法情報サービス

 

                               藤勝 周次(中央大学図書館文系大学院図書室)

 

 

1.「法情報」支援サービスの範囲

 @ 法令資料(情報) 判例資料(情報) 立法・議会資料(情報) ― 法律情報

 A 法学研究(学習)情報 (専門書・学術雑誌・論文)      ―(法学情報)

 B 司法アクセス情報(裁判所・弁護士・法律扶助・法律相談...)―“法情報” 

 C 法・裁判・事件・紛争解決・扶助・救済等に関する一般情報   ―これも法情報

“中抜き”の時代:利用者は図書館に来るまでにかなりの情報を収集済みである場合が少なくない。図書館員が、それ以上の有効情報を提供できるためには、サービス主題分担体制無しには、対応できない

研究活動支援の大学図書館のレファレンスでは、Bはまだあまり経験がない。(ロースクールの課題)

「ローライブラリアン」は、法曹三者とも研究者とも異なる、多様な部署で自律した法情報支援サービスを行う専門職 ---- 大学・研究機関、企業法務部、弁護士事務所、公共図書館、司法支援センター等

 

 

2.法情報の特性

 ・体系的   仕組み 制度 専門用語 (基本知識があれば、ある程度調べやすい)

・約束事が多い  通称 略称 文献引用表示法 (比較的無原則ではない) 

・しかし価値判断は動的   生きている法・死んでいる法 の判断が必要

・社会(的責任)性・権利性の強い情報

 cf: ビジネス支援情報

 

 

3.法情報支援サービス担当者に必要な基本的専門主題知識

1)求められる“法情報”の範囲に関する知識

・社会諸科学の一部としての位置づけの基本的知識

・社会科学としての特性(地域特性、時代特性)の重要性の基本的知識

・社会科学諸科学だけでなく、心理学や医学等も含むことの基本的知識

2)各国毎の専門用語と法体系の基本的知識

3)法情報(資料)の発生・修正・変更・流通・刊行・保存・所蔵のプロセスの基本的知識

4)調査方法・入手方法の知識、文献の略称・引用表記法の知識

5)ツールに関する精通した知識(特性・収録範囲・出版(開発)動向)

@法律資料  六法・法令集・コンメンタール・条約集、判例集・判例評釈・判例研究・判例解説、専門書等  (cfprimary legal materials)

A議会資料  会議録類、報告書類、

B一般資料  新聞、法律雑誌、web情報

C書誌(関連・専門)、データベース、

Dwebサイト(下記の紹介文献に多数、使えるものをチェックしておく必要、ただし常に変化し続けている)

 6)レファレンスサービスの基本知識(インタビュー、守秘義務、プレゼンテーション)

 

 

4.法情報支援サービスに役立つ研修

  1)研修できるチャンス

@大学内 授業の活用(法学、法制(度)史、法情報調査、リーガル・リサーチ)

A法律図書館連絡会 (新人研修、定例研究会(日本法、外国法、データベース比較等)

B国立国会図書館  (webサイト:「法令議会資料・官庁資料研修」、講師派遣も)

C東京大学外国法文献センター 外国法講習会・研究会(英米法・独法・中国法・韓国法・ソビエト法等)

Dデータベースサービス会社  WestlawThomson)   講習会講師派遣体制あり

               lexis.com(LexisNexis)  講習会講師派遣体制あり

                             日本法DB各社       講習会依頼可

2)不足している研修

   新しい法、学会動向、レファレンス事例研究     (法図連でも検討中)

 

 

5.自己研修

(1)基本的テキスト

@「リーガル・リサーチ」いしかわまりこ・藤井康子・村井のり子著、日本評論社、2003.3

A「法令入門 ―法令の体系とその仕組み− 第2」田嶋信威著、法学書院、2005.2

B「新訂 専門資料論(新現代図書館学講座9)」中森強編著、東京書籍2004.12

5章、第7章〜8章、第11

C高橋昇「司書の基礎的主題専門知識 ―大学図書館における法律資料のレファレンスを中心として―」論集・図書館情報学研究の歩み第20集(日本図書館情報学会研究委員会編)日外アソシエーツ2001.1 p.98112

D「法律文献学入門 ―法令・判例・文献の調べ方―」西野喜一著、成文堂, 2002.9

E「法情報学 第2―ネットワーク時代の法学入門―」加賀山茂・松浦好治編、有斐閣、2002.11

F「インターネット法情報ガイド」指宿信・米丸恒治編、2004.10

G「法律学習マニュアル」弥永真生著、有斐閣、2001.12

H「民法研究ハンドブック」大村敦志・道垣内弘人・森田宏樹・山本敬三著、有斐閣、2000.4

I「法学文献の調べ方」坂寺一太郎著、東京大学出版会、1978.8

J「外国法文献の調べ方」坂寺一太郎著、東京大学出版会、2002.5

K「アクセスガイド外国法」北村一郎編、東京大学出版会、2004.6 

(2)目を通し続けるべき専門誌(目次だけでも)

「判例時報」、「判例タイムス」、「法律のひろば」、「法律時報」、「ジュリスト」、

「法学教室」、「法学セミナー」、「時の法令」、「NBL」、「法学協会雑誌」、

「民商法雑」、「外国の立法」

 

 

6.課題

1)法情報主題専門サービス担当者の支援能力のレベルアップ(評価される実績)

2)法情報サービス現場担当者をバックアップする体制の充実(法図連、AALL

3)図書館学+法学+情報リテラシー能力の資格認定制度

4)継続的な育成・確保の体制の確保(必置義務化 例:法科大学院、公共図書館等)

5)自律的な市民像を想定した自己責任社会の前提条件:“国民のための司法”の実現

 

[お願い] 進行中の司法制度改革にご関心をお持ちの図書館関係者の方は、ご一緒に考えませんか。 現代の図書館 24(4) 2004.12 「特集:法情報へのアクセス拠点としての図書館」早野貴文、中網栄美子、指宿信、岩隈道洋、等雄一郎、各氏の論文、拙稿「司法制度改革に日本の図書館界はどう貢献できるか」(図書館雑誌99(1)2005.1 p44-48)、拙稿「図書館サービスの潜在力と司法情報提供」リーガル・エイド研究 11号 2005.6 p.67-84もご参照ください。