行われています。  日本図書館協会は、第三種・第四種郵便物の現行割引制度を今後とも存続させるとともに、郵便規則39条の2以下に規定されている小包郵便物の障害者に対する割引制度について、今後とも継続することを強く要望するものです。

要望事項

1. 郵便法で認められた施設および発受施設の指定を受けた施設において、盲人用郵便物(点字・録音資料)を無料で発受できる制度を今後とも継続すること。

2. 郵便規則39条以下に書かれている小包郵便物の障害者に対する割引制度について、今後とも継続すること。

3. 第三種・第四種郵便の現行制度を今後とも継続すること。

要望理由
(1) 盲人用郵便物は、視覚障害者情報提供施設(いわゆる「点字図書館」)とともに、公共図書館においても相当量が郵便により貸出され、障害者への資料・情報提供、福祉の向上に寄与している。また、両者は相互に連携しながらサービスを行なっている。
(2) 障害者用冊子小包の割引制度により、図書館資料を自宅にいながら入手することができ、外出できない重度障害者への情報提供・生活や福祉の向上に寄与している。
(3) 障害者は、図書館への来館が一般的に困難であり、ほとんどの人が郵送による貸出を希望している。
(4) 各図書館(自治体)において新たな郵便料金の予算化を行なうことは非常に困難であり、有料になった場合サービスの縮小、中止をせざるをえない。
(5) 障害者に郵便料金を負担させること、およびその支払いに関する事務を自ら行うことに相当の困難が予想される。


(資料) 公共図書館における盲人用郵便物の発送量
(日本図書館協会 1998年実施の全国実態調査より)

 (1)個人貸出
   録音資料  205,583タイトル(1,130,839巻)
   点字資料   11,427タイトル(   45,567冊)
 (2)図書館間貸出
   録音資料  26,345タイトル
   点字資料     815タイトル