東京都立図書館の今後のあり方について(要望)
2001日図協第235号
2001年11月9日

東京都知事殿
東京都教育委員会教育長殿
東京都立中央図書館長殿

社団法人日本図書館協会
理事長  竹内 セ


東京都立図書館の今後のあり方について(要望)

東京都立図書館は、その創設以来、つねに模範となるサービスを展開し、全国の公共図書館に対して先導的な役割を果たしてこられました。この点に関しまして、都知事、都教育長、都立図書館長はじめ関係各位に対しまして、心からの敬意と感謝を表する次第であります。

しかしながら、今年7月に出されました「東京都立図書館あり方検討会」の中間まとめには、私ども図書館関係者から見まして憂慮せざるをえない内容が盛り込まれているように思われます。

一つは、今後のあり方として、都立図書館の書庫容量がすでに限界(中央:平成15年度末、多摩:平成18年度末)に達しようとしているにもかかわらず、「書庫容量内での一元化した収蔵方針の策定」が示されている点であります。昨今、デジタル資料・情報の急増には目を見張らせるものがあるとは申しましても、すでに完成されたメディアである図書・雑誌等の刊行が衰えるとは考えられません。すなわち、区市町村の図書館へのバックアップ機能をもつべく期待されている都立図書館にとりまして、書庫の増設を視野に入れることが不可欠であると判断せざるをえないのであります。

もう一つは、都立3図書館の機能分担を図るとしながらも、「収集・収蔵方針の一元化、重複資料の精査」をかかげ、都立図書館として収集・保存・提供する図書等は一冊のみとすることを原則としていることです。これにより、日比谷図書館と多摩図書館が都民のニーズに応えてきたすぐれたサービスが大幅に縮小・廃止されることが懸念されます。

今年の7月に出ました「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」と題する文部科学大臣告示には、都道府県立図書館の「運営の基本」の第3項目として、「都道府県立図書館は、住民の直接的利用に対応する体制も整備するものとする」とあります。また、地方自治体がおしなべて財政難に直面しているこの時代にこそ、都道府県立図書館と区市町村立図書館とが協力を密にして住民の直接的な資料要求に応えていかざるをえないものと思われます。

文化水準の面からも人口規模の面からも、わが国において特殊な位置を占める東京都の動向は、全国の注目するところであります。難局に対して果敢に立ち向かう東京都の姿勢は、必ずや同じ状況下にある他の道府県、区市町村を勇気づけるでありましょう。このような意味からも、今後の都立図書館のあり方を慎重にご検討されますよう要望する次第です。

以上