2000日図協第310号
2000年11月9日
社団法人 日本書籍出版協会
理事長  渡 邊 隆 男 様
社団法人 日本図書館協会
理事長  栗原 均

図書館資料費増額の取り組みについて(お願い)

 

 拝啓 時下ますますご清祥のこととおよろこび申し上げます。  

 平素は図書館事業の振興にご支援、ご協力をいただき、誠にありがとうございます。  

 さて、このたびは図書館資料費の増額の取り組みについてご協力をいただきたく、お願い申し上げる次第です。ご多用のところ恐縮ですが、ご検討賜れば幸いです。 本年2000年は図書館法制定50周年、「子ども読書年」と、図書館にとって極めて意義のある年です。私どもは本年を、未だ図書館のない市町村が5割もあり、とりわけ子どもたちの身近に図書館がない状況を変えるために広くアピールする機会と捉え、取組んできました。

 図書館事業にとって、もうひとつ深刻な状況があります。それは資料費の削減です。94年度以降1図書館当たりの資料費は減額を続けていましたが、それでも新設の図書館の増加により全国の資料費総額では少しずつではありますが増えておりました。しかし今年度においては、新たに50を超える図書館が設置されたのにも関わらず、総額において初めて前年度を下回る事態となりました。現在進められている来年度予算の査定内容を聴くと、さらに削減は著しい状況にあるようです。

 とりわけ東京における減額は著しいものがあります。東京における資料費は全国の15%を占めますが、東京都および特別区においては、93年度当時から4割から6割も減っているところが少なくありません。  

 地方財政の厳しい状況の反映ではありますが、これではこれまで蓄積してきた図書館サービスの維持がますます困難となります。必要な資料を揃えることができず、利用者からの苦情も多くなっています。専門書や高額の図書の買い控えや雑誌の購入停止が続いています。資料構成がいびつなものとなり、将来のサービスに備えての資料保存の有効性をも減じるものとなります。  

 図書館は住民の身近にあって、生涯学習の基礎的基本的な機能をもっています。住民からますます期待が寄せられている所以です。この機能は、自治体を構成する住民の自立に資するものであり、自治体にとってまちづくりにつながるものです。資料費の確保は自治体の責務とも言うべきものと考えます。  

 図書館の資料費の確保は、図書館が少部数の貴重な資料の購入を可能とし、さらに出版文化を支える役割につながるものと考えます。東京において出版は、地場産業とも言うべき格別な位置にあり、図書館の資料費は産業振興にも資するものです。 そこで、図書館の資料費を増額することを全国の自治体に求めたいと思います。政府にたいしては、自治体財源を拡大する政策と同時に、図書館資料費確保の独自の施策を求めたいと思います。  

 そのための取り組みを、広範な関係分野の方たちの協力を得て進めていきたいと考えております。その具体化については、ご相談をしながら図っていきたいと思います。 ぜひご検討いただきたくお願い申し上げます。

敬具