2009年12月15日 
 

「子どもの読書活動の推進事業と子どもゆめ基金」の「事業仕分け」に関する意見

              社団法人日本図書館協会


  「子どもの読書」は図書館、学校、地域、自治体、政府など関係機関、団体が総掛かりで進めるべき課題であり、自治体や民間に委ねて良いとするべきことではない。
 日本の子どもたちの読解力については、国際的な比較調査もさることながら、憂えるべき実状にあることはかねてから指摘されているところである。そのために、その推進のための法律が制定され、それに基づいた施策を政府自ら実施することが求められている現状にある。
  しかし今回の「仕分け」の検討内容、およびその結果については、このような認識に立ったものとは言えず、地域の読書関係団体や図書館によるこの間の努力に水を差すものとなった。改めて子どもの読書をめぐる問題について、その本質的な問題に立ち入っての検討を求めたい。
  同時にこの間政府が実施してきた施策について、冷静な総括をする必要がある。
  子どもの読書活動推進に関する施策は1998年以降、さまざまなかたちで補助金、助成金を含んだ内容で実施されてきた。その金額は他の行政分野に比べれば実にささやかなものであるが、効果ある有効な結果をもたらしているだろうか。
  また2001年設置された子どもゆめ基金は、100億円の政府出資金を原資とし、これにくわえて毎年20億円の政府交付金を内容としている。
  これらの施策は、地域の読書団体や全国的な団体の活動を励まし、自治体の創意ある施策を促す役割を果たした。しかし同時に、その実態をみると、多くはイベント的であり、継続的安定的な読書を推進する基盤整備につながっているとは言えないことも指摘せざるを得ない。政府が為すべき施策は何か、について明確ではない故の結果である。
  政府が子どもの読書を進めるために実施すべきことは、その環境整備、基盤整備の施策である。子どもたちの生活圏域にあまねく図書館を設置すること、そこには子どもたちの相談に応じることのできる司書が配置されること、および新鮮で豊かな資料を購入することのできる予算措置である。さらに学校図書館に専任の学校司書を配置、資料費を措置することにより、生き生きとした活動を保障することである。これらに結び付く施策が現状ではない。
  1998年以降図書館建設や資料費など設備整備の補助金交付が中止されている。図書館法には補助金交付を規定していながら、それが10年以上にわたって発動されていないのである。
  かつて図書館建設の補助金が最も多かったときは年間20億円程度であった。零細補助金として常に問題にされてきたが、補助金交付を受けた市町村においては総じて豊かな図書館サービスの展開がなされ、大きな成果をもたらしている。政府出資金は、こういった内容で実施されるべきである。
  今回の「仕分け」により、子どもゆめ基金を所管している独立行政法人国立青少年教育振興機構に官庁OBが役員として就いていること、およびその報酬額についての問題点が指摘されたようである。地域の子どもたちに読書の喜びを伝えるためにボランティアとして活動している多くの人たちの実状とかけ離れた管理運営であると言わざるを得ない。