第103回全国図書館大会 東京大会(第19分科会 利用教育)の開催報告
館種をこえた情報リテラシー教育の枠組みづくりに向けて
─実践を支える理論を求めて─
春田和男(東京家政大学)
第19分科会(利用教育)では,2017年10月13日,国立オリンピック記念青少年総合センターのセンター棟513号室にて,以下の3件の講演を行った。
- 講演1は,井田浩之氏(UCL Institute of Education)による「教育方法論からみた情報リテラシー教育の現状と課題―教員,カリキュラム,そして大学図書館の包括的融合モデルを目指して―」である。
イギリスの事例を織り交ぜて,教育方法,カリキュラム論,リテラシー教育の観点から,大学での情報リテラシー教育の現状と課題について講演を行った。
1)蔵書構成を通した研究支援と思考開始の支援が,情報リテラシーを強固なものにすること,2)情報リテラシー教育の目的,タイミング,範囲を明確にする必要があることなどを指摘した。 - 講演2は,桑原博文氏(株式会社ネットアドバンス)による「情報リテラシー講習会から視える課題―大学と公立図書館における経験から―」である。
ネットアドバンスでは,日本の百科事典や辞書類が持つ膨大な知識情報を収録した『ジャパンナレッジ』というオンラインデータベースを提供している。このデータベースの導入状況,大学や公共図書館向けのガイダンス の実施状況,ガイダンスでの苦労・悩みなどについて説明した。 - 講演3は,飯尾健氏(京都大学大学院教育学研究科)による「大学生の情報リテラシーの実態―習得傾向と図書館の寄与―」である。学生に対して質問紙調査を実施し,大学における情報リテラシー教育の評価を行った。 その結果,1)学生は情報リテラシーにおける情報の評価・活用等について不得意な傾向があること,2)情報リテラシーの育成には実際の情報検索・活用が重要であること,3)大学図書館の利用はごく一部の側面に限られて いることが明らかになった。
- 講演後には,ミニワークショップを行った。当分科会の参加者数は47名である。アンケートでは「興味深い内容だった」といった声が寄せられた。